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高専トピックス

アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)は、全国の高専生がロボット製作から競技を通じてアイデア対決をするコンテストです。毎年変わる競技テーマに対し、各高専が独自のロボットを製作します。
1988年から毎年開催され、今年で33回目の開催となります。全国の国立・公立・私立の高専53校58キャンパス、計146チームが参加し、予選を勝ち上がった28チームが全国大会に出場しました。

今年は新型コロナウイルスの流行に伴い、大会初のオンライン開催となりました。観戦にはクラスター(株)が提供するバーチャルイベントサービス「cluster」の技術を用いたバーチャル観戦会場『バーチャル国技館』も設けられ、オンラインながらも大きな盛り上がりを見せました。今回は、表彰された6チームを中心に、独自の発想と高い技術力で競い合った彼らの活躍をお伝えします。
(掲載開始日:2020年12月15日)

テーマ・ルール

テーマは、「はぴ☆ロボ自慢 『だれかをハッピーにするロボットを作ってキラリ輝くパフォーマンスを自慢しちゃおうコンテスト』 」と題した、暮らしを豊かに、人々を幸せにするというものです。
ロボットの完成度やパフォーマンスだけでなく、テーマ設定やアイデアも評価基準に加え、例年以上に「アイデア対決」の要素を色濃くしたものとなりました。

制限時間は、予選ラウンドは2分、決勝ラウンドは3分です。
審査においては、4人の審査員とOB審査員(1人分)の方々がアイデア及び技術力を10点満点ずつ、合計50点満点で採点します。決勝ラウンドでは、予選ラウンドとの合計100点満点で評価を行います。決勝ラウンドへは、予選ラウンドで獲得した得点の高かった6チームが進出します。

誰もが想像し得なかったようなロボットを発想・製作し、唯一無二のアイデアを実現したチームには、最も名誉ある賞「ロボコン大賞」が贈られます。また、最も得点の高かったチームには「超優秀賞」、2番目に高かったチームには、「超はぴ☆ロボ賞」が贈られます。その他、アイデア賞、技術賞、デザイン賞、アイデア倒れ賞、企業賞等も用意されています。

ロボコン大賞 & 超はぴ☆ロボ賞:国立 沼津工業高等専門学校  [静岡県]


沼津高専の『チャリモ』。機体に付いた円盤を回転させることで、ジャイロ効果(※)により自転車のように直立走行を実現した。
※コマが立つように、物体が自転運動をすると(自転が高速であればあるほど)姿勢が乱れにくくなる現象

ロボットの名称:チャリモ

最も名誉ある賞のロボコン大賞、そして大会の準優勝に相当する超はぴ☆ロボ賞をダブル受賞したのは沼津高専です。18年ぶりの地区大会最優秀賞を経て、14年ぶりの全国大会へとコマを進めての快挙でした。

沼津高専が披露したロボット『チャリモ』は室内にいながら遠隔操作でサイクリングを楽しめるロボットです。室内に設置した自転車をコントローラーとして、カメラを装着したロボットからの映像を見ながら、まるでサイクリングをしているような気分で外の景色を楽しむことが出来ます。
また、このロボットの特徴は2輪での直立走行が可能である点です。これにより、本物の自転車に乗っているかのような、独特の揺れまで体感出来る映像を撮影可能です。
コロナ禍によって外出したくても出来ない状況の中、外出の新しい楽しみ方を提案したアイデアに高い評価が寄せられました。

超優秀賞:国立 小山工業高等専門学校  [栃木県]


小山高専の『シンクロシスターズ♪』。顔部分と脚部分がそれぞれ3台ずつ、計6台で構成されている。ユニークな発想で開発されたロボットと、それらが見せる滑らかな動きには、観戦する人々から驚きの声が上がっていた。

ロボットの名称:シンクロシスターズ♪

審査における評価点数の最も高かったチームへ贈られる超優秀賞には、小山高専が選ばれました。

小山高専が製作したのは、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)をテーマとした6台のロボットです。床を水面に見立てて、ロボットが移動することで演技を行います。
各ロボットは同期を取りながら、まるで人間のようなしなやかな関節の動きや表情の変化、また水が波打っていることを感じさせるような動きを再現しており、技術力の高さが窺えます。加えて審査員の方々からは、テーマの選び方とそれを踏まえたロボット構成へのユニークな発想力に高い評価が集まり、満点をつける方もいる程でした。

アイデア賞:国立 大分工業高等専門学校  [大分県]


バラバルーンを行う大分高専の『チアロボ』。昨年の大会でテーマになった洗濯物干し同様、扱いの難しい布を、4台のロボットがうまく同期を取りながらタイミングよく上下に動かす様子からは、可愛らしさだけでなく技術力の高さも垣間見えた。

ロボットの名称:チアロボ

他に類を見ない、独創的なアイデアを実現させた作品に贈られるアイデア賞には、大分高専の『チアロボ』が選ばれました。

『チアロボ』は、チアリーダー風の可愛らしいデザインが施された4台のロボットが、同期を取りながら踊ったりバラバルーン(※)を披露したりと、目に楽しい、華やかな作品です。
また、4台のロボットとは別に、カメラを持ったロボットが周囲を走行しており、このカメラから演技中のロボットと同じ視点での映像を見ることが出来る点が特徴的でした。こうした、大会側ではなく自分たちで映したい部分を決められる、リモート大会ならではの表現をうまく活用したアイデアも高く評価されていました。

