高専出身の転職は正社員専門のエリートネットワーク

高専トピックス

第6回高専・海事教育フォーラム


大島商船高等専門学校の練習船「大島丸」。1993年以来29年ぶりとなる新しい船で学生たちの航海実習などに2023年3月から供される。
イラスト:大島商船高等専門学校 前畑 航平 講師

国立の商船系高等専門学校5校(富山高等専門学校・鳥羽商船高等専門学校・広島商船高等専門学校・弓削商船高等専門学校・大島商船高等専門学校)(以下「商船系高専5校」)は社会的要請である船員養成及び海洋産業への期待に応えるため「次世代の海洋人材の育成事業」に取り組んでいます。
この取り組みは、人材育成事業と広報活動を中核としており、「高専・海事教育フォーラム」では各商船系高専が海事教育の実施内容や活動成果についての報告を行います。
第6回にあたる本フォーラムは、2023年2月10日(金)に神戸国際会議場メインホール(兵庫県神戸市)にて開催され、オンラインでも配信されました。
今回は本フォーラムのオンライン配信の様子についてお伝えします。

人材育成事業では、海上輸送のグローバル化と技術革新が急速に進展する海運業界のニーズに応え得る海事技術者が具備すべき実務能力を適切に把握し、それに対応した専門知識と資質を有する次世代の海事人材育成を目的に、下記の事業展開を行いました。

①海事人材としてのグローバルな適応力向上に向けた教育システムの開発
②海事・海洋分野の技術革新に対応した専門教材の開発
③学生ニーズに立脚したキャリア教育の実施
④海事関連産業と海事教育界との連携強化の実施

グローバル人材育成に向けた商船系高専5校共通の英語オンライン講座の実施、海技士資格取得支援用の動画教材の商船系高専5校共有システムの構築、学年混合練習船実習による次世代を担う海洋人材に必要な資質の獲得方法の検討等、新しい挑戦的な試みに関する報告もありました。

広報活動では、小中学校を対象に「海」に対する親しみや興味関心を育み、海事・海洋の魅力を伝える機会を提供し、海洋人材の裾野拡大を目的に、下記の事業展開を行いました。

①全国の中学生へ広報する海事啓発ポスターの作成・配布
②商船系高専5校における学生主体のWEBによる海事の魅力を啓蒙するイベント
③小中学生向けの社会科の授業に利用できる教材作成(出前授業を含む)
④小中学生向けの練習船体験講座の実施
⑤商船系以外の工業系と連携した総合体験型学習イベントの実施

※ただし、新型コロナウイルス感染症対策として、対面でのイベントは特定数(登録制・学校単位・クラス単位等)による実施。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、不特定多数における大規模イベント開催が難しい状況でしたが、WEBを活用した広報活動にも力を入れる事で、昨年の参加者を上回ることができ、各イベントでは令和3年度と比べ大幅増の参加者数を記録したとの報告がありました。
今後は、感染症の影響が依然として不明な面もありますが、商船系高専5校と連携し時代の変化も捉えながら、WEB及び総合体験型学習イベントを重視した広報活動を継続展開拡大していきたいという考えを述べられました。

商船系高専5校では、時代のニーズに沿った海洋人材を育てるべく、従前から様々な挑戦的な試みに取り組んでおり、今後も次世代の海洋人材を商船系高専5校から輩出しようという気概がひしひしと伝わってきました。四方を海に囲まれ鉱物資源に乏しい日本において、優秀な海洋人材は、海上輸送の安定化のため、延いては日本経済のサプライチェーンを支えるために必要不可欠です。次世代の海洋産業を担う商船系高専出身者の一層の活躍が楽しみになる大変意義深い海事教育フォーラムでした。

(掲載開始日:2023年2月22日)

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。