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高専トピックス

はじめに


記念式典・記念シンポジウムが行われた東京都千代田区の学術総合センター前。

高等専門学校制度創設60周年を記念し、2022年11月16日(木)に東京都千代田区の学術総合センター内の一橋講堂にて、記念式典・記念シンポジウム、17日(金)に東京都千代田区の如水会館にて、国際学長フォーラムが開催されました。
現在、IoTやAIといった技術が普及し、感染症の影響で遠隔情報通信技術のニーズも高まり、情報技術を中心とした科学技術の重要性がますます高まる中、高い技術力・実践力のある高専生の活躍に期待が集まっています。
社会への技術実装を前提とした、実践的な教育を行っている高専では、体系的な工学専門教育だけでなく、高度な知識・技術によりイノベーションを起こす人材を輩出するべく、STEAM教育、アントレプレナーシップ教育等、様々な教育カリキュラムの導入に取り組んでいます。
以上の事例を踏まえて高等専門学校制度創設60周年記念式典等を紹介します。
(掲載開始日:2022年12月22日)

記念式典


最優秀賞に輝いた高専60周年記念事業ロゴマーク。未来を切り開く高専生の「勢い、真っ直ぐさ、大胆さ」を表現している。

記念式典では、厳粛な雰囲気の中、国立高等専門学校機構 谷口 功 理事長による式辞、永岡 桂子 文部科学大臣や海外高専、企業を代表してご出席された来賓の方々からのご祝辞、60周年記念事業のキャッチフレーズ及びロゴマークの最優秀賞作品の表彰、祝電披露、長年高専教育に尽力なさった方々への感謝状贈呈などが行われました。

60周年記念事業 キャッチフレーズ 最優秀賞
「たゆまぬ挑戦,飛躍の高専!」
奈良工業高等専門学校 電子制御工学科
5年 中村 幹太さん

60周年記念事業 ロゴマーク 最優秀賞
明石工業高等専門学校 電気情報工学科
5年 今吉 友希さん

※令和3年度受賞当時の情報です。

記念シンポジウム


益 一哉 氏による講演の様子。過去30年を振り替えつつ、今後30年の展望について熱く語られた。

基調講演
講演者:益 一哉 氏 (東京工業大学 学長、神戸市立高専 卒業生)
演題「30年後を考えてみよう」


益学長の講演は、「30年後を考えてみよう」という演題でした。我が国の90年代から現在に至る30年間を振り返り、世界のIT化の波について行けず経済停滞した反省を活かして、再び世界をリードするための考えや道筋を述べられました。
我が国のジェンダーバランスの是正、複雑化しつつある世の中に対応するための理工学の再定義、世界の半導体市場を再び席巻するための具体策について言及なさいました。
最後は、30年後に高専発の世界を代表する企業が生まれるために、 "たゆまぬ挑戦" を続けて欲しいという、メッセ―ジで締めくくられました。


高専のアントレプレナーシップ教育と起業について、ユーモアも交え、熱い議論が行われた。

トークセッション
登壇者
日本ディープラーニング協会 理事長:松尾 豊 氏
神山まるごと高専 クリエイティブディレクター:山川 咲 氏
フラー株式会社 代表取締役会長:渋谷 修太 氏
日本ディープラーニング協会 理事:岡田 隆太朗 氏 (ファシリテーター担当)


トークセッションのテーマは「高専のアントレプレナーシップ教育と企業」でした。
イノベーションを創出し、Society5.0時代に必要な人材を輩出していくために高専機構のプロジェクトとして、アントレプレナーシップ教育が実施されつつあります。
これからの高専教育の中でどのようなアントレプレナーシップ教育を実施すればより効果的であるか、各登壇者の立場から様々な意見が出され、熱い議論が交わされました。

活躍する高専生によるプレゼンテーション


タイ高専(KOSEN-KMITL)は、「きぼう」ロボットプログラミング競技会において、優秀な成績を残した。日本だけでなく海外の高専の活躍も目覚ましい。

学生研究成果発表では、国立高専、公立高専、私立高専、海外高専の中から選ばれた4つの研究発表が行われました。

国立高専代表
坂本 蓮人(れんと)さん(高知高専 ソーシャルデザイン工学科 4年)
細木 温登(はると)さん(高知高専 ソーシャルデザイン工学科 4年)
筒井 巽水(たつみ)さん(香川高専 専攻科 創造工学専攻 2年)
櫻井 晴生(はるき)さん(岐阜高専 機械工学科 4年)
河島 悠太(ゆうた)さん(徳島高専 機械電気工学科 4年)

