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高専トピックス

全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト(以下、高専プレコン)は、全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスが参加し、英語によるプレゼンテーション力を競うコンテストです。

毎年全国規模で開催され、高専生が競い合うイベントとして、ロボットコンテスト(ロボコン)やプログラミングコンテスト(プロコン)、デザインコンペティション(デザコン)と並ぶ、4大コンテストの1つに位置付けられます。
第16回を迎える今年度の全国大会は、第13回大会以来3年ぶりの対面での開催となりました。シングル部門16名、チーム部門10チームがプレゼンテーションを行いました。

「英語が使える高専生」を合言葉に、全国の高専生の英語を用いた表現力の向上や英語教育に力を入れる学校間・学生間の交流を深め、国際感覚豊かな技術者の育成を目的として2007年度から毎年開催されています。
今回は、2023年1月28日(土)と29日(日)の2日間、東京都千代田区一ツ橋の学術総合センター内の一橋講堂中会議場で開催されたコンテストの様子をお伝えします。

(掲載開始日:2023年2月21日)

コンテストのルール

各発表者またはチームが1つのテーマについて、英語でのプレゼンテーションを行います。

シングル部門と3人1組のチーム部門があり、制限時間はシングル部門5分、チーム部門10分です。
テーマは自由に決めることが出来ますが、高専の特色を生かしたテーマ且つ専門的になり過ぎず一般の方にも理解しやすい内容であることが推奨されます。

プレゼンテーション終了後は、発表者と審査員による質疑応答が行われます。そのため、英語を用いた表現力や、プレゼンテーション力以外にも、その場で質問された内容へ即答する瞬発力やアドリブ力、機知に富んだコミュニケーション力も評価に含まれます。

それぞれの部門で1位から3位までが選ばれることに加え、シングル部門の優勝者には「全国高等専門学校連合会会長賞」が、チーム部門の優勝チームには「文部科学大臣賞」が授与されます。更に、全出場チームの中から、特別賞として「COCET(※)賞」、「日本国際連合協会会長賞」、「日本能率協会会長賞」が贈られます。

※COCET:The Council of College English Teachers(全国高等専門学校英語教育学会)の略称

シングル部門本選出場チーム一覧

高専名 タイトル 発表者(学年) 表彰名
福島工業高等専門学校 Dobojo Ms. SAGAWA, Sakura (3) 全国高等専門学校連合会会長賞(1位)
呉工業高等専門学校 Just One Suggestion Ms. MORIMOTO, Natsuki (2) 2位
和歌山工業高等専門学校 The Wonder of the Abacus Mr. YAMADA, Fuyu (4) 3位
大分工業高等専門学校(※) From Japan to the World ~ Helping to Enrich Peoples’ Lives ~ Ms. YANAGITA, Ami (5) 日本国際連合協会会長賞
石川工業高等専門学校 Never Give Up on Your Dreams Ms. SHINTANI, Saki (3) COCET賞
苫小牧工業高等専門学校 How Great It Is to Go to School Mr. YOSHII, Riku (5)
東京都立産業技術高等専門学校 The Newest Frontier ~Quantum Computer Mr. ANDREWS, Tyler (4)
奈良工業高等専門学校 Pets are Our Family! Ms. HOSHINO, Momona (2)
香川高等専門学校
(詫間キャンパス)
Is It Just Me? Ms. YAMADA, Miu (3)
津山工業高等専門学校 From 20 to 18: Considering Lowering the Age of Adulthood Mr. HIRAMATSU, Koushi (3)
苫小牧工業高等専門学校 Women’s Way of Life Ms. FUJIKAWA, Kiyori (5)
阿南工業高等専門学校 Revolutionizing Everyday Life with Chemistry Mr. TSUJIOKA, Kento (3)
有明工業高等専門学校 How to Program Myself Ms. MIYOSHI, Suzune (3)
富山高等専門学校
(射水キャンパス)
Mapping Your World Ms. YOSHIDA, Miyabi (3)
東京工業高等専門学校 Hope - the Power to Change the World Mr. REWETI, Kaname (3)
秋田工業高等専門学校 My Frenemy Ms. SATO, Kurumi (3)

