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高専トピックス

全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト(以下、高専プレコン)は、全国の国立・公立・私立の高専58校63キャンパスが参加し、自由なテーマで英語によるプレゼンテーション力を競うコンテストです。

高専プレコンは今年度で17回目の開催となりました。「英語が使える高専生」というスローガンの下、2007年から毎年開催され、高専生の英語運用能力の向上、英語教育の重要性の理解促進、更に学校間・学生間の交流を深め、国際的な視野を持つ技術者の育成を目指しています。
また、毎年全国規模で開催され、高専生が競い合うイベントとして、ロボットコンテスト(ロボコン)やプログラミングコンテスト(プロコン)、デザインコンペティション(デザコン)と並ぶ、4大コンテストの1つに位置付けられます。

今回は、2024年1月27日(土)と28日(日)の2日間、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されたコンテストの様子をお伝えします。

(掲載開始日:2024年2月15日)

コンテストのルール

各発表者が選んだテーマについて、英語でプレゼンテーションを行います。

シングル部門と3人1組のチーム部門があり、それぞれの発表時間は5分と10分です。両部門ともテーマは自由に選択可能で、審査基準は英語力、発表内容、プレゼンテーション力の3点で評価されます。

プレゼンテーションの後には、発表者と審査員による質疑応答が行われます。質疑応答では、即座に質問に答えたり、アドリブで適切な反応を示したりする能力、更には機知に富んだコミュニケーションスキルも評価の対象となります。

各部門で1位から3位までが決定され、シングル部門の優勝者には「全国高等専門学校連合会会長賞」が、チーム部門の優勝チームには「文部科学大臣賞」が授与されます。
更に、全出場チームの中から特別賞として「COCET(※)賞」、「日本国際連合協会会長賞」、「日本能率協会会長賞」が贈られます。

※COCET:The Council of College English Teachers(全国高等専門学校英語教育学会)の略称

シングル部門本選出場チーム一覧

高専名 タイトル 発表者(学年) 表彰名
苫小牧工業高等専門学校 “It doesn’t matter to me” KOMAKI, Masashi (3) 全国高等専門学校連合会会長賞(1位)
東京工業高等専門学校 Tips from a Belgian school: How to create a more multicultural education system HASEGAWA, Chiharu (3) 2位
石川工業高等専門学校 Elegance in Steel and Concrete SHINTANI, Saki (4) 3位
長岡工業高等専門学校 The Climate Question GONDAIRA, Takumi Bryan (2) 日本国際連合協会会長賞
鹿児島工業高等専門学校 Chiffon’s Magical Gift OTA, Saki (3) COCET賞
旭川工業高等専門学校 Respect Others as Well as Yourself KOIKE, Ibuki (3)
明石工業高等専門学校 Who Do You Trust More, AI or Humans? MATSUURA, Saya (4)
秋田工業高等専門学校 Maximizing Your Learning with Purpose KATO, Yu (4)
呉工業高等専門学校 How to change the world by myself HONJO, Kota (Adv.1)
呉工業高等専門学校 The place where local communities arise AKIYAMA, Hinako (2)
阿南工業高等専門学校 Diversity? What’s that? TSUJIOKA, Kento (4)
仙台高等専門学校
(広瀬キャンパス)
Challenge is the key MURAKAMI, Yumeka (4)
高知工業高等専門学校 Benefits of Space Exploration FUKUHARA, Soma (2)
奈良工業高等専門学校 The Volunteer with Your Hair HOSHINO, Momona (3)
富山高等専門学校
(本郷キャンパス)
Hair Loss YAO, Yixuan (2)
大分工業高等専門学校 Born Japanese ETOU, Koutarou (5)

チーム部門本選出場チーム一覧
高専名 タイトル 発表者(学年) 表彰名
明石工業高等専門学校 Considering What It Means to Think Globally but Act Locally SEKI, Mami (4)
HOSOMI, Sosuke (4)
SOGA, Futa (4)
文部科学大臣賞(1位)
豊田工業高等専門学校 Mental strength as the key to victoryTAKEMURA, Maki (3)
SUMIYA, Ami (2)
ISHII, Karin (2)
2位 & 日本能率協会会長賞
熊本高等専門学校
(八代キャンパス)
Find Your “Caffeine”: Foster Your Better Study Habits HARADA, Ryuta (5)
YAMASHITA, Hiroyuki (5)
FUJITA, Maho (4)
3位
米子工業高等専門学校 Crow Chaser YADA, Honoka (Adv.1)
HINO, Katsuhiko (Adv.1)
YONEDA, Shunichi (Adv.1)
COCET賞
石川工業高等専門学校 New Precautions for an Earthquake from the View of Engineering Students NAKAGAWA, Ruka (1)
YOSHIDA, Kokoro (1)
NISHINO, Mao (1)

