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高専出身者の『転職体験記』

高専卒の航空機整備士、月半分の夜勤に限界を感じ、高専で学んだCADスキルを活かしてエンジニアリング会社へ

Information
    • 小堀 悠平 氏 / 26歳
    • 国立 函館工業高等専門学校 機械工学科(現 生産システム工学科 機械コース) 卒
      卒業研究:回転体における粘性の異なる液体の解析
      サッカー部 キャプテン
      玉掛け技能講習修了
      高所作業車技能講習修了
      A320型機 一等航空運航整備士

① 中学生の時点での高専進学理由。そして実際に高専で学んだこと

航空整備士の仕事がしたい! 万が一その夢が叶わなくとも、機械を学びたい! 機械関係の仕事に就きたい!
高専進学当時、心に抱いた気持ちを今でも鮮明に覚えております。

幼少期より航空業界への憧れがありました。
きっかけは祖母からプレゼントされた飛行機のおもちゃです。プレゼントされた幼少期の心境はあまり覚えておりませんが、相当嬉しい気持ちが溢れたのだと思います。
それ以来、飛行機好きな私の為に、両親が空港に連れて行ってくれる機会が増えました。大空に飛び立つ迫力満点の姿に魅了されていた私ですが、空港へ足を運ぶ内に転機が訪れます。

小学生のある日に開催されていた、空港の航空祭に参加した時のことです。
そこで目にした航空整備士の姿。その姿が純粋に格好良く見えたのです。
自分も飛行機の整備士の仕事がしたい! 小学生低学年の私の心は夢と希望で溢れました。
その当時の情熱が中学生になるまで冷めることなく、高専進学への進路選びに繋がりました。

私の中学卒業時、航空整備士になる為には工業高校から航空専門学校に進学後、航空会社へ入社するルートが主流でした。
高専から直接航空会社へ入社出来るルートは私が進学する当時はまだ確立されておりませんでした。また、航空整備士になる為の道のりが険しい道であることも把握しておりました。
その上、進路を具体的に決める中学一年生の当時はサッカーに熱中しており、高校進学後もサッカーを続けたいと考えておりました。

そして、ある選択を迫られます。
●サッカーの強豪校でもある工業高校へ進学し、サッカーを一生懸命取り組んだ上で高校卒業後に航空専門学校へ進学するか?
●航空業界へ入社出来る進路は保証されないが、専門性の高い工学を学ぶことが出来る高専へ進むか?
万が一、航空整備士への道が叶わなくとも工学の原理はどの仕事にも役立てることが出来る。であれば、高専に入学し、就職活動をする頃にチャンスがあれば挑戦しよう。
未来の自分が様々な選択肢を得られるように、後者を選択し、私は高専への進学を決めました。

いざ高専で学生生活が始まると、負けず嫌いでやりたいことをとことんやり込みたい私は、結局勉強はもちろんのことサッカーにものめり込み、文武両道を貫きました。
サッカー部における活動については、顧問の方はおられましたが指導者が不在でした。練習から試合全ての運営を部員自ら行っていた為、この高専での部活動において自主性が培われたと思います。

航空機が何故空を飛ぶことが可能なのか?という疑問から、専門科目の中でも流体力学に関しては特に力を入れて学びました。
卒業研究課題の際には、粘性が異なる液体の動きをプログラムにより再現し、メカニズムの原理に迫る研究を行いました。
流体力学への興味のお陰もあり、入社後の航空機原理の理解向上に繋がりました。

② 就活時に持っていた志向

私が高専4年生の春。夏に予定されるインターンシップの情報が進路情報室に掲載され始めます。
そこで前職の航空整備士のインターンシップの応募案内を目にします。またとないチャンスであると感じ、応募しました。

実際に参加してみると、整備の仕事の中でも業務に応じて部門分けされていることがわかりました。
運航便の対応を担うライン整備、格納庫内で整備を行うドック整備、エンジンを専門に取り扱うエンジン整備、航空機に装備する部品を整備する部門。
その中でも、ライン整備に魅力を感じました。
出発時刻が迫る中で整備対応する先輩方を目の当たりにし、私も携わりたいと思いました。
自分自身が点検・整備した飛行機をお客様へ提供し、空の安全を守る仕事がしたいと思いました。

③ 入社した会社・部門にて体得したスキル

体得したスキルは判断力、タイムマネージメント力です。
常に時間との戦いでした。 1日にいくつもの便が国内、そして海外へ飛び立ちます。そして、不具合はいつ、どのように起きるか予測しにくい物です。
不具合を修復させ、無事に飛行機を出発させた時の達成感は素晴らしいものがありますが、そこには欠かせないことがあります。 安全性を第一に定時で出発させることです。
後述しますが、日々の積み重ねにより、判断力とタイムマネージメント力を身に付けることが出来ました。

