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高専トピックス

はじめに

全国高等専門学校プログラミングコンテスト(以下、高専プロコン)は、全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスの高専生たちが、日頃から学修しているプログラミング技術や情報通信技術におけるアイデアと実現力を競い合うコンテストです。1990年から毎年開催され、今大会は32回目の開催となります。

コロナ禍により、昨年度の大会はオンライン開催かつ自由・課題部門の2部門のみでしたが、高専プロコンはオンライン開催との相性が良く、高専生たちはパフォーマンスを落とすことなく発表等を行えるということで、今大会も引き続きオンライン開催となり、例年通り、自由・課題・競技部門の3部門が行われました。
社会実装を前提とした実践的な教育を行う高専には、IoTやAIといった新たな技術が普及する超スマート社会への変化に対応した人材を輩出することが期待されています。高専プロコンは、こうした社会からの期待に応えるために知識や技術力を高める重要な機会となっています。
今回は、2021年10月9日(土)と10日(日)にオンライン開催された 「第32回秋田大会」 の本選の様子をお届けします。

(掲載開始日:2021年10月18日)

課題部門

課題部門では、与えられた課題を解決するために、チーム一丸となってソフトウェアの企画から実装までを行います。各作品は、独創性やシステム開発の技術力、プレゼンテーション能力、マニュアル記述力等によって総合的に評価されます。
全国から44作品の応募があり、15作品が本選に進み、海外の高専からの2作品を加えた全17作品が本選で発表されました。

今年のテーマは昨年に引き続き「楽しく学び合える!」です。
IoT・AI等の技術が急速に普及している中、2020年度から、小学校におけるプログラミング教育が必修化されました。また今後、中学校・高等学校も情報技術に関する教育課程が見直されます。しかしながら、ICT教育に興味・関心をもつ児童・生徒のニーズに応えるためには、様々な課題があると言えます。
そこで、高専生の技術力やアイデアを活かし、楽しく学び合うことができるソフトウェアの開発に挑戦しました。
タブレット端末やVRゴーグルを使用し、児童・生徒が簡単な操作で学べるように工夫された作品が多く、ICTを活用した教育の発展に繋がる作品が発表されました。


鳥羽商船高等専門学校『学魚養食-遠隔で養殖について学び、地域産業を体験し理解する-』の使用イメージ。網の実際の長さと、画面上での網・魚の長さを測り、比の計算によって、魚の実際の長さを算出する。

最優秀賞 鳥羽商船高等専門学校 『学魚養食-遠隔で養殖について学び、地域産業を体験し理解する-』

鳥羽商船高専は、小中学生が養殖業について楽しく学び、遠隔操作でマダイ養殖のサポートを体験できるシステムを製作しました。

魚類養殖は世界的には成長産業ですが、日本では、少子高齢化や後継者不足を背景として、生産者は減少傾向にあり、生産量は横ばいとなっています。そのため、小中学生に養殖業について興味を持ってもらうことが重要と考えられています。

小中学生は、養殖筏(いかだ)に設置したカメラやセンサから得られる情報をもとに、へい死(※)の確認や簡単な比の計算による魚体サイズ測定等のサポートができます。また、給餌疑似体験機能や生産者からのフィードバック機能付きの日誌作成機能があり、養殖について楽しく学ぶことができます。加えて、生産者とのチャット機能があり、遠隔授業の実施や養殖場の訪問の機会が創出されます。他にも、リアルタイムのいけす状況確認、遠隔給餌、養殖日誌の記録機能、小中学生の日誌へのフィードバック機能等といった生産者向けの機能も充実しています。

審査員の方々からは、地元生産者と小中学生が協力できる点、地域課題の解決に小中学生が関わる事ができる点が評価されました。

※動物が病気などにより突然死すること


鳥羽商船高等専門学校が開発した『SEN−KEN』のアプリ画面。ボールの軌道を予想し、軌道に当てはまる1~9のいずれかの数字を選択する。

優秀賞 鳥羽商船高等専門学校 『SEN−KEN』

最優秀賞に続き、優秀賞の受賞も鳥羽商船高専となりました。
こちらのチームはバレーボールやバドミントンを対象とした、予測能力向上を図るシステムを製作しました。

スポーツで勝利するための重要な要素は、相手の動きを予測すること、相手に自分の動きを予測されにくくすることだと言えます。しかしながら、相手の動きを予測する技術を会得するには多くの経験と時間が必要になり、また、選手自身のフォームの癖に気づくことは難しいと考えられます。製作したシステムでは、アタッカーを撮影し、撮影した動画から骨格座標・ボール座標の検出を行い、これらの情報をデータベースに保存し、データをもとに様々なサービスを提供します。

レシーバー視点の機能では、相手の動きから、ボールの軌道を予測する問題をクイズ形式で解くことでレシーバーのコース予測能力の向上が図れます。アタッカー視点の機能では、任意のボールが通過した地点を選択すると、該当するプレーを再確認することができ、顔の向きや体の開き等の情報が得られ、フォーム改善に役立てることができます。

