高専トピックス
アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)は、全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスが、ロボット製作から競技を通じてアイデア対決をするコンテストです。
1988年から毎年開催され、今年で34回目の開催となります。全国の8地区(北海道、東北、関東甲信越、東海北陸、近畿、中国、四国、九州沖縄)で実施された地区大会を勝ち抜き、選抜された25チームと競技委員会推薦1チーム計26チームが全国大会に出場しました。
昨年はコロナ禍により、高専ロボコン初のオンライン開催でさらに今年の地区大会もオンライン開催となりましたが、全国大会は新型コロナウイルス感染者数が落ち着いてきたこと、また会場では、人数制限やマスク着用等の感染症対策を徹底して行うことで、2年ぶりに ”聖地” である両国国技館で開催することが出来ました。
両国国技館での開催は、高校野球における甲子園に通ずる意義があると高専生たちも歓喜しており、高い技術力で製作したロボットや独創的なパフォーマンスを、いきいきと披露していました。
その中でも、表彰に浴した6チームを中心に、独自の発想と高い技術力で競い合った高専生たちの活躍をお伝えします。
(掲載開始日:2021年12月8日)
テーマ・ルール
今年のテーマは、「超絶機巧(すごロボ)」です。去年に引き続き、「アイデア対決」の要素が色濃いテーマとなりました。用意されたフィールド内で、製作したロボットを用いて自由にパフォーマンスを行います。パフォーマンスは各チーム1回ずつ、パフォーマンス時間は2分以内です。
審査においては、チームがこだわった技術の難易度とその達成度を評価する技術点が50点、ロボットのアイデアとパフォーマンスの素晴らしさを評価するパフォーマンス点が50点の計100点満点で、審査員が採点します。
大きな夢とロマンを持ってロボットを製作し、見る者に深い感動を与え、唯一無二のアイデアを実現したチームには、最も名誉ある賞「ロボコン大賞」が贈られます。
また、最も得点の高かったチームが「優勝」、2番目に高かったチームが、「準優勝」となります。その他、アイデア賞、技術賞、デザイン賞、アイデア倒れ賞、企業賞等も用意されています。
ロボコン大賞 & 優勝:国立 小山工業高等専門学校 [栃木県]
プロジェクト名:クアッドアクセラー
出場チームの中で唯一100点満点を獲得し優勝したのは、小山高専でした。また、小山高専は、優勝のみならず、高専ロボコン出場者全員が目指しているロボコン大賞も受賞しました。
製作したフィギュアスケート選手を模したロボットは、機構に一本軸のモータを用いて、ジャイロ効果(※)を利用し自転運動により自立をします。
ロボットのクルクル回る姿や手の動きは、まるで本物のフィギュアスケート選手のようでした。
また、大技「クアッドアクセル」は、ロボットが故障してしまう可能性があるため、地区大会では披露をしていませんでしたが、大技に一発勝負でチャレンジし、見事成功することが出来ました。
成功した瞬間は、会場が非常に盛り上がり、会場全体に一体感が生まれました。審査員の方々からは、圧巻のパフォーマンスで会場を魅了し、唯一無二のアイデアを実現したということで、100点満点の評価を受けました。
※コマが立つように、物体が自転運動をすると(自転が高速であればあるほど)姿勢が乱れにくくなる現象
準優勝:国立 呉工業高等専門学校 [広島県]
プロジェクト名:鼯鼠(ムササビ)物語
2番目に得点の高いチームは、呉高専と香川高専高松キャンパス、香川高専詫間キャンパスの計3チームでしたが、審査の結果、準優勝に選ばれたのは呉高専でした。
呉高専が製作したのは、異なる特徴を持つ3台のロボットです。
パフォーマンスは、各ロボットがそれぞれの技術の特長を活かす動きを順番に行い、最後のロボットが、パイプを登り、プロジェクト名である「鼯鼠物語」と書かれた垂れ幕を掲げるという内容です。
クローラを活かした階段の走行や、重量の大きいロボットのパイプ登り、最後の垂れ幕を掲げるギミック等、多種多様な技術や独創的な発想が随所に散りばめられていました。
全てのパフォーマンスが見事成功し、会場からは、レベルの高い「ピタゴラスイッチ」を見ているようだったという声もあり、見ていて楽しくなるパフォーマンスでした。
アイデア賞:国立 香川工業高等専門学校 詫間キャンパス [香川県]
プロジェクト名:DBZ
他に類を見ない、独創的なアイデアを実現させた作品に贈られるアイデア賞には、香川高専詫間キャンパスが受賞しました。