※大分高専の活動は高校生ボランティア・アワード2022にて受賞しています。インタビュー記事はこちらから

チーム部門本選出場チーム一覧
高専名 タイトル 発表者(学年) 表彰名
奈良工業高等専門学校 Preparing for a Disaster Ms. OBARA, Minamo (2)
Ms. MASUOKA, Mizuha (2)
Ms. OKANO, Hibiki (2)
文部科学大臣賞(1位)
石川工業高等専門学校 The Potential of Uguisu, a New Community Currency App Ms. SAKAGUCHI, Nanami (4)
Ms. NATSUSHIMA, Riho (4)
Ms. TAKAHASHI, Wakana (4)
2位
豊田工業高等専門学校 Fight against Gender Discrimination with Fashion Ms. SATO, Rin (2)
Ms. TAKEMURA, Maki (2)
Mr. HAYASHIDA, Miki (2)
3位
和歌山工業高等専門学校 Electric Vehicles and Minicars Ms. TAKIGAWA, Yu (4)
Ms. TSUMURA, Momoka (4)
Ms. KISHI, Kanon (4)
日本能率協会会長賞
富山高等専門学校
(射水キャンパス)
Let’s Bring Girls’ Secret to a Period Ms. YAMADA, Ayana (3)
Ms. CHIDA, Haruna (3)
Ms. NISHIMURA, Yuzuki (3)
COCET賞
熊本高等専門学校
(熊本キャンパス)
Key to Handling Stress Ms. OGURA, Riko (2)
Mr. IWASAKI, Keiju (2)
Ms. INAGAKI, Minami (2)
徳山工業高等専門学校 Further Revolutions with Technology: 4.0 to 5.0 Ms. ONISHI, Ayaka (4)
Ms. KUHARA, Mio (4)
Mr. HARADA, Atsuto (4)
岐阜工業高等専門学校 Board Games in Education Mr. INAGAWA, Yutaka (Adv.2)
Mr. HAYASHI, Tatsuki (Adv.2)
Mr. IKEDA, Mitsunaga (4)
小山工業高等専門学校 Towards Designing a Better Future: Sustainable Cities and Communities Mr. OTSUKA, Tatsuki (3)
Ms. IWABUCHI, Rio (3)
Ms. TAKAHASHI, Otoha (3)
秋田工業高等専門学校 Do You Speak English or Japanglish? Ms. NAKAMURA, Yuzuki (4)
Mr. KONDO, Yuya (4)
Mr. KAGABU, Seichiro (1)

※Adv:専攻科

シングル部門


佐川さんは土木業界の女性を取り巻く就労環境を憂い、自分の考えを熱く語った。

学校名:福島工業高等専門学校
タイトル:Dobojo
発表者:佐川 さくら(都市システム工学科3年)


1位に輝いた佐川さんのプレゼンテーションのタイトルは、「Dobojo」です。建設業界で働く技術者の男女平等に関するプレゼンテーションを行いました。

佐川さんは、国土交通省、建設会社に勤務する女性土木技術者にインタビューを行い、その中で女性管理職の少なさや育児のために仕事の幅が制限されるという現場の実状を聞き、日本と世界を比較すると女性の社会進出が進んでいないことが改めて浮き彫りになったと言及しました。この現状を変え、「ドボジョ(※)」としてのキャリアを叶えつつ母親になりたいという将来の夢について発表しました。

日本社会が長年抱えるテーマであり、非常に興味深いプレゼンテーションとなっていました。

※ 女性土木技術者の愛称のこと


森本さんは、現行の学校教育の諸問題に触れ、AIを用いた解決策の提案を行った。

学校名:呉工業高等専門学校
タイトル:Just One Suggestion
発表者:森本 夏生(電気情報工学科2年)

森本さんのプレゼンテーションのタイトルは、「Just One Suggestion」です。小・中学校での教育現場の問題点とその解決方法の提案を行いました。

日本では生徒やその保護者の60パーセントが学校教育について不満を持っていることや世界と比べて日本の教師の労働時間が長い等の問題を挙げ、これらの原因は既存の学校の教育システムにあると森本さんは考え、AIを用いた教育システムの開発への意欲を示しました。AIによる教育システムでは、正解率、一問あたりの所要時間を集積させて、個々の学生のニーズに合わせて最適化された多くの学習方法を提示します。

工夫を凝らした抑揚やジェスチャーにより話の説得力が増しており、発表に引き込まれる魅力的なプレゼンテーションとなっていました。


山田さんは、そろばんの可能性の大きさについて熱く語り、そろばん愛溢れる発表であった。

学校名:和歌山工業高等専門学校
タイトル:The Wonder of the Abacus
発表者:山田 歩佑(電気情報工学科4年)


山田さんのプレゼンテーションのタイトルは、「The Wonder of the Abacus」です。幼いころからそろばんを習っている山田さん自身の実体験やそろばんの歴史、そろばんの効用に関する既往研究についての紹介等を行いました。

そろばんを学ぶことは、計算のスキルだけでなく、人生のあらゆる分野で重要な問題を視覚化して迅速に解決する能力も向上させる効果があるという考えを発表し、最先端技術の開発に必要な問題解決能力と創造性を養うために、小学校の基礎教育の一部にそろばんの授業を組み入れるべきだと主張しました。

