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高専トピックス

はじめに


木更津高専「図書・ネットワークセンター棟」でセキュコンは開催された。

KOSENセキュリティコンテスト2024は、全国の国立・公立・私立高等専門学校(以下、高専)58校63キャンパスの学生を対象に開催される、情報セキュリティ技術を競う大会です。本コンテストは、サイバーセキュリティ分野の人材育成を目的としており、学生たちが実践的な課題に挑むことで、専門的な知識や技術を磨くことを目指しています。また、全国の高専生同士が交流し、切磋琢磨する機会を提供することで、未来のセキュリティコミュニティの形成にも貢献しています。

今大会では、前回と同様に、木更津高専を会場とした現地リアル参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド形式で開催されました。全国から38チーム(うち現地参加8チーム)130名が参加し、情報セキュリティ技術の腕を競い合いました。

ここでは、2024年12月7日(土)に開催されたコンテストの様子をお伝えします。

(掲載開始日:2024年12月20日)

K-SEC について

国立高等専門学校機構は、サイバーセキュリティ分野における技術者不足に対応するため、2016年度にK-SEC(KOSEN Security Educational Community)という教育事業を立ち上げました。この取り組みは、サイバーセキュリティ人材の育成を目的としています。

2020年度には、「高専発!Society 5.0型未来技術人財育成事業」(※)が始動し、その中で「COMPASS 5.0」というプロジェクトが発足しました。COMPASS 5.0は、この事業を構成する2大プロジェクトの1つです。COMPASS 5.0は、AI・数理データサイエンス、サイバーセキュリティ、ロボット、IoT、半導体、蓄電池、再生可能エネルギーなどの次世代基盤技術に関する教育体制を強化することを目指しています。

この大きな枠組みの中で、K-SECはサイバーセキュリティ分野における中心的な役割を担っています。K-SECの活動の一環として、KOSENセキュリティコンテストを毎年、開催しています。このコンテストは、高専生のサイバーセキュリティスキルを向上させ、この分野の人材育成を促進する重要な機会となっています。

そして、2023年度には、新たに「KOSENサイバーセキュリティ教育推進センター(K-SEC:KOSEN Security Educational Center)」として再発足しました。この新体制では、木更津工業高等専門学校と高知工業高等専門学校が運営校となり、高度化されたサイバーセキュリティ教育を推進することが決定されました。これにより、K-SECは従来の役割をさらに強化し、社会に求められる人材の育成に貢献することが期待されています。

※高専発!Society 5.0型未来技術人財育成事業:GEAR 5.0、COMPASS 5.0の2大プロジェクトで構成されており、それぞれ以下のような目的を持っています。
・GEAR 5.0:未来技術の社会実装教育の高度化
・COMPASS 5.0:次世代基盤技術教育のカリキュラム化

競技内容


セキュコン会場の様子。参加者たちが各自のPCで課題に取り組み、真剣に挑戦する様子は、強く印象に残った。

この競技は「Jeopardy形式のCTF(Capture The Flag)」で行われました。「Jeopardy形式」とは、サイバーセキュリティ分野に準じた問題(例:Webアプリの脆弱性、暗号技術、ファイル解析等)が用意され、参加者が好きな問題を選んで解答する方法です。正解に応じてポイント(点数)が与えられ、その合計点で競い合います。この形式の名前は、アメリカの有名なTVのクイズ番組「Jeopardy!」に由来しています。

CTFには「Jeopardy形式」以外にもさまざまな形式があり、それぞれに独自の特徴があります。例えば、チーム同士で攻撃と防御を繰り広げる「Attack-Defense形式」、サーバーに侵入して最終的なゴールを目指す「Boot2Root形式」、リアルタイムで拠点を守り合う「King of the Hill形式」などです。これらの形式は、競技の目的や内容に応じて使い分けられ、サイバーセキュリティ分野の学びを深める良い機会となっています。

今回の競技時間は、9時20分から16時までの6時間40分に設定されました。一見すると長いように感じられますが、参加者にとっては非常に短い時間です。この限られた時間で多くの問題を解くためには、以下のスキルが求められます。

問題を整理し、解読する力
必要な情報をインターネット・参考資料から速やかに得る力
効率よく正解にたどり着く力


各チームのスコアが段階的に反映され、競技が進むごとに順位やポイントの変動が視覚的に確認することができた。

これらのスキルは、実際のセキュリティの現場でも非常に重要とされています。そのため、この競技では単に問題を解くだけでなく、情報を集め、整理し、分析する一連のプロセスを通じて、参加者の総合的なセキュリティ能力が試されました。

今回の競技では、見事優勝を果たしたのは「木更津高専・チーム:m01nm01n」で、合計4550点を獲得しました。続いて2位には「東京高専・チーム:TerrAstro」が4050点、3位には「高知高専・チーム:コマブロ同好会」が2950点を獲得しました。さらに、4位は「奈良高専・チーム:KoriyamaEasterns」、5位は「仙台高専・チーム:知育菓子愛好会ver.2」でした。それぞれのチームが限られた時間の中で全力を尽くし、セキュリティ技術を駆使して競い合った熱い戦いとなりました。

おわりに

高専生たちは、一定の時間内という制約の中で日頃の学びを存分に活かし、協調性と創造性を発揮して難題に立ち向かいました。特筆すべきは、実際のサイバー攻撃で用いられる技術知識を要する問題にも果敢に挑戦し、アプリケーションの脆弱性を迅速に見抜き、的確な対応力を示したことです。これは、彼らが高いポテンシャルを秘めていることの証左と言えるでしょう。

近年、AI技術の普及により生活の利便性が向上する一方で、その技術を悪用した事案が世界中で増加しています。サイバー攻撃も例外ではなく、日々巧妙化・複雑化しており、企業や政府機関でもセキュリティ人材の不足が深刻な課題となっています。

15歳という早い段階から、最新のITハードウェアやソフトウェアに触れ、高度なサイバーセキュリティの専門教育を受けられる環境にある高専生たちは、次世代のサイバーセキュリティのスペシャリストとして、活躍が大いに期待されます。彼らこそが、日本のデジタル社会の安全を担う、頼もしい人材なのです。

今回の大会は、高専生たちの潜在能力と将来性を如実に示す、極めて意義深い大会となりました。高専生たちの今後の飛躍に、我々は引き続き、熱い視線を注ぎ続けるべきでしょう。

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。