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高専トピックス

全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト(以下、高専プレコン)は、全国の国立・公立・私立の高専58校63キャンパスが参加し、英語によるプレゼンテーション力を競うコンテストです。
「英語が使える高専生」をスローガンに2007年から開催されており、高専生の英語表現力の向上や学校間の交流促進を目的としています。また、ロボットコンテスト(ロボコン)プログラミングコンテスト(プロコン)デザインコンペティション(デザコン)と並ぶ、高専4大コンテストの一つとしても広く知られています。

生成AIの普及により翻訳が容易になった現代において、自らの声で情熱を届けることの真価が改めて問われています。本大会に出場する学生たちは、単なる語学学習者ではなく、社会課題を解決して新たな価値を創造する「次世代のグローバル・イノベーター」です。彼らは英語を試験のための学習対象としてではなく、磨き上げた技術やアイデアを世界へ繋ぐ「架け橋」として使いこなす姿を披露しました。

第19回目となる本大会は、2026年1月24日(土)・25日(日)の2日間、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されました。シングル部門16名とチーム部門9チームが集結し、それぞれの独創的なアイデアを英語で表現しました。本記事では、言葉の壁を越えて未来を切り拓く学生たちの熱気とともに、入賞したプレゼンテーションの魅力についてお届けします。

(掲載開始日:2026年2月16日)

コンテストのルール


国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟にて開催。

各発表者およびチームは、テーマを自由に選定し、英語でプレゼンテーションを行います。

発表はシングル部門と3人1組のチーム部門に分かれ、制限時間はそれぞれ5分と10分です。テーマは自由に設定可能ですが、高専生らしい独創的な視点や専門性を持ちながらも、専門外の聴衆にも理解しやすい構成にすることが推奨されます。

プレゼンテーション後には、審査員との質疑応答が行われ、単なる英語力の発信に留まらず、質問への迅速な対応力やアドリブ力といった総合的なコミュニケーション能力が評価の対象となります。

各部門で1位から3位までの入賞者には、賞状及びメダルが授与されます。また、シングル部門の優勝者には「全国高等専門学校連合会会長賞」、チーム部門の優勝チームには「文部科学大臣賞」が授与されます。
これらの他に、各部門毎に特別賞として、「COCET(※)賞」が贈られます。

※COCET:The Council of College English Teachers(全国高等専門学校英語教育学会)の略称



シングル部門本選出場者一覧

高専名 タイトル 発表者(学年) 表彰名
沖縄工業高等専門学校 Fear Not: Challenge Everything! ISHIMOTO, Ena (2) 全国高等専門学校連合会会長賞(1位)
長野工業高等専門学校 The Quiet Power of a Life Well-LivedKAMIJIMA, Tatsuki (2) 2位
呉工業高等専門学校 Saving small towns, One snowflake at a Time KOHARA, Yua (2) 3位
富山高等専門学校
(射水キャンパス)
Less Screen, More Life SAKAI, Suzuko (4) COCET賞
仙台高等専門学校
(名取キャンパス)
Living in this Age of Advanced Science and Technology ITO, Hyuga (4)
阿南工業高等専門学校 Building My Self-Esteem HARADA, Yuzuki (3)
群馬工業高等専門学校 Are We Ready for the Next Scientific Revolution? YAMAGATA, Aoto (4)
香川高等専門学校
(詫間キャンパス)
Empowering Minds: English for the AI-Driven World TADA, Yumeno (3)
沼津工業高等専門学校 Save Our Language, Develop Our Science KATO, Amane (4)
秋田工業高等専門学校 Learn It. Teach It. Master It. SAITO, Hiroaki (5)
徳山工業高等専門学校 Small Actions Will Change The Future YAMAMOTO, Ryota (3)
大分工業高等専門学校 One small step to leap into a larger world OGATA, Kazuma (5)
大阪公立大学工業高等専門学校 From Walking Alone to Walking Together NISHIKINO, Yuna (3)
和歌山工業高等専門学校 The Greatness of a Large Family SAKAGUCHI, Ibuki (5)
釧路工業高等専門学校 Paving and Bridging Futures KASAI, Sakurako (2)
苫小牧工業高等専門学校 Japanese Architecture in Our Future HANAWA, Yukino (3)

