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高専トピックス

はじめに


今大会の会場となった「Gメッセ群馬」(群馬県高崎市)。課題部門は22チーム(参集は海外2チームを除く20チーム)、自由部門は25チーム(参集は、辞退1チーム、海外5チームを除く19チーム)、そして競技部門46チーム(参集は国内辞退1チーム、海外2チームを除く43チーム)の高専生たちが参加し実施された。

全国高等専門学校プログラミングコンテスト(以下、高専プロコン)は、全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスの高専生たちが日頃から学修している情報通信技術におけるアイデアを実現する力を、チーム一丸となって競い合うコンテストです。
1990年(平成2年)から毎年開催され、2022年(令和4年)今大会は33回目の開催となります。

コロナ禍により、2020年の大会からオンラインでの開催でしたが、会場への人数制限やマスクの着用等の万全な感染対策を取り、3年ぶりに会場での開催が実現しました。
社会実装を前提とした実践的な教育を行う高専には、IoTやAIといった新たな技術が普及する超スマート社会への変化に対応した人材を輩出することが期待されています。
高専プロコンは、こうした社会からの期待に応えるために知識や技術力を高める重要な機会となっています。

今回は、2022年10月15日(土)、16日(日)に開催された第33回大会の本選の様子をお届けします。

(掲載開始日:2022年11月9日)

課題部門

課題部門では、与えられた課題を解決するために、チーム一丸となってソフトウェアの企画から実装までを行います。各チームは、独創性やシステム開発の技術力、発表能力等によって総合的に評価されます。
今年のテーマは、「オンラインで生み出す新しい楽しみ」です。

新型コロナウイルス感染症の流行によって、人同士の接触を減らすことを目的に仕事やイベント等でのオンライン化が急速に進みました。
その結果、人対人の接触の減少という本来の目的が果たされると同時に、オンラインでしか得られないメリットの認知が広がりました。
そこで今大会では、日頃培った技術力やアイデアを活かし、ICTを活用することで、これまでにないオンラインを通じた新しい楽しみを提供する作品の製作に、高専生たちが挑戦しました。
高専生の柔軟な発想と高度な技術力によって生み出された、オンラインだからこそ可能なシステムが数多く発表されました。以下、受賞作品をご紹介します。


函館高専『HEXELLENT!』による、製作した操作ボードの実機。疑似的なオフライン対戦を可能としている。

最優秀賞 函館工業高等専門学校 『HEXELLENT!』

最優秀賞を受賞した函館高専は、手元の操作ボードを使用して行うオンライン対戦型の陣取りボードゲームを製作しました。

ボードゲームは元来、オフラインで行うことが前提として生まれました。そのためゲーム性の面白さに加えて、実際に駒を触り、なおかつ近くにいる対戦相手を意識し、五感を刺激しながらのプレイが可能といった面白さも兼ね備えています。
一方、オンラインで行うボードゲームは、ゲーム性の面白さだけを切り取ったものであるため、若干物足りなさを感じることがあると思います。
しかしながら、オンライン対戦には、リアルで対面せずともインターネットを介して世界中のどこでも、いつでも、誰とでも対戦が可能というオンラインならではのメリットがあります。

製作した作品は、手元の操作ボードでオフライン対戦を疑似的に再現しつつ、入力と出力をインターネットで双方向に通信することでオンライン対戦を可能としたボードゲームとなっています。また、全く新しいオリジナルのボードゲームであり、2人対戦型の陣取りゲームです。最終的な自陣の広い方が勝者となります。

考案したボードゲームの独創的なゲームルールやゲームバランスが良く練られていること、ハードウェアとソフトウェアの完成度の高さが審査員の方々から評価され、最優秀賞受賞となりました。


香川高専(詫間キャンパス)『Voice Cat』を解説している様子。猫耳を付けた学生が楽しく、分かりやすく特長を説明していた。

優秀賞 香川高等専門学校(詫間キャンパス) 『Voice Cat』

優秀賞を受賞した香川高専(詫間キャンパス)は、猫のキャラクターを活用したボイスチャットツールを製作しました。

ボイスチャットを用いたオンラインミーティングでは、対面で集まって行うときと比較して、相手の反応がわかりにくい、発言しにくい等の課題があります。製作したシステムは、これらのオンラインミーティングの問題を解決する機能やオンラインの利点を生かした機能を実装したボイスチャットツールとなっています。

製作したシステムでは、ボイスチャット中のユーザのカメラ映像を直接共有せず、代わりに映像から表情分析を行い、7種類の猫の表情を画面に表示させます。また、発言しにくいといった問題に対しては、誰が発言したか分からないように匿名で、グループ全体にチャットを流すことが可能となっています。これらの機能により、オンラインミーティングの問題点を解決しました。
加えて、話題提案システム・カメラ映像やマイク入力から分析して盛り上がりを判定する仕組み・会話ログを残す機能等といった、オンラインの利点を生かした機能も実装しています。

猫を取り入れた可愛らしいインターフェースや便利機能が充実している完成度の高さが審査員の方々から評価され、受賞となりました。

自由部門

自由部門は、高専生による自由な発想で、コンピュータソフトウェアの企画から実装までを行います。製作した作品は、プレゼンテーションとデモンストレーションによって評価されます。全国から43作品の応募があった中、20作品が本選に進み、海外の高専からの5作品を加えた全25作品が本選で発表されました。
既存の枠にとらわれない自由かつ独創的な発想で、地域・社会課題の解決に向け考案された、様々な作品が集まりました。