ジャグリングで使用するコマであるディアボロとボールを使用し、人間でも習熟することが難しいジャグリングのパフォーマンスをロボットと人間で行いました。
ロボットは、ボールマシン1台とディアボロマシン2台の計3台で構成されています。
ボールマシンは、複数の発射機構から精度良くボールを発射します。
打ち出すタイミングを流れている曲のテンポに自動的に合わせたり、ボールを連続発射や同時発射してもぶつからないように計算されていたりと、練り上げられた高い技術を披露してくれました。
また、ディアボロマシンは、自動的にディアボロを打ち出してキャッチしたり、人間と協力してディアボロを渡し合ったりする独創的なパフォーマンスを披露してくれました。
人間とロボットが一致団結して行う完璧なパフォーマンスが評価され、デザイン賞に選ばれました。
技術賞:国立 香川工業高等専門学校 高松キャンパス [香川県]
プロジェクト名:8236(ヤブサメ)
技術的な完成度の高さが評価される技術賞には、複数のロボットを組み合わせて、流鏑馬(やぶさめ)を表現した香川高専高松キャンパスが選ばれました。
製作したロボットは、人型ロボット・四足歩行ロボット・的ロボットの計3台です。
人型ロボットは、操縦者と連動して動作が可能で、正確に弓矢の動作を再現しています。
四足歩行ロボットは、馬らしさの演出のため実際の馬の骨格を参考に設計されており、また揺れを抑えながら歩行できる制御がされています。
的ロボットは、全自動であらかじめプログラムされた位置に移動します。
また、四足歩行ロボットにはカメラ、的ロボットにはARマーカが設置されており、カメラがARマーカを捉えて、自動的に四足歩行ロボットが的を追尾します。
人の動きに連動する制御技術や四足歩行ロボットの歩行技術、ARマーカによる自己位置推定等の技術、弓矢を放つ細かい動きの再現技術が評価され、技術賞を受賞しました。
デザイン賞:国立 大分工業高等専門学校 [大分県]
プロジェクト名:The Great Penguins Show
機能的な美しさや装飾に秀でたロボットを製作したチームに送られるデザイン賞には、大分高専の「The Great Penguins Show」が選ばれました。
「The Great Penguins Show」は、3体の可愛らしいペンギン型ロボットが、お互いに通信しながら、様々なパフォーマンスを行います。
ペンギン型ロボットは、倒立振子の原理を用いて、2つのタイヤのみでバランスをとっており、自力で起き上がったり、30度の傾斜の坂を登ったり、走り回ったりと、まるで本物のペンギンのように振る舞います。
審査員の方々からは、可愛らしいペンギン型ロボットの技術だけでなく、ペンギンショーの世界観を見事に表現した装飾も素晴らしかったというコメントが寄せられました。
アイデア倒れ賞:国立 石川工業高等専門学校 [石川県]
プロジェクト名:箸割観音
アイデア倒れ賞は、その真価を十分には発揮出来なかったものの、見る者に深い感動を与えたチームに贈られる賞です。この賞に今回選ばれたのは石川高専です。
石川高専は、割り箸をきれいに割ってくれるロボット「箸割観音」を製作しました。
後光部分の機構は、後光を回転させ、観音様に割り箸を渡す役割となっており、観音様部分の機構は、4本の腕を駆使して、割り箸を正確に割る役割となっています。
審査員の方々からは、自由度の高い今回の大会テーマを最大限生かし、斬新なコンセプトに基づくアイデアと高い技術力を兼ね備えた素晴らしい作品というコメントを頂きました。
おわりに
今大会は、2年ぶりにロボコンの聖地「両国国技館」での開催となり、オンラインでは感じられない、会場の熱気を感じる大会でした。
また、今大会のテーマである「超絶機巧(すごロボ)」は、高専生たち自らがテーマを決め、ロボットの製作技術・アイデアの独創性・パフォーマンスにおける表現力にて競いました。
自由にテーマを設定しロボットを製作することは、決められたテーマのもとでロボットを製作するよりも難しいものです。
しかし、どのチームも独創的なアイデアでテーマを設定し、高度な技術を用いたロボットの製作を行い、素晴らしいパフォーマンスで会場を湧かしてくれました。
高専生たちが、妥協せずに技術の難易度が高いものに挑戦する姿は、技術力の向上に対してのハングリーさを感じました。
来年以降も、高専生が高度な技術力と如何に自由な発想を発揮してくれるのか、ますます期待が高まる大会でした。
※全国大会での高専生の活躍は、2021年12月25日(日) 午後3時05分~午後3時59分にNHK総合にてTV放映される予定です。
NHK-高専ロボコン:第34回全国大会