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高専トピックス

はじめに


課題部門19チーム、自由部門20チーム、そして競技部門49チーム、総勢約400名の高専生が参集した

全国高等専門学校プログラミングコンテスト(以下、高専プロコン)は、全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスの高専生たちが、プログラミング技術や情報通信技術におけるアイデアと実現力を競い合うコンテストです。
1990年から開催され、今大会は第30回目となります。
社会実装を前提とした実践的な教育を行う高専には、IoTやAIといった新たな技術が普及する超スマート社会への変化に対応した人材を輩出することが期待されています。高専プロコンはこうした社会からの期待に応えるために知識や技術力を高める重要な機会となっています。その実績は高く評価されており、業界を牽引するメガベンチャーから名門製造業まで、50社超の企業から協賛を得るなど、産業界からも注目を集めています。
今回は、2019年10月13日(日)と14日(月)に、宮崎県都城市で開催された本選の結果をお伝えします。
(掲載開始日:2019年11月15日)

課題部門

課題部門では与えられたテーマに対してコンピュータソフトウェアの企画から実装までを行い、プレゼンテーションとデモンストレーションで作品が評価されます。

今年のテーマは「ICT を活用した地域活性化」です。高専生は、日頃から「KOSEN4.0イニシアティブ(※)」の取り組みなどを通じ地域社会の課題に応える活動を行っています。今大会でも、観光案内や商店街の活性化といったものから、事故や犯罪の予防、障がいのある方への活動支援まで、様々な角度から地域貢献にアプローチした作品が集まりました。

※KOSEN4.0イニシアティブ:「新産業を牽引する人材育成」、「地域への貢献」、「国際化の加速・推進」の3つの方向性を軸に、各国立高専の強み・特色を伸長することを目的として国立高専機構が実施しているカリキュラムの改訂や組織改編の取り組み。


課題部門 最優秀賞 東京工業高等専門学校『:::doc -自動点字相互翻訳システム-』のプレゼンテーションの様子

最優秀賞 東京工業高等専門学校 『:::doc -自動点字相互翻訳システム-』

東京高専は墨字(※)・点字の相互翻訳システム『:::doc(てんどっく) -自動点字相互翻訳システム-』を製作しました。

海外を含め、これまでも点字印刷機はいくつか存在しましたが、どれも介助者による入力が必要でした。これに対し、同システムは視覚障がいのある方が介助なしでの文章読解を可能とします。

同システムは、独自の点字翻訳システムとGoogle社の文字認識技術、文章読み上げ技術、そして点字プリンタを組み合わせたもので、墨字から点字への翻訳精度は約95%と非常に高くなっています。
点字の翻訳は、業者へ依頼すると完成まで通常1~2週間程度の時間がかかりますが、同システムを使用すれば翻訳から印刷まで1~2分程度と、手間や時間が大きく短縮されます。

同校は長年に亘り、地域社会と視覚障がいのある方とのコミュニケーション支援を行ってきた実績を持ちます。この実績をもとに実施された試用実験は、大手新聞社に取り上げられており、有用性が社会的に認知され始めています。
今後は実用化に向けて、チラシなどに描かれている画像の凹凸表現に対応していくとのことです。

これら社会貢献性の高さと、これまでにない新たなシステムを創り出した点が大いに評価され、最優秀賞に選ばれました。

※墨字:点字ではない、手書き文字や印刷された文字。


課題部門 優秀賞 鳥羽商船高等専門学校『とばまっぷ -現在・過去・未来のまちの姿を地図上に可視化-』のポスター発表の様子

優秀賞  鳥羽商船高等専門学校 『とばまっぷ -現在・過去・未来のまちの姿を地図上に可視化-』

鳥羽商船高専は、地域住民分布をもとにした、住宅・公共施設のシミュレーションシステムを製作しました。

同システムは同校が位置する三重県鳥羽市長から、直々に依頼を受けて製作が開始されました。鳥羽市の保有する住民基本台帳などの情報や施設情報を活用し、移住者の居住地域や公共施設の移転場所などの検討サポートを目的としています。

システム上では住居や住民の年齢層・性別といった情報がマッピングにより可視化されます。年齢や世帯構成などの様々なフィルタ機能を用いることで、住民分布をわかりやすく確認することができます。
また、津波の予測データと連携することで、避難経路・施設などの災害シミュレーションも可能です。「既存の施設だけでは避難者の対応が困難」と予測される場合には、避難所となる公共施設の増設などの施策に役立てられます。

同システムは開発にあたり、隔週で市役所の職員と会議が行われるほど地域社会における重要なプロジェクトとして期待されています。今後、住民にも一部の閲覧を解放することを想定し、個人情報を取り扱うためのセキュリティ面についての試行錯誤を重ねています。
開発過程から地域との連携がなされている点や、システムの完成度が高く評価されての受賞となりました。

自由部門

自由部門は高専生が自由な発想で企画から実装まで行った独創的なコンピュータソフトウェアについて、プレゼンテーションとデモンストレーションで作品が評価されます。身近な遊びを通じた知育ゲームから社会課題の解決まで、既存の枠にとらわれない発想で考案された様々な作品が集まりました。


