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高専トピックス

全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト(以下、高専プレコン)は、全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスが参加し、英語によるプレゼンテーション力を競うコンテストです。

毎年全国規模で開催され高専生が競い合うイベントとして、ロボットコンテスト(ロボコン)やプログラミングコンテスト(プロコン)、デザインコンペティション(デザコン)と並ぶ、4大コンテストの1つに位置付けられます。
第15回を迎える今年度の全国大会は、シングル部門16名、チーム部門10チームが出場しました。

「英語が使える高専生」を合言葉に、全国の高専生の英語を用いた表現力の向上、また英語教育に力を入れる学校間・学生間の交流を深める場として2007年度から毎年開催されております。
今回は、2022年1月22日(土)にオンライン配信で開催されたコンテストの様子をお伝えします。

(掲載開始日:2022年2月8日)

コンテストのルール

各発表者が1つのテーマについて、英語でのプレゼンテーションを行います。

シングル部門と3人1組のチーム部門があり、それぞれの発表時間は5分、10分です。
テーマは、自由に決定する事ができ、審査基準は、英語力・発表内容・プレゼンテーション力の3分野を両部門とも評価の対象とします。

それぞれの部門で1位から3位までが決定する事に加え、シングル部門の優勝者には「全国高等専門学校連合会会長賞」が、チーム部門の優勝チームには「文部科学大臣賞」が授与されます。また、全出場チームの中から、特別賞として「COCET(※)賞」、「日本国際連合協会会長賞」、「日本技術英語協会会長賞」が贈られます。

※COCET:全国高等専門学校英語教育学会の略称

シングル部門


優勝した国際高専のAfaf ALAA(アファフ アラー)さんは「Number 10」と題したプレゼンテーションで、実際に直面した不平等を乗り越えた経験を交えながら、平等な社会の実現を訴えた。

この部門で優勝に輝いたのは、国際高等専門学校 国際理工学科のAfaf ALAA(アファフ アラー)さんです。

アラーさんのプレゼンテーションのタイトルは、「Number 10」です。SDGsの10番目の目標である「人や国の不平等をなくそう」に関するプレゼンテーションを行いました。

アラーさんは中学進学時、テニス部に入部しようとしましたが、テニスの大会では、ヒジャーブ(※)の着用が認められていなかったため、入部を断念せざるを得ない状況でした。
その事に疑問を持ったアラーさんが抗議した結果、最終的に競技規定が見直され、大会に参加する事が可能となりました。
この実体験から、ひとりひとりが不平等の是正に取り組む事で、平等な社会は実現できると主張しました。

近年注目を集めているSDGsに関するテーマ設定であり、非常に興味深いプレゼンテーションとなっていました。また、日本国際連合協会会長賞にも選ばれました。

※イスラム教徒の女性が着用するスカーフ


2位となった和歌山高専の新野 理子(にいの りこ)さんは「Defending Teenagers」というタイトルで、性に関する話題を取り上げ、毅然とした態度でプレゼンした。

2位に入賞したのは和歌山工業高等専門学校 知能機械工学科の新野 理子(にいの りこ)さんです。

今回の新野さんのプレゼンテーションのタイトルは、「Defending Teenagers」です。

我が国における10代の性的虐待や中絶の件数は少なくなく、これらの原因は自らを守るための必要な知識不足によるものだと新野さんは考え、世界基準の包括的な性教育の重要性を示し、高専を含めたすべての教育機関での、世界基準の包括的な性教育の導入を訴えました。

抑揚や緩急をしっかりと付ける事により、発表に引き込まれるような魅力的なプレゼンテーションとなっていました。


「How "Speaking to Yourself" is Useful for Learning English」というタイトルで、3位に入賞した宮﨑 倖多(みやざき こうた)さんは、実体験を踏まえて「独り言」の英語学習における有効性について熱弁をふるった。

3位に入賞したのは、奈良工業高等専門学校 物質化学工学科の宮﨑 倖多(みやざき こうた)さんです。

今回の宮﨑さんのプレゼンテーションのタイトルは、「How "Speaking to Yourself" is Useful for Learning English」です。

英語学習をテーマとし、「独り言」を用いた英語学習が他の学習方法と比べて、飛躍的に英語力を上達させる方法であると実体験を交えながらプレゼンテーションをしました。
「独り言」というのは一般的には奇妙な行動です。しかし、英単語を書いて覚えるより早く定着する事や「独り言」を録音して発音等の向上等に適している事を発表しました。

プレゼンテーション内容の素晴らしさだけでなく、内容の説得力が増す、「独り言」によって上達した、淀みない英語発話の力が存分に発揮されたプレゼンテーションとなっていました。

「COCET賞」を苫小牧工業高等専門学校 創造工学科の難波 希(なんば のぞみ)さん(タイトル:「How to Make Online Meetings More Efficient」)が受賞しました。