完成度の高さや、今後他のスポーツへの応用が可能な点が、審査員の方々から評価され、受賞となりました。

自由部門

自由部門は、高専生が自由な発想でコンピュータソフトウェアの企画から実装までを行います。製作した作品は、プレゼンテーションとデモンストレーションによって評価されます。全国から54作品の応募があり、15作品が本選に進み、海外の高専からの2作品を加えた全17作品が本選で発表されました。
独創的な発想で地域・社会課題の解決に向け、考案された様々な作品が集まりました。


大島商船高専『Smart Gathering -未来の農業はもっと賢く-』のロボットアームがキクラゲを自動的に収穫するデモンストレーションの様子。VR上で選択したキクラゲをロボットが1つ1つ丁寧に収穫する機能を実装した。

最優秀賞 大島商船高等専門学校 『Smart Gathering -未来の農業はもっと賢く-』

大島商船高専は、農業従事者をサポートするためVRとAIロボットを用いて、人の経験とAIの高度な予測技術を連携した「スマート農業」のシステムを提案しました。
今回は大島商船高専の近隣で生産されている「キクラゲ」を対象にキクラゲを自動で収穫するシステムを製作しました。

最初に、キクラゲがある菌床を回転体に乗せ、ロボットアームに搭載されているカメラを用いて、菌床全体の写真を撮影し、収穫可能なキクラゲを検出します。
次に、キクラゲの検出後、VR上で生産者が収穫するキクラゲを選択します。選択後、ロボットアームが選択されたキクラゲの座標を特定し、選択されたキクラゲの収穫を行います。
夜間にロボットアームが、キクラゲの検出を行い、昼間に生産者がVR上で収穫するキクラゲを選択することで、労働力の確保や労働時間の短縮が実現できました。

審査員の方々からは、実際に困っているキクラゲ生産者のニーズに耳を傾けて、システム開発を行っている点や、システムの構想が深く考えられている点が評価され、最優秀賞に選ばれました。


香川高専高松キャンパスが開発した『Auto Instructor -AIリハビリ指導システム-』によるユーザへのフィードバックの様子。特定の筋肉部位にセンサを取り付け、筋肉の電気信号を測定し、点数化並びにユーザへのアドバイスを実現した。

優勝 香川高等専門学校高松キャンパス 『Auto Instructor -AIリハビリ指導システム-』

香川高専は、新型コロナウイルスの感染拡大により、リハビリ患者が理学療法士と直接対面して行うリハビリ運動が困難になっている問題に着目し、AIを駆使することで、理学療法士の補助無しでリハビリ運動を可能とするシステムを提案しました。

始めに、正しいリハビリ運動時の筋肉の電気信号を100セットと、誤ったリハビリ運動時の筋肉の電気信号を5種類100セット用意し、Deep Neural Network(以下、DNN※)に学習させます。
リハビリ運動時のユーザの筋肉の電気信号を測定し、学習したDNNを用いて、リハビリ運動が効果的かどうかを点数化することにより定量的に評価し、リハビリ運動の改善点をフィードバックするシステムとなっています。
ユーザインタフェースも高齢者をターゲットとしており、Webページを基本とした操作性を意識して扱いやすいように開発されていました。

理学療法士のフィードバックを得ながらシステム開発を行い、使用するターゲットが明確化されている点が評価され、優秀賞に選ばれました。

※ディープラーニングの1手法

競技部門

優勝 弓削商船高等専門学校 『迅速果断』

競技部門では、各チーム直接対決により勝敗を決定します。今年は全国高専から49チームが予選を通過し、海外からはハノイ国家大学、モンゴル国立大学、モンゴル科学技術大学の3チームが参加し、合計52チームで競いました。

今年の競技部門は、1枚の原画像から同サイズに分割された断片画像をランダムに並べて作られた問題画像を、元の画像に戻すパズルゲームです。まず問題画像から原画像を推測し、次に隣り合う断片画像同士の入れ替え操作を行い、現画像の完成を目指します。制限時間内に、より少ない操作回数によって完成させたチームが勝利となります。この競技は、第25回一関大会でも実施されましたが、今回は上下・左右を飛び越えての交換が可能、断片画像の回転操作の追加等、復元がより困難なものとなっています。

今大会の優勝は、弓削商船高専でした。断片画像の並び替え時の探索アルゴリズムを工夫することで、効率の良いアルゴリズムを構築しました。決勝では、準優勝の大阪府立大学高専との接戦を制し、僅差での優勝となりました。


競技部門・決勝戦のお題は大曲の花火。制限時間20分以内で16×16のピースを並び替えて完成を目指す。

おわりに

今大会は、課題・自由・競技部門と例年通り行われる3部門がオンラインで開催されました。

オンライン開催にも拘わらず、各チームが披露したプレゼンテーション・デモンストレーション内容はすこぶる充実しており、開発してきた独創的なシステムや技術を伝える姿には、とても感銘を受けました。
また、自由部門、課題部門ともに課題に対して、高専生がシステム開発に取り組む行動からは、身に付けてきた技術力・発想力によって、現代社会の問題を解決し社会の役に立ちたい、という熱意を感じることができました。

今日の社会問題を解決するためにシステム開発に取り組む高専生の高い技術力・アイデアが伺える充実した素晴らしい大会でした。

全国高等専門学校プログラミングコンテスト:公式サイト