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高専トピックス

高専デザコン初となる高専キャンパス内での開催
(会場の呉工業高等専門学校 正門前)

全国高等専門学校デザインコンペティション(以下、高専デザコン)は、高専生を対象とした、生活環境に関連した様々な課題に対する解決手法を競う大会です。毎年開催され、高専生が全国規模で競い合うロボットコンテスト(ロボコン)やプログラミングコンテスト(プロコン)、英語プレゼンテーションコンテスト(プレコン)と並び、4大コンテストの1つに位置付けられています。

全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスならびに海外高専から、主に土木・建築の専攻で学ぶ学生たちが参加し、構造デザイン部門、空間デザイン部門、創造デザイン部門、AM(Additive Manufacturing:3D造形)デザイン部門、プレデザコン部門の5部門で競います。

今大会のメインテーマは「Restart」です。現在、新型コロナウイルス感染拡大により、世界中で不安と閉塞感が続いています。しかしながら、私たちの誰もが、近い将来必ずこの状況を抜け出せると信じています。そこで今大会は、長いトンネルの出口を目指し、再出発できる日をイメージして「Restart」というテーマになりました。

今大会は新型コロナウイルスの影響を鑑み、オンラインでの配信や審査も行い、例年2日間に渡り開催されるところ1日での開催となりました。また、高専デザコン初の高専キャンパス内での開催となりました。

今回は、2021年12月4日(土)に広島県呉市にある呉工業高等専門学校で開催された全国大会の様子をお伝えします。

(掲載開始日:2021年12月21日)

構造デザイン部門 「鉄球の再来」

構造デザイン部門では、各高専が与えられたテーマに沿って橋梁模型を製作し、橋梁模型の耐荷性、軽量性、デザイン性等を競い合います。
耐荷性能を測る載荷試験では、荷重を10kg刻みで増やしていき、最大荷重50kgとする集中載荷試験と、製作した橋梁模型の上に5kgの鉄球を転がす移動載荷試験を行います。鉄球による移動載荷試験は、3年ぶりの復活となりました。

今大会の模型の素材は、一昨年・昨年大会に引き続き「紙」です。「紙」にはその特性である「強さ・軽さ・しなやかさ」を最大限に活かす構造デザインが求められるがゆえに、高専生がこれまでに培った創造力と技術力が試される素材です。


2頭の龍に見立てて名付けられた米子高専の「双龍」。製作した橋梁模型は、参加チーム最軽量の218.8gでありながら、荷重試験では50㎏の集中荷重および鉄球による5kgの移動荷重に耐え抜き、見事、最優秀賞を勝ち取った。

最優秀賞:米子工業高等専門学校
作品名:双龍
作者 :
 瀬崎 大貴さん(4年)
 高野 陽子さん(4年)
 水野 朝陽さん(4年)
 森藤 壮真さん(4年)
 石倉 宗弥さん(4年)
 安藤 悠人さん(4年)

本選には35チームが参加し、最優秀賞には、米子高専の「双龍」が選ばれました。今回の受賞により、米子高専は4年連続の最優秀賞の受賞を果たしました。
製作した橋梁模型は、載荷治具(※)を構造部材の一部として組み込むというユニークな発想のアーチ構造となっています。
また、構造形式だけでなく、部材の断面形状も目的に応じて使い分けるというこだわりもあります。

※載荷治具:載荷の際に使用する補助装置

空間デザイン部門 「住み継がれるすまい」

空間デザイン部門では、対象エリアを自由に設定し、社会や地域のニーズに沿うような空間を提案します。
国内の第一線で活躍する3名の建築家を審査員として迎え、創造力、デザイン力、プレゼンテーション力の3点を中心に評価を行います。

今大会のテーマは「住み継がれるすまい」です。
SDGsでは、「住み続けられるまちづくり」が目標の1つとして設定されており、持続可能な住まいや暮らしのニーズが高まっています。
このような社会情勢を背景として、様々なライフスタイルやライフサイクルの変化に対応可能な、長く住み継がれる住まいやそれを取り巻く空間のあり方の提案が期待されました。
全国の高専から147作品の応募があり、選抜された12作品が本選でのプレゼンテーションに臨みました。