チーム部門本選出場チーム一覧
高専名 タイトル 発表者(学年) 表彰名
富山高等専門学校
(射水キャンパス)
IPA and Phonics: the key to grow out of Japanglish FULKERSON, Luke (4)
LAPA, Nikita (4)
MATSUSHIMA, Aoi (3)
文部科学大臣賞(1位)
明石工業高等専門学校 Different Values, One HeartKAYO, Tomoki (2)
HAMANAKA, Seina (2)
MIURA, Leah (2)
2位
石川工業高等専門学校 KasaTalk: Making Rainy Days Fun TAJIMA, Miho (5)
HASEGAWA, Itsuki (5)
NATSUSHIMA, Riho (Adv.2)
3位
秋田工業高等専門学校 Know Your Noodles Before You Slurp YOSHIDA, Kanji (2)
OHKI, Haruka (2)
UESUGI, Rikuto (5)
COCET賞
大分工業高等専門学校 To infinity… and BEYOND! KUBOTA, Fuko (3)
ONO, Shuhei (3)
ICHIKI, Satoshi (3)

呉工業高等専門学校 ChatGPT for Learning ISHII, Nozomi (4)
KAWAMOTO, Renju (4)
NAKAO, Marin (4)
津山工業高等専門学校 How Can We Do It? ~ Pay It Forward in Our Learning KIGUCHI, Azuki (1)
SUDA, Ryotaro (1)
HIRAMATSU, Mizuki (1)
木更津工業高等専門学校 Who Fell for the Scam KAMIYA, Sosono (2)
OKABE, Moka (2)
MITSUJI, Hiori (2)
福島工業高等専門学校 How to Live in Times of Inflation YOSHIDA, Tomoharu (1)
NANAUMI, Yamato (1)
HINAGATA, Eiichiro (1)

※Adv:専攻科

シングル部門


自身の作業着をシンボルに登壇し、夢への挑戦を語る石本さん。スライドには、建築を学ぶために訪れたい場所として挙げたドイツ・ノイシュヴァンシュタイン城が映し出されている。

学校名:沖縄工業高等専門学校
タイトル:Fear Not: Challenge Everything!
発表者:石本 愛菜いしもと えな(機械システム工学科2年)


沖縄高専の石本さんは、「Fear Not: Challenge Everything!」をテーマに、自身が着用している作業着(制服)をシンボルとして、夢を追うことの意義について発表しました。彼女は、国際的に活躍する建築家になるという夢を叶えるため、付属高校への進学という安定した道を断ち、リスクを恐れずに高専への進学を選んだ自身の経験を語りました。

発表の中で、彼女は現在学んでいる製図やプログラミングなどの技術が夢への確かなステップになっていると述べ、家族の支えが挑戦の原動力になったと振り返りました。また、2023年の調査データを引用し、困難があっても夢を追求したいと答える日本の高校生がわずか23%に留まる現状を指摘した上で、不可能なことを可能にするために「挑戦を恐れないでほしい」と力強く訴えました。

質疑応答では、建築を学ぶために訪れたい場所として、自身の好きなノイシュヴァンシュタイン城のあるドイツを挙げました。また、その城が好きな理由として、建築物と雪が織りなす調和のとれた美しさについて情熱的に語ってくれました。石本さんの発表は、自らの選択に誇りを持ち、未来へ向かって行動する勇気を聴衆に与える素晴らしい内容でした。


「CHAOTIC INDIA」を背に、騒がしい現代世界において、人生の積み重ねから滲み出る「静かなる力」の重要性を語る様子。

学校名:長野工業高等専門学校
タイトル:The Quiet Power of a Life Well-Lived
発表者:上島 健希かみじま たつき(工学科2年)


上島さんは、「The Quiet Power of a Life Well-Lived」をテーマに、現代の騒がしい世界において真の強さとは何かを問いかけました。彼は、声の大きさではなく、その人が歩んできた人生そのものから発せられる「静かなる力」の重要性を訴え、自身のインドでの体験をもとに発表を行いました。

具体例として、二人の男性のエピソードを紹介しました。一人目は90歳の日本人僧侶、佐々井 秀嶺しゅうれい氏です。彼の声はささやくように弱々しいものでしたが、生涯をかけた献身からくる圧倒的な力を感じたと語りました。二人目はエベレスト登頂を果たした叔父です。叔父は、恐怖に直面しながらも一歩を踏み出す勇気の重要性を説き、力とは日々の選択の結果であることを教えてくれたといいます。上島さんはこれらの経験から、自らもそのような人生を築いていきたいと決意を語りました。

審査員との対話の中で「静かなる力を最も理解した瞬間」について問われると、佐々井氏の穏やかな語り口から滲み出る自信こそが力であったと答えました。さらに、インド到着時に予約したホテルが存在しなかったトラブルさえも、国の底力を肌で感じる契機だったと振り返る姿が印象的でした。言葉の背後にある生き方こそが人を動かす力になるという、深い洞察に満ちた内容でした。