単なる計算の道具に留まらないそろばんの効果は非常に興味深く、そろばんの奥深さがよく分かるプレゼンテーションでした。

チーム部門


奈良高専チームは災害時における防災や災害管理についてプレゼンした。

学校名:奈良工業高等専門学校
タイトル:Preparing for a Disaster
発表者:小原 みなも(機械工学科2年)
    升岡 瑞葉 (情報工学科2年)
    岡野 響  (電気工学科2年)

チーム部門で1位に輝いたのは奈良高専チームでした。
奈良高専チームは災害大国である日本における防災対策や災害管理に関するアイデアについてプレゼンテーションを行いました。

日本は地震や津波、台風や大雨による洪水といった自然災害が発生しやすい国であります。2011年3月11日には東日本大震災とそれに伴う大規模な地震災害が発生しました。こういった非常事態においてダンボールが活用されるケースに触れ、ダンボールは、避難所でのプライバシーを守るための仕切りやベッドとして活用できる極めて有用なアイテムであると説明しました。
また、普段から防災に対する行動を心掛けるポイントを説明しました。例えば、家の耐震化や家具を固定するといった防災対策、隣人等とコミュニケーションを図りお互いに思いやる心を持つことも対策の一つになります。

時折ユーモアを交えたプレゼンテーションは会場の心を掴み、質疑応答では3人全員が災害に対する早期対応方法について考えを発表するほど熱意がこもった素晴らしいプレゼンテーションでした。


石川高専は様々な地域創生活動での提案及び実証実験の様子を発表した。

学校名:石川工業高等専門学校
タイトル:The Potential of Uguisu, a New Community Currency App
発表者:坂口 奈々美(電子情報工学科4年)
    夏嶋 里帆 (電子情報工学科4年)
    髙橋 和加奈(電子情報工学科4年)

石川高専チームは自分たちが普段から実際に行っている地域創生活動についてプレゼンテーションを行いました。
地元である中能登町を活性化するにあたり、地域で利用可能な独自のポイントである「うぐいす」を利用してもらうために専用のアプリケーションを開発しました。

こちらの専用アプリケーションは中能登町にある道の駅「織姫の里なかのと」にて実証実験が行われました。
中能登町在住の小学生親子を募集し、参加した親子たちがスマートフォンでアプリを使用し、道の駅に設置された二次元コードを読み取ることでポイントを獲得することができ、獲得したポイントは道の駅で利用できる商品券へ交換することができます。

独自のポイントは地域経済を活性化させることに繋がるため今後も実証実験を繰り返し地域創生に貢献すると発表し、高専生の特徴でもある、社会実装力の高さがこのプレゼンテーションから力強く伝わってきました。


豊田高専チームはジェンダーバイアスの問題をファッションを切り口に解決する提案について熱弁した。

学校名:豊田工業高等専門学校
タイトル:Fight against Gender Discrimination with Fashion
発表者:佐藤 凜 (情報工学科2年)
    竹村 真希(電気電子システム工学科2年)
    林田 実樹(建築学科2年)

豊田高専チームは男女差別をファッションで解決する提案を行いました。

現代社会において、エンジニアや科学者は男性の割合が多く、看護師は女性の割合が多いといった、男女の役割について固定的な偏見や思い込みで無意識のうちに性差を分けてしまう「ジェンダーバイアス」という問題があります。
特に男性が女性よりも優位であるという偏見から女性が男性よりもこのジェンダーバイアスの影響を受けやすい傾向があります。

豊田高専チームはこの問題に対して、男性と女性両方に適したファッションを用いることでジェンダーバイアスを解決しようと ”gender neutral fashion” というキャンペーンを掲げ、まずは学校内から男女格差を無くしていこうと訴えました。

おわりに

今年の高専プレコンは3年ぶりの対面での開催となりました。高専生達は壇上に上がり、自分たちが行ってきた活動や思想を高専生の観点からフォーカスし、英語でのプレゼンテーションを存分に披露しました。

現在、文科省はSociety5.0を先導し、社会的ニーズに対応した人材を育成するための高専の更なる高度化推進を掲げております。
その1つに高専の海外展開及び海外で活躍できる技術者育成による国際化の推進に取り組んでいます。

今回の高専プレコンの高専生たちのプレゼンテーションに接し、世界で活躍するためのSocial Doctorに必要不可欠な能力である英語力は高専教育で身に付いており、海外でも活躍できる十分な能力が高専生たちには備わっていると強く感じました。

第16回全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト:公式サイト

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。