コミュニティ空間となる「網掛け建築」の様子。新しさを感じつつ、既存の風景に溶け込む建築物となっている。

最優秀賞:熊本高等専門学校(八代キャンパス)
作品名:い草のよりどころ~網掛け建築でつながる・広がる新しいい草農家のかたち~
作者 :
 光永 周平さん(5年)
 竹隈 光紀さん(5年)
 園田 朝陽さん(5年)
 長濵 悠都さん(5年)

最優秀賞に選ばれた作品は、日本における畳の生産量のほとんどを占めている熊本県にある八代市千丁町の1つの農家を対象としました。
熊本県におけるい草農家は、年々減少の一途をたどっており、また、い草農家がそれぞれ独立し、コミュニティ空間が外に開かれていないことから、技術や文化の継承が途絶えてしまうことが危惧されています。
そこで、この作品では、母屋や作業場のある敷地と、い草畑の間にコミュニティ空間を設けて、い草農家・新規就農者・実習生のつながりを増やし、い草農家が住み継がれていく提案を行いました。
コミュニティ空間は人々が気軽に集えるように、軽やかな建築である「網掛け建築」となっています。網掛け建築では、特産品販売所・カフェ・休憩所・住居スペース・共用スペース等があり、目的に応じた空間の利用をしています。
審査員からは、既存の空間にシンプルな建築物だけで風景を変える部分は、イメージしやすくリアリティを感じ、また建築物そのものだけでなく、提案されたコミュニティ空間により、新しいランドスケープが生まれる部分が素晴らしいと評価され、最優秀賞を受賞しました。

創造デザイン部門 「再出発! -持続可能な再興を目指して-」

創造デザイン部門では、新たな地方創生について高専生ならではの観点でアイデアを提案し、地域性、自立性、創造性、影響力、実現・持続可能性の5つの評価指標からプロセスデザインの完成度を競い合います。

今大会は「再出発! -持続可能な再興を目指して-」というテーマです。既存の資源や魅力を活かしつつ、常識にとらわれない自由な発想によって、SDGsに配慮した持続可能な地方再興につながるアイデアの提案が求められました。


イベントで使用した「どうぞのいす」。「どうぞのいす」のイベント運営は高専生が行っていたが、今後は高専生サポートのもと、地元住民が運営を継続予定。

最優秀賞:明石工業高等専門学校
作品名:「どうぞ」から蘇るまち ー古参と新規の相生いー
作者 :
 有政 琴美さん(4年)
 岩崎 真由子さん(4年)
 宮本 真実さん(4年)
 山口 ひよりさん(4年)


提案されたアイデアの中で最優秀賞に選ばれたのは、明石高専でした。
明石高専は、兵庫県相生(あいおい)市相生(おお)町を対象とし、「古参と新規の相生い」をテーマとして掲げ、持続可能な再興を提案しました。
相生町は兵庫県相生市の南部に位置する町であり、かつては漁業や造船業が盛んに行われ、港町として多くの人々が住んでいました。しかし、年々人口減少や高齢化が問題となっています。
相生町では住民同士の関わりが深く、井戸端会議や「よければこれどうぞ」の文化が残る古き良きコミュニティが根付いています。
そこで明石高専は、相生町の魅力を多くの人々に知ってもらうために、古き良きコミュニティに着目し、「どうぞのいす」というイベントを企画しました。
「どうぞのいす」というのは、同名の絵本から着想を得ており、物々交換によって相生町の住民(古参)や、相生町の外から来る人たち(新参)との繋がりを築きます。
イベントは、物々交換の機会を提供する場であり、また、使用する椅子も廃材から製作しているため、コストがかかりません。
このイベントは3日間開催し、60人以上の方が参加され相生町に賑わいが蘇り、相生市のまちづくり推進室からは、是非続けてほしいと声が寄せられました。
審査員の方々からは、本部門のテーマである「地方創生」を実現するイベントを実際に開催し、高専生が地域に変化をもたらした部分が抜群に素晴らしかったというコメントもあり、最優秀賞を受賞しました。

AMデザイン部門 「ついでに解決しよう!」

AM(Additive Manufacturing:3D造形)デザイン部門では、3Dプリンタの造形技術を活用して、テーマに沿った作品を製作します。新規性・独創性・活用性、技術的課題の解決・実用性、プレゼンテーション力の観点で作品が評価されます。

今年は「ついでに解決しよう!」というテーマです。
身近な生活の中で、気づかずに捨てられていくエネルギーは様々な場面で存在します。「ついでに発電・ついでに動作」する機器とそのエネルギーを利用した「生活が楽しくなる機器」をテーマのもと、高専生たちはその捨てられていくエネルギーを活用し、「生活が楽しくなる」新しい機器開発を行いました。