発表テーマ
「高専衛星KOSEN-1、宇宙へ」


国立高専からは、代表の坂本さんによりKOSEN-1衛星のミッションについて発表がなされました。
KOSEN-1は、JAXAの革新的衛星技術実証プログラムに2018年12月に採択され、高知高専・群馬高専・徳山高専・岐阜高専・香川高専・米子高専・新居浜高専・明石高専・鹿児島高専・苫小牧高専の10校により約2年半かけて開発された木星電波観測技術実証衛星です。

公立高専代表
志村 慎士郎(しんじろう)さん(東京都立産業技術高専 専攻科 電気電子工学コース 2年)

発表テーマ
「電解コンデンサレスインバータを用いたアクティブフィルタによる電源高調波抑制」


公立高専からは志村さんが選ばれ、二酸化炭素排出量の削減につながるエアコンの低コスト化に関する発表が行われました。
インバータ搭載のエアコンは、インバータ無しのエアコンと比較し電力消費量が小さい事で知られていますが、高コストのため世界全体でみると普及率はまだまだ低いのが現状です。
そこで、低コスト化に向け開発した高調波抑制手法についての発表が行われました。

私立高専代表
畠中 義基(よしき)さん(国際高専 国際理工学科 4年)

発表テーマ
"Developing Technologies to Reduce Labor in Small-Scale Agriculture".
「小規模農業の省電力化に向けた取り組み」


私立高専からは、国際高専の畠中さんにより、小規模農業向けに開発したシステムについて発表がなされました。
まずはじめに獣害から農場を守るためのAIを用いたサル認識システムの開発についての発表、次に小型自動運転耕運機の試作と検討についての発表がありました。

海外高専代表
Mr. Thanandorn Panyaso(KOSEN-KMITL メカトロニクス工学科 4年)
Mr. Kanok Sereepookkana(KOSEN-KMITL メカトロニクス工学科 4年)
Mr. Runn Kongkeatpanich(KOSEN-KMITL メカトロニクス工学科 4年)
Mr. Narongsak Boonvut(KOSEN-KMITL メカトロニクス工学科 4年)

発表テーマ
"Our experiences in Kibo Robot Programming Challenge (KRPC)"


タイ高専(KOSEN-KMITL)からは、優秀な成績を残した、国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟の船内ドローンを用いたロボットプログラミング競技会である『「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)』についての発表を行いました。

国際学長フォーラム


写真左から谷口功理事長、Vesa TAATILA学長。高専機構とトゥルク応用科学大学の調印式が行われた。

翌日の国際学長フォーラムでは、谷口理事長、ツェデヴズレン・モンゴル教育科学省次官、西條・文部科学省審議官からの挨拶、以下3名による基調講演に続き、谷口理事長はじめ、各国の政府機関、大学、高専、ポリテク等の代表間で、新たな時代に求められるエンジニア育成の在り方について、活発な討議がなされました。
このほか、フォーラムにおいては、高専機構とトゥルク応用科学大学(フィンランド)との学術交流協定更新の調印式が実施されました。

井上 光輝 氏(高専機構理事)
Vesa Taatila 氏(トゥルク応用科学大学学長)
田中 邦裕 氏(さくらインターネット株式会社代表取締役社長、舞鶴高専卒業生)


”KOSEN is KOSEN” として、高専教育は国際的にも理解が広まっており、高専教育により、現代社会の様々な課題を解決する「社会のお医者さん: Social Doctor」を育成し、経済社会の成長などに貢献していくことが、各国から期待されております。

おわりに

高専は今年で60周年を迎えます。15歳からエンジニアにとって必要な幅広い工学的素養を学んでいる高専生は、現在の日本を含めた世界の産業課題を解決する技術力、課題解決に必要な、世界と手を取り合うためのグローバルな対応力などを養っています。
社会の諸課題を解決し、世界をより良くする高専生の活躍に期待が膨らむばかりです。
高専60周年という節目で、様々な企業や諸外国から注目を集める高専。今後の更なる高専教育の発展に伴い、世界で様々な課題を社会実装の観点から解決する高専生たちの活躍に、目が離せない式典等となりました。

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。