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高専出身者の『転職体験記』

身体障がいのある高専出身者、総合電機メーカーの電気・組み込み系技術者への転職

Information
    • 橋本 拓也 氏 / 30歳
    • 近畿地方の国立工業高等専門学校 電気工学科 卒
      近畿地方の国立工業高等専門学校 専攻科 電子情報工学専攻 卒
      国立の工学系単科大学院 情報理工学研究科 修了
      TOEIC 545点

①新卒就職時の志向

学生時代は電気技術やプログラミングに魅力を感じており、技術者として製品開発に関わりたいと考えていました。新卒の就職では、電気製品の設計開発や評価に関する仕事に就くことができました。

②入社した会社での業務経験

新卒では通信・電力機器メーカーに入社しました。担当業務は、通信通話装置の増幅回路周りの設計変更、デジタル回路周りの設計変更、マイコン部を含めた試作製品の性能評価です。

2社目は大学法人の研究補助員として、ある福祉機器の実用化プロジェクトの電気系・マイコン周りの要素開発や機能改善、メカ部分の設計・試作、全体システムの構築と評価、類似用途への対応設計等、幅広く関与しました。

③転職するに至った理由・きっかけ

新卒入社の会社では、希望とかけ離れた配属であったこと、部署変更が見込めない縦割り環境であることから、以前から挑戦したいと考えていたある福祉機器の開発設計技術者を志しました。この福祉機器は採算性が得られにくいために国内メーカーが存在せず、当然ながら開発設計の仕事も存在しませんでした。そこで、研究開発や製造メーカーの立ち上げといった方向で挑戦するべく大学院の門を叩きました。

ここでは、その福祉機器の開発プロジェクトにおける設計・開発・システム構築・臨床評価・販売体制構築等、非常に多くの工程・要素に関わりました。ですが、やりがいだけでは生きていけないこともあり、入職時に「採算が取れず、希望するポジションを得られる見込みがなくなり、生活が困窮する可能性が高くなる」ということを想定しました。
そこで、転職がギリギリ可能であると考えられる30歳をリミットとし、その時点で十分に生活できる収入を得られなければ、転職することを条件としました。実際に30歳のリミットがやってきたことで、転職活動を開始しました。

学生時代を含め、これまで一貫して電気機器の設計開発から離れませんでした。また、大企業の子会社の立場、大学内の研究室の職員の立場、新規組織の創業メンバーとしての立場等、異なる環境・機器に関わって来たことで、様々な物の見方や知見を得られていることも強みと考えました。

私はこれからも、一つの製品の一つの要素のみに関わり続けるのではなく、様々な製品に関わって視点を広げたいとも考えていました。そして「既にあるもの」と「新しいもの」、「既にあるもの同士」をうまく組み合わせることで、新しい価値を生み出すことを意識して取り組んできました。私には身体障がいがあるのですが、その「身体障がい者」と「福祉機器の開発者」という立場を組み合わせることで、第三者ではない当事者の目線からより良いフィードバックを開発に取り入れることができる、という方法をとっていました。

ネガティブに捉えがちなものと、別のものを組み合わせることで、元よりはるかに高い価値を生み出すことができました。次の職場でも、この様な考え方を活かして活躍したいと考えました。

④転職活動でこだわった点

転職開始時のこだわりは、電気または組み込み系の設計・開発・評価・生産等の技術職であることです。また、障がい者に対する理解のある職場であること、福祉機器としての電気機器を対象とした設計開発であること、できれば複数の商品に関われることにもこだわりました。

実際にご相談していたエージェントには、これらを伝えて活動を開始しました。

⑤転職活動を通じての気づきや学び

面接や職務経歴書でこれまでの経歴を説明する時、魅せ方や切り口をどのような形にし、丁寧に練り込むか、が極めて重要であると感じました。ネガティブに見える要素も、説明の仕方や他の経歴と組み合わせた説明構成を作ることで、魅力的に見せるのも一つのスキルであると思います。当然ながら嘘を混ぜることは許されませんが、言い回し一つで受け取られ方が全然違うということです。