チーム部門


優勝した明石高専は「Toward an Active Use of Pictograms」というタイトルで、ピクトグラムの効果や可能性についてアンケート等のデータを提示しながらわかりやすいプレゼンを披露した。

チーム部門で優勝に輝いたチームは、明石工業高等専門学校の欅田 壮人(くぬぎた たけと)さん、大池 岳(おおいけ がく)さん、金澤 愛奈(かなざわ あいな)さんのチームです。

明石高専は、ピクトグラムに着目し、ピクトグラムの効果について説明した「Toward an Active Use of Pictograms」というタイトルのプレゼンテーションを行いました。

ピクトグラムは日本発祥で、東京オリンピックの開会式では、ピクトグラムのパフォーマンスが話題を呼びました。
本チームは、ピクトグラムは誰が見てもわかる事から、言語の壁を超える事ができるユニバーサルデザインではないかと考え、文字が小さい地図やテキストのみのレシピをそれぞれピクトグラムで表現されたものと比較し、ピクトグラムの有効性について示しました。

またピクトグラムは、言葉が分からない子供達を、危険から守るために役立つだけでは無く、子供たちに社会的なマナーを教えるために活用できるのではないかとプレゼンテーションを行いました。


2位の津山高専のプレゼンテーションタイトルは「From Student Ambassador Activity to SDGs」。津山高専の学生大使の活動を、SDGs目標達成に貢献する活動へと繋げる新しい取り組みについて提案した。

2位に入賞したチームは、津山工業高等専門学校の森本 樹璃(もりもと じゅり)さん、鳥取 晴南(とっとり せいな)さん、平松 鴻志(ひらまつ こうし)さんのチームです。

津山高専は「From Student Ambassador Activity to SDGs」と題したタイトルのプレゼンテーションで、学生大使の活動を通じてSDGs目標達成に貢献する活動を提案しました。

SDGsでは、持続可能な開発目標を達成すべく17の目標が掲げられています。
本プレゼンでは、目標の4番「質の高い教育をみんなに」、11番「住み続けられるまちづくりを」、17番「パートナーシップで目標を達成しよう」にフォーカスし、学生大使の新しい組織構成の役割と共に、SDGs目標達成に貢献できる活動についてプレゼンテーションが行われました。


3位となった石川高専による「Preserving the Chirihama Nagisa Driveway for the Future」というタイトルのプレゼンテーションは、地元の観光地である「千里浜海岸」の砂浜を復興させるための取り組みについてプレゼンした。

3位に選ばれたチームは、石川工業高等専門学校の坪野 泰侑(つぼの たいゆう)さん、左成 駿(さなり しゅん)さん、毛利川 実歩(もりかわ みほ)さんのチームです。

石川高専は、「Preserving the Chirihama Nagisa Driveway for the Future」というタイトルのプレゼンテーションで、石川県にある「千里浜海岸」の砂浜の幅が減少するのを食い止めるためのアイデアを提案していました。

この千里浜海岸は約8キロの海岸で、その内約6キロは「千里浜なぎさドライブウェイ」として車で走行できますが、波による侵食や地球温暖化による海面上昇が要因で、砂浜が減少しています。本チームは、現在行っている千里浜海岸の保全活動や、千里浜海岸の認知度向上、地球温暖化の抑制について語っており、地元の観光地である千里浜海岸の砂浜を復興させようとする熱い思いが伝わるプレゼンテーションでした。

「日本技術英語協会会長賞」を受賞したのは、鹿児島工業高等専門学校の塩満(しおみつ) みつきさん、福元 恋彩瑠(ふくもと れある)さん、松下 拓海(まつした たくみ)さんのチーム(タイトル:「No More “Mottainai”-Reduce Household Food Waste-」)。「COCET賞」を秋田工業高等専門学校の佐々木 直音(ささき なおと)さん、南野 冠汰(みなみの かんた)さん、髙橋 桜子(たかはし さくらこ)さんのチーム(タイトル:「Cultivating Your Growth Mindset at Kosen」)が受賞しました。

あとがき

今年も高専英語プレゼンテーションコンテストは、コロナ禍のため、オンラインでの開催となりました。
準備に制約がある中で、学生たちがプレゼンの準備をし、発表する姿はとても感銘を受けました。

高専生のコンテストというと、技術力を競うロボコンやプロコンのイメージが一般的には浸透しています。
しかし、高専プレコンもエンジニアとして必要な英語力を高専生たちが発揮している素晴らしいコンテストの1つです。
高専生は技術力は長けているが英語力は乏しいのではないか、というイメージを抱かれがちですが、高専生が英語で楽しくジェスチャーを加えたプレゼンをする姿は、相手の考えも理解した上で自分の想いを伝え、納得させるような、相互のコミュニケーション力を図る、確かな英語力が高専生たちの中で育っていると感じる事ができました。

目まぐるしく変化していく産業社会の未来を担っていく、高専生たちがグローバルな人材として活躍できるのではないかと大いに期待する事ができる有意義なコンテストでした。

第15回全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト:公式サイト

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。