東京高専が開発したアプリケーション『お遍路さん』のデモンストレーション。御朱印帳をデジタル化した御朱印アルバムやナビゲーションシステムを披露した。

最優秀賞 東京工業高等専門学校 『お遍路さん−未来につなぐ、お遍路⽂化−』

最優秀賞となった東京高専は、日本の伝統文化である「お遍路(※)」に着目し、お遍路の活動を支援・活性化するアプリケーション『お遍路さん』を提案しました。
お遍路の巡礼者数は年々減少傾向にあり、このままではお遍路文化が人々の記憶から消えてしまうと危惧されています。そこで、日本の大事な文化を継承したい思いからアプリケーション開発を行いました。お遍路の文化はもともと四国発祥ですが、四国から遠く離れた東京の高専生たちが日本の文化遺産を守ろうとする姿勢に、熱いパッションを感じました。

アプリケーションの機能の核となるのは、お遍路の巡礼コースのナビゲーションです。
歴史的なお遍路道を辿るために、GoogleMaps等の地図アプリを利用する方が多いですが、これらの地図アプリでは表示されないような小道があります。『お遍路さん』では、地図アプリにも掲載されない巡礼コースを正確にナビゲーションしてくれます。
ナビゲーションの地図は、アプリを使う端末自体に保存されるため、電波が届かない場所でも利用することができます。他にも『お遍路さん』を通じて、多国籍でも自由にコミュニケーションがとれる自動翻訳機能がついたチャット機能や、御朱印帳をデジタル化した御朱印アルバム等、お遍路の活動を支援・活性化する機能が豊富になっています。

審査員の方々からは、日本文化を守ろうとする熱い思いや、実際にお遍路のコースを歩いたり、お遍路の巡礼者たちから実際に伺った生の声をフィードバックとしてアプリに反映されている点が高く評価され、最優秀賞に選ばれました。

※お遍路:四国に点在している八十八ヶ所の空海(弘法大師様)ゆかりあるお寺を巡礼すること


豊田高専『iMake!』のプレゼンテーションの様子。実際に使ってくれた方たちの声を取り入れて改良を重ねた事について発表した。

優秀賞 豊田工業高等専門学校 『iMake!−3次元仮想メイクで全⼈類の化粧技術向上−』

豊田高専は、年齢性別問わずメイクに興味を持ってもらうため、誰でも気軽にメイクを始めることができるようプロジェクタを利用した仮想メイクシステムを提案しました。
プロジェクタを用いることでメイクを落とす必要もなく鏡でメイクを確認することができ、メイクがより現実的に近い確認ができるようになりました。

本システムは予め用意されたメイクパーツを用いて、メイクの提案やサポートを行うのが主な役割です。現実的なメイクを再現するため、リアルタイムで顔の表情や挙動を検知し投影する追従性を有しており、鏡で確認する時も顔の角度等を気にする必要がない点は現実のメイクに近い完成度を感じました。また、メイクパーツの色は単純なRGB(※①)ではなくHSV色空間(※②)を用いることでメイクパーツのグラデーションを再現する工夫が施されていました。

プロジェクションマッピングを用いた仮想的なメイクの独創性や、オープンキャンパスで子供から大人まで様々な方が利用した意見をシステムに反映したことが評価され、優秀賞に選ばれました。

※① RGB   :赤 、緑 、青 の3つの原色を混ぜて幅広い色を表現する手法
※② HSV色空間:色相、彩度、明度の3つの組み合わせで色を表現する手法

競技部門


優勝 大阪公立大学工業高等専門学校 『10倍⾼速なプログラムを開発します』

今年の競技部門では、全国の高専から44チームが予選を通過し、海外からはハノイ国家大学、タイ高専の2チームが参加し、合計46チームで競い合いました。

今年の競技部門は、開催地群馬県の郷土かるたである上毛かるたを使用し、”音” がテーマの競技を行いました。競技に使用するのは、上毛かるた44枚の読み札の音声データです。始めに問題となる複数の読み札の音声データを、それぞれ時間軸方向に分割し、分割音声データを生成します(最小2個・最大5個、ただし分割数は問題で共通)。さらに、分割領域が同じ分割音声データ同士を重ね合わせます(最小3個・最大20個)。重なり合った分割音声データを解析し、合致する取り札を複数選択します。正解した札数、使用した分割データ数の少なさ等により順位を競います。(競技の概要は下図参照※)

今大会の優勝は、大阪公立高専でした。機械学習を使用することなく、理論的に正解を導くアルゴリズムを構築しました。決勝では、使用した分割データ数が、準優勝である愛媛県の弓削商船高専よりも少なく正解を導いたことで、優勝を勝ち取りました。


※競技の概要:読み札の音声データを分割し、分割領域が同じ分割音声データ同士を重ね合わせたものが問題データとなる。この問題データを解析し合致する取り札を複数選択する。

競技部門での試合風景。かるたの読み札の重ね合わされた音声データを解析し、正確にかるたを選択する技術が求められ、各チームが奮闘した。

おわりに

今大会は、3年ぶりに会場でのリアル開催が叶い、全国の高専から数多くのチームが参加し、オンライン開催とは違ったリアル開催ならではの熱気を感じる大会となりました。

コロナ禍という新しい生活様式が求められる中、高専生たちは日頃から学んでいる学修成果を活かし、限られた条件下でも開発してきた独創的なシステムや技術をプレゼンテーション・デモンストレーションを通じて遺憾なく発揮しておりました。

この一連の姿は近未来のイノベーション創出を担う優れた人材が各高専で着実に育成されている事実を強く印象づけられた次第です。

現代社会の問題を解決し、より良い世界を創出する可能性を秘めている高専生たちの今後の活躍に大いに期待できる、大変有意義な大会でした。

全国高等専門学校プログラミングコンテスト:公式サイト

※この記事の役職等は取材当時のものです。