発生した不具合は時間内で修復可能であるか。 出発が遅れようとも安全を第一に判断する決断力が求められます。
出発までの時間から逆算し、必要な手順書、部品や人員を確保した上で業務を遂行する必要があります。
入社当初は適応していく段階で苦労しました。 そもそも対処法がわからず、同僚から助けを借りる日々が続きました。
業務終了後、同僚からのアドバイスや自身の振り返りを基に、過去の事例や技術文書を読み漁り、少しずつ不具合修復スキルを向上させていきました。
その日の出来事をメモに残し、発生した不具合のみならず、発生した状況、作業環境、天候、作業に関係する要素をメモに残し、同じようなケースが発生した場合の準備を日々積み重ねました。
日々の積み重ねにより、あらゆる不具合が発生しても動じずに、運航可否の判断を自信を持って行うことが出来るようになりました。
修復可能か、使用する飛行機を変更させるか。 定時での出発という点でお客様へご迷惑をお掛けする状況においても、安全を第一に考え使用する飛行機を変更するべきか。
適切な判断には、日々の積み重ねが欠かせないことを日々痛感致しました。

資格としては、国家資格である一等航空運航整備士の取得をしました。
業務を遂行する上でこの国家資格が必要不可欠な為、同僚と共に切磋琢磨し合いました。
航空機の国家資格を取得するにあたり、航空機の複雑なシステムを理解し、国土交通大臣の任命を受けた審査員方との口頭試験で正確に答える必要があります。

また、2年間の期限内に複数の試験を受け合格しなければなりません。
その為休日はもちろんの事、業務の合間には同僚と共に航空機の原理を始めシステムについて議論し合い、理解の向上に繋がる資料を共有し合いました。
個人としては、航空機の概要について理解を深めるべく、記述されている資料を暗記するだけではなく図面を頭に叩き込み、口頭試験において言葉を思い出せなくともその図面から答えを導き出せるように工夫を凝らし、日々努力して参りました。
結果、同僚と共に合格を勝ち取ることが出来ました。

④ 今回転職するに至った背景

前職はシフト勤務であり、夜勤が月の半分を占める勤務です。
年次を重ねるにつれ、夜勤に身体を適応させるのが難しくなっていきました。
将来を見据えた際に今後も夜勤を続けるのは厳しいと判断し、まずそれが転職を考えるきっかけとなりました。
そしてこれまでの人生を振り返り、学生時代に培ったCADスキルを活かせる仕事をしたいと考え、転職活動を始めました。

⑤ 高専卒業時の就活の際に比べ、新たにこだわった軸

新たにこだわりを持った価値観は、時代や年齢に合わせた働き方を考えることも大切であるということです。
前職の仕事は楽しくやりがいがありました。どんな不具合がいつ起きるかわからないという、毎日移り変わる環境の中で仕事をすることはワクワクします。
それでも転職を考えた理由は、譲れない価値観である、夜しっかり眠ることの大切さを痛感したことです。私にはこれが欠かせないと思いました。身体は正直です。身体の悲鳴をしっかり汲み取ろうと思いました。

⑥ 転職活動を通じて気づいた点や反省点

世の中には様々な価値観を持つ、魅力溢れる企業、職種があることを知りました。
学生時代にもっと視野を広げて様々な企業にも目を向ければ良かったと今では思っております。
とは言いつつも、たらればの話になってしまいますが、高専時代の就職活動においては様々な企業の求人に目を通していたとしても私は航空整備士の仕事をしたいと思っていたことでしょう。
何故ならば、純粋にやりたいことであったからです。熱中しておりました。当時の私の挑戦であったと思います。

反省点は、立ち止まる勇気を持つことです。そして決断する勇気を持つことです。
あともう少し頑張れるかも…と思っても、それで身体を壊してしまっては遅いのです。自分の心と身体の声に耳を傾けてあげることも大切であると感じました。

⑦ エリートネットワークを利用した感想

あくまで個人の感想ですが、私はエリートネットワークさんの各業界、企業のリサーチ力は凄まじい物であると感じました。
求人内容のみならず、各業界の背景、働き方、今後の将来性含めてお話を伺うことが出来ました。 それと同時に自分が社会についていかに無知であるかを思い知りました。

転職活動自体は、どのように活動をしたらいいか全くわからないところからのスタートでした。
初回の面談から、どの業界でどのような仕事がしたいのかという話に親身に耳を傾け、私の心の声を引き出して頂きました。
多くの企業と面接をさせて頂きましたが、その都度振り返りの時間を設けて頂き、アピールポイントや話し方についてもフォローを頂きました。

⑧ 次の職場に賭ける意気込み

これからも素直な気持ちでいること、謙虚さを忘れないこと、これに尽きると思います。
生活環境、仕事の仕方も180度変わることでしょう。その環境下においても、いかに素直に耳を傾け業務を全うすることが出来るか。
学生時代に学んだCADのスキル、前職で得たタイムマネージメント力、活かすも殺すも私次第です。
プライドを捨て、愚直に仕事に向き合いたいと存じます。

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