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高専トピックス

女子高専生を中心としたチームが、SDGsの視点で日頃の学習や研究の成果を基に社会課題解決の技術開発を提案する、第2回高専GIRLS SDGs×Technology Contest(高専GCON2023)の本戦が、2024年1月21日に開催されました。この本戦で、最優秀賞に相当する文部科学大臣賞ならびにJFEスチール賞を受賞したのが、豊田高専と鳥羽商船高専の女子学生6名による合同チーム「かきっ娘(かきっこ)」です。
「かきっ娘」が行ったプレゼンテーションは、鳥羽市近辺の海産物として収穫後、食用部分を残して廃棄される牡蠣殻(かきがら)を加工し、サウナの壁材として使用するタイルに再利用するアイデアとその加工技術についてでした。受賞理由は、大量の廃棄物である牡蠣殻を活用し、CO2を出さない無焼成で加工する上に、粉砕後に練り込む過程でもCO2を吸収するという環境に優しい製法であること。それに加えて吸湿性や強度にも優れ、塩分を含むので塩サウナとの相性が良いなど、サウナ室用のタイルとしてとても優秀であるとの評でした。

「サ活」という言葉が広がるなどブームとなっているサウナ以外にも、様々な用途への期待が膨らむこの「無焼成牡蠣殻タイル」。このGCONに向けた「かきっ娘」プロジェクトの起点や、合同チームを結成した背景、発表までの逸話や受賞の感動などを、豊田高専から「かきっ娘」に参加したメンバーの内藤万結さんと佐藤舞乙さんにお聞きしました。
(掲載開始日:2024年6月27日)


廃棄される牡蠣殻を活用し、CO2を吸収するタイルを製作しました。

●「かきっ娘」豊田高専メンバー
・内藤 万結(ないとう まゆ)さん(環境都市工学科/4年)
・佐藤 舞乙(さとう まお)さん(環境都市工学科/4年)
・内藤 千晶(ないとう ちあき)さん(電気電子システム工学科/2年)

指導教員
・松本 嘉孝(まつもと よしたか)先生(環境都市工学科 教授)
・大畑 卓也(おおはた たくや)先生(環境都市工学科 准教授)

●「かきっ娘」鳥羽商船高専メンバー
・森﨑 蘭(もりさき らん)さん(情報機械システム工学科 卒業)
・山本 ミチル(やまもと みちる)さん(情報機械システム工学科 卒業)
・山浦 あかり(やまうら あかり)さん(情報機械システム工学科 卒業)

指導教員
・児玉 謙司(こだま けんじ)先生(情報機械システム工学科 准教授)

かきっ娘を結成しGCON2023を目指す


鳥羽商船高専の児玉先生から、豊田高専の松本先生(写真)に牡蠣殻の有効利用について声が掛かったのが、両高専合同チーム結成のきっかけとなりました。

内藤さん:牡蠣殻の新しい利用方法を一緒に考えないか……そんなアナウンスが松本先生からあったので、手を挙げたのが私と佐藤さんでした。2023年の春先のことです。松本先生がバレーボールのコーチつながりで、鳥羽商船高専の児玉先生に牡蠣殻の処理アイデアを持ちかけられたのがきっかけだったそうです。そして豊田高専から私と佐藤さん、鳥羽商船高専からは森崎さんたち3名が集い、GCON出場に向けて「かきっ娘」が生まれました。

佐藤さん:サウナルームに使うタイルに加工できないかというアイデアは、鳥羽商船高専から出ました。私たちも、世はサウナブームだし面白そうと感じて同意。次に、それぞれの役割分担が決まりました。鳥羽商船高専が鳥羽市の牡蠣殻加工業者や多治見市にあるタイル製造会社の協力を得て試作を行い、私たちが試作品の強度試験や吸水試験などを担当することになったのです。鳥羽商船高専は原材料の牡蠣殻が手に入りやすいですし、豊田高専には環境都市工学科と建築学科があり、コンクリートの試験に使うような設備が整っていたことが大きいですね。

内藤さん:同じ東海地方でも鳥羽とはかなりの距離がありますから、ミーティングはWebで行いました。最初の頃はスムーズに進まなかったのですが、夏頃には遠隔で協働していることを感じないようなレスポンスの良いコミュニケーションが取れるようになってきました。

学びの多かったプロジェクト


左から豊田高専の大畑先生、内藤万結さん、佐藤舞乙さん。
後ろにあるのは、今回のプロジェクトで操作方法を習熟した強度計測装置。

内藤さん:今回の「かきっ娘」プロジェクトは、自分たち学生だけではできなかったと感じています。松本先生や大畑先生の協力がなければ立ち往生していたはずです。例えば強度計算の方法は以前に授業で学んではいましたが、改めて指導してもらったことで、それ以降は先生に立ち会ってもらいつつも、ほとんど独力で進めることが出来ました。

佐藤さん:計測装置の使い方も同じですね。“やりたい” “やらなきゃ” というポジティブなマインドが、機械の操作の習熟につながったと思います。

内藤さん:私も自分で考えながら行うことに意義があることを実感できました。

佐藤さん:試作品がどんどん良くなって行ったことでもモチベーションは高まりました。屋内に用いるタイルの強度に関するJIS規格は108N(ニュートン)以上なのですが、その目標は早期にクリアしました。そして鳥羽のメンバーが水の配合を変え、その最適値を探っていく中で、私たちの行う試験結果の数値は次々に上昇し、最終的には180Nに到達したのです。その頃は鳥羽のメンバーから試作品が届くたびにワクワクしました。また、吸水性のテストに関しても優れた数値が出ました。サウナの内壁に標準的に使用される檜材よりも良好なデータが取れた時は嬉しかったです。これでGCON出られるぞ!って、安心しました。

驚きの文部大臣賞受賞


最も優秀な提案に送られる文部科学大臣賞の発表でチームの名前が呼ばれた時には、涙を流すメンバーもいました。
企業とともに製品化が実現すれば、かきっ娘の作ったタイルがサウナで利用される夢が広がります。

佐藤さん:実は、私はGCONの本戦の数日前に新型コロナウイルスに罹ってしまい、私が担当するはずだったプレゼンのパートを、急遽内藤さんの妹の千晶さんにお願いしました。

内藤さん:佐藤さんが本戦に出られなかったのは残念でしたが、妹は代役を上手くやり遂げたと思います。

佐藤さん:そして最優秀賞の文部科学大臣賞の受賞。私は自宅で高熱で頭がボーっとしている状況で、夢か幻かのような感覚で嬉しい報告を聞きました。

内藤さん:実は結果発表の冒頭に「かきっ娘」がJFE賞を受賞したのですが、それはそれで嬉しい反面、最優秀賞の文部科学大臣賞には選ばれなかったんだと少しガッカリしました。ところが、それは早合点で、文部科学大臣賞の発表で豊田高専と鳥羽商船高専の名前、それに「かきっ娘」のチーム名が呼ばれた時は飛び上がってメンバーと喜び合いました。

佐藤さん:文部科学大臣賞は、自信になりました。今は校内に実際に試験用のサウナをつくって、牡蠣殻タイルの品質改良や耐久性の向上を進めたいと考えています。

内藤さん:松本先生によれば、企業から製品化の引き合いが届き、調湿試験を始める計画があるそうです。スタートアップにつながると嬉しいですね。

※2023年度のGCONの様子は下記URLからご覧頂けます。
https://kosen-guide.jp/topics/gcon2023.html

お忙しい中、お答え頂きありがとうございました。

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。