自由部門 最優秀賞 東京工業高等専門学校『Gulliver Blocks -VRで新しい創造体験を-』のデモンストレーション

最優秀賞 東京工業高等専門学校 『Gulliver Blocks -VRで新しい創造体験を-』

東京高専はブロック遊びとVR技術を組み合わせた知育システムを製作しました。

ブロック遊びをする中で、複数の作品をつくるにはブロック数に限りがあるため限界があります。つまり、創造力に制限がかかってしまいます。
同システムでは、ブロック作品を認識し、仮想空間上に同型の3Dモデルを生成することができます。この3Dモデルは仮想空間上で制限なく並べていくことができるので、ブロックの上限数を気にせず、ひとつの作品に思う存分使用できます。

仮想空間上には特別な演出が仕掛けられており、用意されているブロックのパターンを認識させることで車が走行したり、動物が現れたりするなど、よりよい作品世界の創造をサポートしています。
仮想空間はVR機能でゲームのように歩き回ることもでき、3Dモデルの内部構造も楽しむことができます。

近年、エンターテイメントから医療といった様々な分野で注目されているVR技術。その先端的な技術へのチャレンジが評価されての受賞となりました。


自由部門 優秀賞 阿南工業高等専門学校『あ!水ダス(AMIZDAS) -水災害を自ら防ぐ水位監視システム-』の水位監視装置

優秀賞  阿南工業高等専門学校 『あ!水ダス(AMIZDAS) -水災害を自ら防ぐ水位監視システム-』

今大会は、大会直前に発生した台風19号の影響により開催が危ぶまれましたが、近年の日本では台風やゲリラ豪雨による洪水、地震に伴う津波など、水災害への地域対策が課題となっています。
阿南高専はこの課題に対して、水位監視を低コストで容易に実現するシステムを製作しました。

同システムに使用される装置は、超音波センサと太陽光パネル、そして制御部で構成されています。計測データは公開Webページ上で閲覧できる他、平常時と比較して一定の水位を超えた際はアラートをメールで知らせます。

装置は水災害が予測される溜め池や河川、水田に設置します。装置の電源は太陽光パネルと充電池を用いているため外部電源は不要で、大きさは10cm程度の立方と、非常にコンパクトにまとめられています。また、装置から設置位置とセンサによる計測データが自動でクラウド上にアップロードされ、他に設置された機器からのデータを含め水位マップが可視化されます。装置の設置からデータの確認まで30分程度で済む簡便さを実現しました。

加えてこの装置は国土交通省が扱っている水位計(25万円~100万円程度)と比較して、非常に安価(1万5千円程度)ながら、同様の機能を搭載しているため、小規模な自治体や地域団体でも導入しやすいこともポイントです。
地域が水災害に備え易くする有効な取り組みとして、設置コストやデータ閲覧へのハードルを下げることが評価され受賞となりました。

競技部門


緊迫感漂う競技部門の決勝戦(東京高専 対 八戸高専)
20 x 20に区切られたマス目を取り合い得点を競う

競技部門では、事前に出題されたプログラミング問題に対し、その解答スピードや得点を競い合います。

今年の競技は最大20マス x 20マスに区切られたフィールド上でいかに陣地を占有できるか競い合う陣取り合戦です。
各チームの駒をフィールド上に配置し、10秒程度のターン制でそれぞれのチームが駒を動かします。1ゲームは30~60ターンあり、その数は試合毎に変わります。
全てのマスには個別に-16~16の数値が振られており、駒を動かすことで得点となります。得点の合計により勝敗を競います。

各チームで作戦を練った上で駒を動かすアルゴリズムを構築します。近くのマスを取り続けるチーム、より高い得点を取り続けるチーム、対戦相手のマスを取り続けるチームなど、各チーム毎に様々な作戦が披露されました。

今大会に参加した49チームの中で優勝したのは東京高専でした。最終戦では532点対279点と、対戦相手の八戸高専に200点以上の大差をつけて優勝を勝ち取りました。
1マスずつの地道な獲得により着実に優勢を狙っていく作戦と並行して、相手のマスを奪うことで大量得点の阻害や高得点マスの獲得を目指す両面の作戦が功を奏し、終始優位に試合を進めていきました。

昨年も同様の形式で競技部門が開催されましたが、東京高専は操作ミスにより惜しくも優勝を逃していました。今年はアルゴリズムを改良しての再挑戦で、見事リベンジを果たしました。

おわりに

第30回大会は東京高専が全部門の最優秀賞(競技部門は優勝)を独占する結果となりましたが、すべての作品においても、各高専の高い技術力が発揮されていました。
また、課題部門の上位6チームと競技部門の上位6チームは2020年3月にベトナムのハノイで開催されるNAPROCK国際プログラミングコンテスト(※)への参加権を獲得するなど、同大会は世界水準の技術者の選出にも寄与しています。

課題・自由部門での各プレゼンテーションに対する質疑応答の中には、コスト面を含めた実現可能性についての質問も数多く挙がっていました。
社会実装を前提とした教育が行われる高専では、期間内に課題を解決するスキルを身に付ける機会としてコンテストへの参加が推奨されています。高専プロコンは実践的なスキルに加え、厳しい審査への柔軟な対応力、IoTやAIといった新たな技術へチャレンジする取り組み姿勢が身に付く機会でもあります。
理論に留まらず社会実装までを担う技術力を身に付けた人材を育成するにあたり、大会は非常に重要な役割を果たしていることが伝わりました。

※NAPROCK国際プログラミングコンテスト:NAPROCKは、Nourishment Assosiation for Programming Contest KOSENの略称。高専プロコン交流育成協会が主催する、海外大学チームや大学に進学した高専OBチームも参加する国際プログラミング大会。

全国高等専門学校プログラミングコンテスト:公式サイト