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高専トピックス

●指導教員
・早坂 太一(はやさか たいち)先生(情報工学科 教授)/画像左
・大畑 卓也(おおはた たくや)先生(環境都市工学科 准教授)/画像右

日常の授業の成果確認にコンテストを活用


高専コンテストに限らず、様々な方面で教員、学生が活躍し、表彰されています。

早坂先生: 近年はどのような技術領域であっても、AI等の情報技術の最先端を取り込まなければ、さらにその先に進めなくなっています。
言い換えれば、情報技術は、課題を抱えている技術領域と結びつくことによって、価値のある成果を導き出せると考えることができます。
そもそも豊田高専の情報工学科では、単に高度なプログラミング技術を教えれば良いとは考えてはおらず、社会の要請に柔軟に対応できる創造的な技術者を養成する指導を目指しています。
そうした指導による授業の成果を、学生たちが確認できる場として、全国の高専間で競う各コンテストは極めて有効だと考えています。

大畑先生: 私が指導する環境都市工学科においても、自然環境及びインフラストラクチャーなどを将来に向けて保存すべく環境保全技術と持続可能な開発技術を担う人材の育成を図っています。そこに不可欠となる情報技術に関する授業科目も開講しています。
早坂先生と共に学生たちを送り出しているDCONやインフラテクコンは、授業を応用した取り組みと言えます。

最初のDCONから手応え


DCON2022では、温湿度及び顔画像を用いた熱中症リスク推定システムにより企業賞としてウエスタンデジタル賞を受賞。
その後、NHKをはじめ多くのメディアで紹介されました。

早坂先生: 早坂・大畑Labチームが最初に成果を上げたのは、2022年4月28日と29日に技術審査会と本戦が行われたDCON2022でした。
当時、専攻科に所属していた情報科学専攻2年生の村上 智久真(むらかみ ちくま)さんと建設工学専攻2年生の安田 悠哉(やすだ ゆうや)さんがウエスタンデジタル賞を受賞。
「熱中症リスクを可視化する健康レジリエンスシステム」に、5000万円の企業評価額が付けられました。

DCON2022の様子はこちらからご覧頂けます。

大畑先生:環境都市工学科の学生の多くが卒業後に接点を持つことになる建設業や製造業に従事する方々の熱中症リスクを、表情と温度と湿度のデータを組み合わせた機械学習によって判定するという内容で、間違いなく身近な社会課題の解決を図ったものです。

早坂先生: この時の成果は、健康アプリ開発会社や複数の総合建設会社、化学会社が連携した実証実験へとつながり、本格的な社会実装に向かっています。

大畑先生:まさに環境都市工学の現場課題の解決に情報工学の最新技術が活かされたケースになったと言えるでしょう。

学科連携が発揮されたインフラテクコン

早坂先生: 村上さんと安田さんは、翌年2月24日に開催されたインフラテクコン2022においても、「わくわく賞」と、3社1団体から複数の企業賞を受賞しました。
作品タイトルは「ドローン画像を用いた橋梁点検支援システムの開発!」です。
文字通りドローンで撮影した橋梁のひびなどの画像をAIで解析し、点検作業の効率化や改修箇所の早期検出を実現するものです。そして、この時の受賞が、インフラテクコンの次の回のテーマを引き寄せました。

大畑先生: いただいた企業賞の一つに熊谷組賞があり、その副賞が工事現場見学会でした。
早坂先生の指導する学生と私の指導する2学科の学生たち10名がこの見学会に参加。そこで知らされたことが、日本各地の建設現場において、1日平均で1名の作業員の方が転落等の事故で亡くなっているという事実でした。
このことを問題視した学生たちは、情報技術による解決案を検討し、それを具現化していく開発がスタートしました。
そして最終的に結実したのが、インフラテクコン2023で発表した「AIを活用し作業員の安全器具の装着状況を検出する装置の開発」です。
具体的な内容は、まず建設工事作業前の作業員の全身を撮影し、AIがヘルメットや手袋、安全帯などの安全装備を装着しているか判定。その結果をLINEで現場責任者に送るというものです。安全装備を完璧に装着してもらうことで、事故を無くそうとしたのです。

早坂先生: 学生たちの、人の命に関わる重大な問題を解決したいという意志が、内容のある発表につながったと言えるでしょう。
この発表でも、「わくわく賞」、2社からの「企業賞」、「地域賞」を頂きました。

大畑先生:前回と学生のメンバーは入れ替わりましたが、難しい問題に物怖じせずに取り組む姿勢が共通しているのは、豊田高専に脈々と受け継がれている風土なのかもしれません。次のコンテストに向けた取り組みも佳境を迎えています。


2024DCONでは、大臣賞として経済産業大臣賞、企業賞として日本ガイシ賞、ブリヂストン賞を受賞。

早坂先生: DCON2024の本戦が5月にあるのですが、本戦進出はもう確定しています(取材時令和6年4月)。
発表内容は「深層学習を利用して、コンクリート構造物が固定するCO2を定量的に評価するシステムの開発」です。
コンクリートはCO2を吸収・固定する性質を持つのですが、最初に評価対象となるコンクリート構造物を3Dスキャンしてコンクリート総面積を算出し、次に撮影したコンクリート表面化画像からAiでCO2吸収速度を予測。そして構造物全体のCO2吸収量を評価してカーボンクレジットの発行や売買につなげるビジネスを提案する予定です。
この半年の学生たちの奮闘で、CO2吸収量の誤差は15%から6%くらいにまで下がりました。社会実装にかなり近づいた成果であり、学生たちは口々に「本戦には自信を持って臨める」と言っています。

※2024年5月10日11日 東京の渋谷ヒカリエで開催された本戦では、大臣賞として経済産業大臣賞、企業賞として日本ガイシ賞、ブリヂストン賞を見事に受賞されました。
DCON2024の様子はこちらからご覧頂けます。

お忙しい中、お答え頂きありがとうございました。

(掲載開始日:2024年6月27日)

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。