秋田と呉の二つの地域をつなぎ、故郷・秋田の雪の魅力を伝えるプロジェクトである「Snow Experience Project」について語る様子。

学校名:呉工業高等専門学校
タイトル:Saving small towns, One snowflake at a Time
発表者:小原 優愛こはら ゆあ(電気情報工学科2年)


呉高専の小原さんは、自身の故郷である秋田県が直面する「消滅の危機」をテーマに、地域間のつながりと行動の重要性について発表しました。彼女は、美しい雪景色やコミュニティが失われつつある秋田の現状に触れ、故郷が単なる記憶の中だけでなく、現実の場所として生き続けるために何ができるかを問いかけました。

その解決策の一環として、彼女は学校の「インキュベーションワーク」という授業を通じ、雪を見たことがない呉の子供たちに雪の体験を共有するプロジェクトを立ち上げました。この活動は、秋田と呉という異なる二つの地域を繋ぐだけでなく、彼女自身が地元を離れて初めて気づいた「故郷への愛」を形にするための挑戦でもありました。

質疑応答では、雪以外の秋田の魅力を問われ、「自然や空気の美しさ、そして人の温かさ」を挙げ、離れることでその価値を再認識したと語りました。どんなに小さな行動でも未来を変える力になると信じ、故郷を大切にしようと訴える彼女の発表は、聴衆に深い郷土愛と一歩を踏み出す勇気を与えるものでした。

チーム部門


正しい発音の実演で音を視覚的に捉えるIPAの有効性を示し、ジャパングリッシュ脱却への実践的な学習法を提案。

学校名:富山高等専門学校(射水いみずキャンパス)
タイトル:IPA and Phonics: the key to grow out of Japanglish
発表者:フォルカーソン 琉玖るーく(国際ビジネス学科4年)
    ラパ ニキータ(国際ビジネス学科4年)
    松島 蒼まつしま あおい(国際ビジネス学科3年)

富山高専(射水キャンパス)のチームは、「IPA and Phonics: the key to grow out of Japanglish」を掲げ、日本人が陥りやすいカタカナ英語、いわゆる「Japanglish(ジャパングリッシュ)」からの脱却を目指す教育手法を提案しました。彼らは高専では珍しい国際ビジネス学科に所属しており、言語学の授業で培った専門知識を基に、実践的な解決策を提示しています。

「Rice(米)」と「Lice(シラミ)」、「Walk(散歩)」と「Work(仕事)」の発音の違いが招く誤解をスキットで実演し、カタカナ発音の弊害をユーモラスに指摘しました。その解決策として、綴りと音のルールを学ぶ「フォニックス」を小学校で導入して読む基礎を作り、中学校からは音を視覚的に理解できる「IPA(国際音声記号)」を用いて発音の仕組みを深く学ぶという、段階的なカリキュラムを推奨しました。また、IPAの知識が英語に留まらず、タイ語など他言語の習得にも有効であることを示し、言語学習全般への応用可能性を訴えています。

質疑応答では、審査員から発音練習の方法を問われ、シャドーイングや洋画・音楽の活用を挙げました。さらに「発音が面白いお気に入りの単語」として、ロシア語の「Moloko(牛乳)」の発音変化や、チェコ語とロシア語で「香り」と「悪臭」という正反対の意味になる単語のエピソードを披露し、多言語を学ぶ楽しさを生き生きと語りかけました。彼らの発表は、単に英語を話すだけでなく、相手に正しく意図を伝えるための「音」に対する意識改革を促すものでした。


衝突の背景にある価値観の違いを紐解き、対立を相互理解の好機と捉える、他者に寄り添う視点を会場に届けた。

学校名:明石工業高等専門学校
タイトル:Different Values, One Heart
発表者:加用 知希かよう ともき(電気情報工学学科2年)
    濵中 晴南はまなか せいな(都市システム工学科2年)
    三浦 梨愛みうら りあ(都市システム工学科2年)

明石高専チームは、「Different Values, One Heart(異なる価値観、一つの心)」と題し、人間関係における対立の本質とその乗り越え方について、深い洞察に満ちた発表を行いました。

グループワークの締め切り間際に起きたメンバー間の衝突を寸劇で再現し、対立の原因が決して「努力不足」ではなく、互いが大切にしている「価値観の相違」にあることを鮮やかに描き出しました。彼らは誤解を生む要因として、性別などへの「ステレオタイプ」、文化による「時間感覚のズレ」、そして作業に着手する「タイミング」の違いを挙げています。

その上で、対立する相手を単に「気難しい人」と決めつけるのではなく、効率や信頼といった彼らなりの大切な価値観を守ろうとしているのだと指摘しました。真の解決とは、どちらが正しいかを決めることではありません。互いの背景にある「私を見て、理解して」という切実な願いに耳を傾け、異なる価値観を同じ空間で尊重し合うことだと訴えました。