神戸市立工業高等専門学校 Navigating the Digital Realm: A Journey into HCI ADACHI, Yuki (5)
IRIMOTO, Seiya (5)
OTSUKA, Makoto (5)
沖縄工業高等専門学校 Trash at 8 km/sec AHANE, Yuri (2)
OMORI, Koharu (2)
NAKAMURA, Megumi (2)
福島工業高等専門学校 SDGs Initiatives by The Company in Iwaki City ISHIMOTO, Airi (2)
SUZUKI, Yuna (2)
NISHIZUKA, Reiri (2)
呉工業高等専門学校 Let’s Increase the Number of KOSEN Girls! IKEDA, Nonoha (1)
ICHINOSE, Fumina (1)
NOGAMI, Momoka (1)
秋田工業高等専門学校 Challenging the Common Sense: Communication Skills Always Lead to Positive OutcomesKAGABU, Seichiro (2)
SHIBATA, Koshi (2)
UESUGI, Rikuto (3)

※Adv:専攻科

シングル部門


提案手法をエビデンスと共に分かりやすく話す、効果的なプレゼンテーションを披露した。

学校名:苫小牧工業高等専門学校
タイトル:“It doesn’t matter to me”
発表者:駒木 允こまき まさし(創造工学科3年)


苫小牧高専の駒木さんは、若者の選挙関心をテーマに、現在の10代、20代の投票率が60代の投票率と比べて約半分と投票率が著しく低いことを述べ、若者が選挙に無関心であるという政治意識低下の現状を指摘しました。

この問題への解決策として、駒木さんは高専の教育アプローチを応用し、若者の政治意識を高めるための提案を行いました。
高専では、未来の産業をリードする技術者を育成するため、専門知識豊かな教授から直接技術を学んだり、技術者としての素養を育みます。その結果、就職を希望する学生の99%が就職に成功しています。
駒木さんは、政治教育においても、直接的な政治家との関わりを通じて、若者の関心を高めることが出来ると提案しました。更に、若者の投票率を上げる実証的な根拠として、政治をカリキュラムに組み込むスウェーデンの例を挙げました。

問題提起から具体的な手法提案、エビデンスに基づく裏付けまで、高専での学びを反映した発表でした。彼の提案が実現すれば、若者たちの選挙への関心が高まり、政治活動への積極的な参加を促進することが期待できるプレゼンテーションでした。


日本でも多文化的教育が発展し、どのような出自人でも教育の平等が担保されるよう訴えた。

学校名:東京工業高等専門学校
タイトル:Tips from a Belgian school: How to create a more multicultural education system
発表者:長谷川 千晴はせがわ ちはる(機械工学科3年)


東京高専の長谷川さんは、自らの異文化交流経験に基づいて、多文化教育に関するプレゼンテーションを行いました。
彼女は、フランスの学校において、約半数の学生が移民であることを知りました。

この学校は異文化間の理解と尊敬を育むカリキュラムを持っています。更に、ベルギー政府は「OKAN(Onthaalklas voor anderstalige nieuwkomers)」と呼ばれる教育プログラムを通じて、外国語を母語とする中学生向けのレセプションクラス(※)を提供しており、移民の子供たちがベルギーの言語や文化に効果的に適応できるように手厚い支援を行っています。
一方、日本ではOKANのような移民の子どもたちに文化や日本語教育を行えるカリキュラムや施設が不足しており、移民の子どもたちの高校進学率は約60%と低い水準にとどまっています。

長谷川さんは、日本もベルギーのOKANに倣った仕組みを導入し、移民の子どもたちの教育支援により注力すべきだと提案しました。

※ レセプション:移民や異文化の背景を持つ子どもたちが新しい国の教育システムに適応するための支援クラス


橋梁の問題について定量的に説明をし、とてもわかりやすいプレゼンテーションだった。

学校名:石川工業高等専門学校
タイトル:Elegance in Steel and Concrete
発表者:新谷 咲希しんたに さき(環境都市工学科4年)


石川高専の新谷さんは、橋梁の魅力についてプレゼンテーションを行いました。
日本の橋梁は老朽化問題に直面しており、その背景として橋梁維持のための土木技術者不足という問題が挙げられます。

新谷さんは、この問題を解決するためには、もっと橋梁への関心を高め、興味を持ってもらうことが必要だと指摘し、橋梁の魅力について熱く語りました。
各橋が持つ独自の構造デザインの重要性について、犀川大橋さいがわおおはし(※)のような具体例を挙げながら、橋梁が工学的な側面と建築的創造力を融合し、機能性だけでなく美的価値をも提供することを示しました。
更に、橋が人々をつなぎ、あらゆる場所へのアクセスを可能にし、日常生活に利便性をもたらすという点も強調しました。