神戸市立高専が製作した「アンブレ螺」。傘を閉じるついでに水切りする機能は状況に応じて切り替えが可能。

優秀賞:神戸市立工業高等専門学校
作品名:アンブレ螺
作者 :
 有馬 朋希さん(3年)
 東  悠月さん(3年)
 永樂 朋輝さん(3年)
 森口 輝一さん(2年)


優秀賞に選ばれた神戸高専は、傘を閉じるついでに水切りをする傘を製作しました。
傘を閉じる際の引っ張る力を回転する力に応用し、傘についた雨粒を遠心力で飛ばすことが出来ます。
傘の中棒には3Dプリンタで一括造形した接続部品が取り付けられており、傘を閉じることによって、傘の上ろくろと下ろくろ及び接続部品が中棒を中心として回転します。また、中棒には負担がかからないよう螺旋形状にすることで、緩やかな回転を実現しています。


仙台高専(名取キャンパス)が製作した「Circu-up(サーキュ・アップ)」。アルコールポンプに取り付けることができるピンボールには様々なバリエーションがあり、子供たちが飽きない工夫がなされている。

優秀賞:仙台高等専門学校(名取キャンパス)
作品名:Circu-up(サーキュ・アップ)
作者 :
 白田 陽彩人さん(5年)
 吉田 陽さん(5年)


優秀賞に選ばれた仙台高専名取キャンパスは、コロナ禍でアルコール消毒をする機会が増加したことと、子どもたちが手指消毒を丁寧に行わないことを背景に、手指消毒に用いるアルコールポンプに着目しました。
アルコールポンプの弾性エネルギーを利用し、ピンボールとおみくじを組み合わせてゲーム性を持たせ、アルコール消毒するついでに子どもたちが楽しくしっかり消毒できる作品を提案しました。
アルコールポンプには、3Dプリンタで造形したビー玉を装填する機器が接続されています。アルコールポンプを押すことによって、ビー玉が転がり、アルコールポンプ横のピンボールへとビー玉が流れていきます。また、ピンボール下部に落ちたビー玉を再び持ち上げる仕組みとして、階段機構を用いています。
製作した機構では、一般的な階段の形状では無く、鉛直上に移動することで幅を取らない、螺旋状へ変更する工夫がなされています。

※今年はAMデザイン部門における最優秀賞の受賞校はありませんでした。

プレデザコン部門 「みらい」

プレデザコン部門は本科3年生までの低学年を対象とした部門です。他部門と関連した3つのフィールドに分けられ、各課題に対するデザインの提案を行いました。
今回のテーマは「みらい」です。コロナ禍の中で変化した社会や個人の未来を意識し、未来に繋がるような作品に期待されました。

空間デザインフィールド
現存または過去に実在した構造物あるいは風景について、独創的・創造的な時間・空間をコラージュした「似て非なる」唯一無二の時空をA3サイズのポスターで製作します。投票によって順位が決定します。

創造デザインフィールド
2022年度に開催される有明大会(主幹校:明石工業高等専門学校)で使用するエコバッグのデザインを製作し、開催地域である有明(大牟田市、荒尾市)にふさわしいデザインをA3サイズのポスターで表現します。空間デザインフィールドと同様に投票で順位が決定します。

AMデザインフィールド
200gの分銅を1m自由落下させ、落下時の衝撃を吸収するシェルターを3Dプリンタで製作します。落下時の衝撃力のピーク値をロードセル(※)で測定し、値が小さいほど、順位が高くなります。

※荷重を感知するセンサのこと

おわりに

高専デザコンは、高専ロボコンや高専プロコンといった与えられたテーマのもとで工学技術力を競う各種コンテストと比べ、実際に発生している社会問題や地域課題を解決するための豊かな発想力・創造力を競う要素の色濃い大会となっています。

どの部門も、すぐにでも社会実装が望まれるようなデザインやアイデアが並び、高専生たちが工学技術にとどまらず、日頃から日常生活に根ざした実践的な発想力や創造力を培っていることが窺えました。

コロナ禍により、製作環境に制限がある中でしたが、各作品は例年と遜色なく、今大会は取材に足を運んだ我々にとっても、「Restart」へ向けて、明るい希望を持たせてくれました。

※この記事の内容は取材当時の情報です。