また、事前に会社の事業内容についてどこまで深く調べあげられるか、その事業をどこまで好きになれるか、という要素も選考の土壇場で強く効いてきたと思います。実際に「事業についてよく理解されていて、非常に好感が持てる」と高評価を頂きました。

エージェントを利用することで、この2点のアドバイスを頂けたことは大きな助けとなりました。

次に、選考時に障がいをオープンにすることについて感じたことが三点あります。
一点目は、障がい者に対する理解には、企業に障がい者への相応なサポート制度があり、更に様々なポジションの受け皿があることが重要だと感じました。そのためこの観点に於いては、規模の大きな企業を狙うことが望ましいと思いました。

事例としては、新卒で入社した会社が挙げられます。200名程度の規模の会社で、選考はSPIと役員面接のみで、その時に障がい者であることをオープンにした上で一般枠での入社となりました。しかしながら、職場に障がい者への理解がない社員とその取巻きがおり、不快な思いをしたにも拘わらず、そのような時の対応例が社内の知見として極めて少なく、やりにくさを感じていました。(推察ですが、現場に障がい者採用の前例や対応ノウハウがないにも拘わらず、役員の一存で決定してしまった結果なのではないか?、と考えています。)

二点目は、「障がい者向け福祉機器を開発している」イコール「職場の障がい者に理解がある」ではないことです。

そして三点目は、障がい者雇用におけるメリット・デメリットや、専門性のある場合のメリットについてです。

エリートネットワーク様には、大企業を中心に求人案件をご紹介頂き、選考に進んだ企業では「障がい者雇用」として話が進みました。一般的に「障がい者雇用は不公平だ」という意見も散見しますが、最終選考まで進んだ2社のうち、1社では「技術力不足」を理由に不採用となっており、選考基準は一般と変わらず、障がいをオープンにするか否かの違いでしかないと感じました。

障がい者であることをオープンにする場合、採用側は「障がい者の雇用率を高める」といった利点が発生するので、その点で選考には有利であるとは感じます。しかし色々と調べた範囲では、障がいをオープンにした上で雇用してもらえる代わりに、就けるポジションは比較的社内調整が効く「事務職」や「工場作業者」であることが多く、キャリアアップや年収におけるデメリットが強いように感じます。
技術系等の専門的な経歴を持つ人材であれば、障がい者であっても設計・開発等のポジションのチャンスが生まれます。こうなると障がい者雇用率の増加という点でのメリットが良い方向に働くように感じました。ただし、結局は経歴やスキルは一般と同等の視点で厳しく吟味されることに全く違いはありません。

最後に、反省点が2点あります。
一点目は、SPIはやり過ぎるぐらいに繰り返し例題を解いておくべきだったということです。今回の転職活動では運良くもSPI選考は全て通過しましたが、時間配分や速さ等に問題があったように思いますし、そこを厳しく判断する会社では通用しなかった可能性があったかと思います。

二点目は、他社エージェント経由の面接を含めて、技術的な質問にスムーズに回答できなかったことです。これは技術者志望としては致命的であったと反省しています。最終選考に進んだあるメーカーでは、恐らくではありますが、面接にて技術的な質問に詰まりながら回答したことが不採用の決め手となってしまったと感じています。(入社後のポジションや仕事内容まで決まっていた段階だったので、技術的な質問で失敗しなければ内定が出ていた可能性が高いと思っています。)

⑥次の職場に賭ける意気込み

次の職場では、電気や組み込み系の技術者として製品開発・設計の経験とスキルを磨き上げたいと考えています。

電機業界は中国等の安価な製品を販売する企業に押されており、先行きが低迷していると評価されがちです。現在は、単純なモノづくりから、高い技術力によるモノづくりを基盤とした新しい方向性を模索しているメーカーが多いように感じています。つまり、今は生みの苦しみといえる段階にあるため、ここから電機業界が大きく復調していく可能性は高いと思っています。

この大きく変化していく業界に求められる人材として活躍していくべく、ソリューションの提案能力や発想力、社会の要求を見抜く力等を鍛えていき、生き残っていきたいと考えています。

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