審査員からは、「遅刻をした際の対応」や「異文化圏の人が土足で家に上がった場合」など、身近な衝突に関する質問が投げかけられました。これに対し、学生たちは「嘘をつかず誠実に謝罪する」「怒るのではなく、文化背景を丁寧に説明して理解を求める」と回答し、発表で語った「対話と尊重」の精神を即座に実践してみせました。対立を分断の合図として恐れるのではなく、相互理解を深める好機に変えていく。彼らの温かい視点は、多様な価値観が共存する現代社会において、私たちが持つべき指針を聴衆に提示しました。


雨の日を楽しくする「カサトーク」の機能を、可愛らしいイラストや図解とともにわかりやすく解説する様子。

学校名:石川工業高等専門学校
タイトル:KasaTalk: Making Rainy Days Fun
発表者:太島 実穂たじま みほ(電子情報工学科5年)
    長谷川 樹はせがわ いつき(電子情報工学科5年)
    夏嶋 里帆なつしま りほ(電子機械工学専攻2年)

石川高専チームは、「KasaTalk(カサトーク)」という、憂鬱な雨の日を心躍る体験へと変える、おしゃべりな傘の開発についてプレゼンをしました。

プレゼンテーションの冒頭、スティーブ・ジョブズの新作発表会を彷彿とさせるユーモラスな演出で、会場の空気を一気に引き込みます。そこで披露されたのが、かつての学生支援ロボット開発の経験(※)を活かした革命的プロダクト「カサトーク」です。
開発の原点は、北陸地方特有の多雨気候にあります。雨による気分の落ち込みが子供たちの登校意欲を削いでいるという深刻なデータに対し、彼女らは傘を単なる雨具としてではなく、心に寄り添うパートナーとして再定義しました。

「カサトーク」は、内蔵されたマイコン「ATOM S3」とAIにより、玄関先での天気や服装のアドバイス、移動中の豆知識の披露、そして落ち込んだ時の励ましという3つの機能でユーザーを支えます。
特筆すべきは、外装にあえて紙粘土を採用した点です。最先端のAI技術と手作り感のある素材を融合させることで、既製品にはない温もりと、世界に一つだけのカスタマイズを実現しました。

彼女らの眼差しは、この傘の先にある未来も見据えています。それは、白杖や車椅子など身の回りのあらゆる道具が、持ち主と心を通わせる存在になる社会です。
審査員からは、これから実装する機能について率直に答えたり、審査員からの機能追加案に笑顔で感謝したりと、柔軟な対話力を発揮しました。テクノロジーに「優しさ」という新たな機能を実装し、人の孤独に光を当てた彼らの発表は、会場に温かな感動と未来への希望をもたらしました。

※本チームが昨年プレコンで発表したロボット開発「シマエーる」についてはこちら

おわりに

第19回高専プレコンでは、AIの未来から環境問題まで幅広いテーマに対し、学生たちが専門知識と個人の体験を織り交ぜた「物語」を語り、その創造性で会場を魅了しました。審査員長が「単なる事実の羅列ではなく、そこに込められた独自の物語を届けてくれた」と称賛した通り、技術的な知見を心に響くメッセージへと昇華させる姿には、技術者としての高い資質と感性が表れていました。

高専といえば「ものづくり」が有名ですが、本大会では培った技術や知識を世界へ届ける「発信力」が遺憾なく発揮されました。単に言語を流暢に操るだけでなく、専門知識を国際社会で通用する形へと昇華させ、コミュニケーションを通じて相互理解を深めようとする姿勢は、まさに次世代のリーダーに相応しいものです。

特に印象的だったのは、事前に入念に準備された発表以上に、質疑応答で見せた即興的な対話力です。審査員からの鋭い問いに対し、シングル部門では自らの考えを堂々と主張する「個の強さ」が、チーム部門では互いに補い合い答えを導く「協働の精神」が光りました。形式は異なりますが、その場で英語を自在に操り意思疎通を図る姿は、現代の複雑な課題解決に不可欠なコミュニケーション能力の高さを証明しています。

審査員長が「練習を始めた日から今日までの成長の道のりこそが、真の賞である」と述べたように、この経験こそが彼らの最大の財産となるでしょう。技術力と英語力、そして他者と協調する心を兼ね備えた彼らは、世界の課題解決を実行する「ソーシャルドクター」の卵といえます。高専で磨き上げたその翼で世界へ羽ばたき、いつか国内外の舞台で新たな価値を創造していくことを心から期待しています。

第19回全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト:公式サイト

第18回高専プレコン
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第18回高専プレコン

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。