※布のふちを集団で持ち、音楽にあわせてタイミングよく上下させたり回転させたりする演目のこと。

技術賞:国立 熊本工業高等専門学校 八代キャンパス  [熊本県]


熊本高専(八代キャンパス)が開発した洗濯物畳みロボット、『foldmachine(フォルド マシン)』。複数の洗濯物をすべてほぼ均一に畳むことが可能で、各機構の動きの正確性と、それを実現する技術力の高さには目を見張るものがあった。

ロボットの名称:foldmachine(フォルド マシン)

技術的な完成度が高かったチームに贈られる賞である技術賞に選ばれたのは、昨年に引き続き、熊本高専(八代キャンパス)です。2019年の競技課題であった洗濯物干しロボットの研究を発展させ、自動で洗濯物を畳むことの出来るロボット『foldmachine(フォルド マシン)』を製作しました。

『foldmachine』は、Tシャツをハンガーにかけたままセットし、スイッチをワンプッシュするだけで、1枚当たり約20秒でTシャツを畳むことが出来ます。ハンガーにかかった衣服を掴む機構は合計8個のサーボモータ、上下機構は定荷重ばね、上下左右機構は角度センサー等によって制御され、正確な動作を可能にしています。また、洗濯物を畳むというメイン機能だけでなく、花粉やほこりを落とす機構や、ジョイントパーツによりセット出来る衣服の枚数を増やせるといった追加機能も備えています。

審査員の方々からは、技術力だけではなく、通販番組のような構成で楽しませたプレゼン力も高く評価され、ぜひ買いたいとのコメントもありました。

デザイン賞:国立 福島工業高等専門学校  [福島県]


福島高専が製作した、ハンドベル演奏ロボットの『鈴音(スズネ)』。柄に磁石を装着させたハンドベルの下を、電磁石を装着したロボットがタイミング良く走行し、磁石同士の反発力を用いてハンドベルを鳴らす仕組みとなっている。

ロボットの名称:鈴音(スズネ)

福島高専のメンバーは、他校のようにロボコン部に所属してはおらず、また人数も2名と少ない構成です。しかし、今年の「みんなをハッピーにさせるロボット」というテーマへの共感から参戦を決め、見事デザイン賞を受賞しました。

今回福島高専が製作したのが、ハンドベル演奏を披露するロボット『鈴音(スズネ)』です。演奏はもちろん、見た目の美しさ、また優しさと芸術性を感じさせる全体的なデザインに評価が集まりました。

演奏の美しさのみならず、暗がりの中に明かりが点くように、ライトが装備されたロボットが走ることによって幻想的な雰囲気を演出していました。また、ロボットの走行にはラインを自動で追従するライントレーサーの技術を用いていましたが、ラインには蛍光物質を用いることで、雰囲気を更に高める工夫がなされていました。

アイデア倒れ賞:国立 長野工業高等専門学校B  [長野県]


長野高専(Bチーム)が製作した『acroboX(アクロボックス)』。サーカスをイメージしたハイクオリティな装飾の効果もあり、本物のサーカスを観ていると錯覚するようなパフォーマンスを見せた。

ロボットの名称:acroboX(アクロボックス)

アイデア倒れ賞は、夢とロマンを持ってロボットを製作し、その真価を十分には発揮出来なかったものの、見る者に深い感動を与えたチームに贈られる賞です。この賞に今回選ばれたのは、地方大会から協議委員会による推薦枠で全国大会へと進んだ長野高専(Bチーム)でした。

長野高専が製作した『acroboX(アクロボックス)』は、ぶら下がった棒の周りをアクロバティックに回転する鉄棒ロボットと、華麗に揺れるブランコロボットの2台で構成されます。これらのロボットは、ジャイロセンサーを使用した自動制御ロボットであり、最大の見所は、2台のロボットが宙で合体する、空中ブランコのようなパフォーマンスです。
全国大会の場では、残念ながら合体を披露することは出来ませんでしたが、審査員の方々からは、サーカスを模したこだわりある演出や装飾も含め、全チームの中で最もドキドキさせられたとのコメントも得て、今回の受賞となりました。

おわりに

今大会は、コロナ禍の影響により初のオンライン開催となりました。
学生たちも直接会って作業することが困難で、リモートでの開発作業が中心となったチームも多々ありました。
しかし、この限定的な状況下であっても、さながら国技館で観戦しているかのような迫力を伝えつつ、「だれかをハッピーにするロボット」というテーマに基づいた、人々を楽しませたり、便利にしたりすることで、生活や心を豊かに、ハッピーにするようなロボットばかりが集まっていました。

通常とは違う様式の中であっても、例年と遜色ない実りある大会が実現したのは、やはり高専生たちが持つ高い技術力や変化への対応力による賜物なのだと思わされるばかりの大会でした。

※全国大会での高専生の活躍は2020年12月26日(土) 15時05分~15時59分にNHK総合にてTV放映されます。
また、ライブ配信のアーカイブがYouTubeにて公開されています。
https://www.youtube.com/c/ROBOCON-Official

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。