このプレゼンテーションを通じて、新谷さんの橋梁に対する深い愛情と情熱が明確に伝わりました。

犀川大橋さいがわおおはし:石川県金沢市の犀川中流に位置する、1924年に建設された歴史的な橋で、2000年に国の登録有形文化財に指定された。

チーム部門


貧困が深刻な問題となっているカンボジアにフォーカスした社会的意義のある発表内容であった。

学校名:明石工業高等専門学校
タイトル:Considering What It Means to Think Globally but Act Locally
発表者:関 真実せき まみ(電気情報工学科4年)
    細見 草介ほそみ そうすけ(都市システム工学科4年)
    曾我 風太そが ふうた(建築学科3年)

チーム部門で優勝に輝いたチームは、明石工業高等専門学校の関 真実さん、細見 草介さん、曾我 風太さんのチームです。

明石高専は、「Considering What It Means to Think Globally but Act Locally」というタイトルで、SDGsの17の目標のうち、1番「貧困をなくそう」、12番「つくる責任、つかう責任」にフォーカスしたプレゼンテーションを行いました。

明石高専では研修の一環として、OCP(Overseas Community Project)と呼ばれる、カンボジアでの開発途上国の状況を調査し、同時に地元の人々にボランティア支援を提供する活動を行っています。

発表ではカンボジアの実情を交えながら、カンボジアのために私たちが出来ることについて提案しました。


実体験を交えた発表であり、発表には説得力があった。

学校名:豊田工業高等専門学校
タイトル:Mental strength as the key to victory
発表者:竹村 真希たけむら まき(電気・電子システム工学科3年)
    角谷 亜美すみや あみ(環境都市工学科2年)
    石井 香凛いしい かりん(建築学科2年)

2位に入賞したチームは、豊田工業高等専門学校の竹村 真希さん、角谷 亜美さん、石井 香凛さんのチームです。

豊田高専は「Mental strength as the key to victory」と題したタイトルで、スポーツにおけるメンタルの重要性について、プレゼンテーションしました。

メンタルとパフォーマンスに関する研究や学校の部活動での実体験、野球選手の大谷翔平さんのマンダラチャート(※)等を例に出し、結果を出すためには技術力の研鑽や体づくりと同等にメンタルを整えることの重要性について発表を行いました。

※ マンダラチャート:目標の達成や問題の解決をより効率的に進めるため、目標やアイデアを体系的に整理して視覚化すること。


発表では、ジェスチャーを交えながら流暢な英語を披露した。

学校名:熊本高等専門学校(八代キャンパス)
タイトル:Find Your “Caffeine”: Foster Your Better Study Habits
発表者:原田 龍汰はらだ りゅうた(機械知能システム工学科5年)
    山下 央将やました ひろゆき(機械知能システム工学科5年)
    藤田 真歩ふじた まほ(生物化学システム工学科4年)

3位に入賞したチームは、熊本高等専門学校(八代キャンパス)の原田 龍汰さん、山下 央将さん、藤田 真歩さんのチームです。

熊本高専は「Find Your “Caffeine”: Foster Your Better Study Habits」と題したタイトルで、勉強とカフェインに焦点を当てたプレゼンテーションをしました。

試験期間中におけるクラスメートのカフェイン摂取量を調査した結果、カフェイン摂取量が試験期間外と比較して大幅に増加しており、試験勉強の一助になっていることが分かりました。
しかしながら、一般的にカフェインの過剰摂取は身体に悪影響を引き起こす危険性があることを示す研究があることも事実です。

そのため、健康を損なわない代替方法を模索することが必要であり、健康的な習慣を取り入れ、自分自身の「新しいカフェイン」を見つけることで、勉強習慣と全体的な健康を向上させることが重要であると結論付けました。

おわりに

高専プレコンを通じて、日々技術力を磨きつつ、理学、化学、工学などの専門知識と共に英語力の向上にも余念がない全国の高専生たちの姿に触れることができました。
英語力とは、単に言語を理解することに留まらず、相互理解を深め、自己の考えを効果的に伝えるコミュニケーション能力です。

高専プレコンでの学生たちのプレゼンテーションを聞き、彼らが高専教育を通じて世界で活躍するために不可欠な相応の英語力を身に付けていることを強く実感しました。
これは、国際的な舞台での社会課題解決並びに社会実装に不可欠な技術者として、必要な資質を育んでいることの明確な証左です。

技術力とコミュニケーション能力の両方に秀でた高専生が将来、産業界で重要な役割を担い、近未来において大いに活躍することが望まれる、大変有意義なコンテストでした。

第17回全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト:公式サイト

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。