高専出身の転職は正社員専門のエリートネットワーク

高専トピックス

高専GCON2021(高専GIRLS SDGs×Technology Contest)は、全国の高等専門学校(以下、高専)生の約23%を占める高専女子学生の持つ真の実力を世の中に広く発信していくために企画されたコンテストです。

プレ大会となる今回は、参加学生がSDGsの理念を理解し、未来の研究者・技術者としてより成長することを期待して、SDGsに繋がる様々な社会課題の解決に向けた技術開発のアイデアを競いました。

また本コンテストは、2022年の「高専制度創設60周年記念」のプレ大会として開催されました。

今回は、オンライン開催された本コンテストの様子をお伝えすると共に、高専GCON2021の事務局運営担当教員である釧路工業高等専門学校 大槻 香子(おおつき よしこ)先生のインタビューをお届けします。
(掲載開始日:2022年2月17日)

参加条件・募集テーマ


本コンテストには42チームの応募があり、その中で選ばれた12チームがSDGsに繋がる様々な社会課題の解決に向けた技術開発のアイデアを発表した。

参加条件は、全国の国公私立高等専門学校の本科・専攻科に在籍する女子学生個人または学生チームで、男子学生の参加も可能ですが、リーダーを女子学生、かつチームの半数以上は女子学生であることです。

募集テーマは、SDGsを中心とした様々な地域・社会課題の解決に向けた技術開発のアイデアであることを基に、男女の性差(生物学的・社会学的)に配慮した技術開発を含んだアイデアが推奨されました。また、SDGs解決のイノベーション創出によるビジネスチャンスを引き寄せる取り組みも期待されました。

決勝はオンラインで12チームによるビデオプレゼンテーション(4分)+ライブでの質疑応答(5分)のプレゼンが行われ、宇宙飛行士の東京理科大学 特任副学長 向井千明(むかい ちあき)氏をはじめとする審査委員によって表彰される最優秀賞、優秀賞が決定されました。
また、協賛企業であるアイング株式会社より贈られるアイング賞、視聴者の投票によって決定する視聴者賞も用意されていました。

最優秀賞


鈴鹿高専による「MIE IKONI CIRCUIT」のゲームの様子。実際の場所をゲームで再現し、地元の特産品や観光名所を巡ることができるゲームを開発した。

学校名 : 鈴鹿工業高等専門学校
チーム名: SUZUKA DRIVERs
タイトル: 三重県の名産品を知って観光名所を駆け巡る 地方創出スマホアプリゲームの開発〜MIE IKONI CIRCUIT〜


最優秀賞に輝いたのは、鈴鹿高専のクラスメイト5名からなる「SUZUKA DRIVERs」のチームでした。

発表したのは、「MIE IKONI CIRCUIT」と名づけられたドライブシミュレーションアプリです。
ゲームは、三重県内の7つのエリアをクルマで移動し、指定ポイントをクリアすることにより得点を重ねるスコアアタックゲームの形式です。
その所々のポイントに三重県の観光地や特産品を紹介することで、三重県の観光アピールと共に持続可能な地域産業の一助となり得るという内容です。
例えば桑名エリアではハマグリの養殖を、伊賀エリアでは組紐工芸等の産業が取り上げられています。
コロナ禍で小・中学生の校外学習や修学旅行が中止になり、アクティブに郷土を学ぶ機会が失われたこと、そして三重県を訪れる国内外の観光客が激減したことが、開発のきっかけだそうです。将来はVR版にも挑戦したいとのことでした。

最優秀賞を獲得した理由として、審査委員からは「持続可能な社会に向かって奮闘する今の時代の地域課題を正面から捉えており、解決策の一つとして魅力度が大きい」とのコメントがありました。

優秀賞


奈良高専の「MINA-SIYA」は普通のサングラスと遜色ない形状でAI技術を用いた様々な機能の魅力を発表した。

学校名 : 奈良工業高等専門学校
チーム名: MINA-SIYA
タイトル: かけるだけで新時代にきた気分に!? AI機能搭載 サングラス型カメラ


奈良高専チームが発表したのは、AIカメラや骨伝導イヤホンが搭載された「MINA-SIYA」でした。

「MINA-SIYA」は、目の不自由な人をユーザーとして想定したサングラス型のデジタルデバイスです。
AIカメラの物体検出機能で信号の色を判別したり、ショッピングの際には商品の価格情報を読み取ったり、サーモグラフィでヤカンの温度等を測って火傷の危険を回避するといった、目の不自由な方にとっては有用な機能が実装されています。
また、一般の方向けへの展開も可能であり、その機能として文字を読み取ってクラウド経由で音声に変換するのみならず英文を翻訳するといった機能が実装されていました。
ユーザーに情報を伝えるのは音声データを振動させることで感知できる骨伝導イヤホンで、周囲に音声ノイズを発生させない工夫も施されていました。
目の不自由な人の生活を強力にサポートしたいという想いからこの生活支援ツールを考えたそうです。

審査委員からは、SDGsの「3. すべての人に健康と福祉を」、「4. 質の高い教育をみんなに」、「8. 働きがいも経済成長も」、「10. 人や国の不平等をなくそう」、「11. 住み続けられるまちづくりを」の課題を満たすデジタルデバイスであることの魅力が高く評価されました。また、後述する視聴者賞にも選ばれました。


群馬高専は水素ガスを効率よく生成するための今後の展望として、排水の利用や自然エネルギーの利用といった無駄の無いエネルギー生成の展望について発表した。

学校名 : 群馬工業高等専門学校
チーム名: ネルンストに魅せられて
タイトル: 1.23V電圧下での水の電気分解


群馬高専チームは、次世代のクリーンエネルギーの一つとされる水素ガスを効率よく生成するために、水を酸素と水素に電気分解する際、エネルギーロスの少ない最適条件を探る実験の成果を発表しました。

実際に水を電気分解するには、分子結合の切断や電解液内での物質の移動のために、理論値である1.23Vを大きく超える電圧が必要になります。
このチームは電位がpHに依存することに着目し、電極を浸す電解液のpHをプラス側とマイナス側で変えることで理論値の1.23V以下のエネルギーで水素ガスが発生するのではないかという仮説を、様々な条件設定の実験で検証しました。
そして、酸性の電解液槽にマイナス極を、アルカリ性の電解液槽にプラスの電極を浸した時に、理論値未満の1.009Vで水素ガスが生成したデータを取ることができたと発表しました。

審査委員からは、SDGsのエネルギー関連の課題解決に繋がる成果だとして評価されました。

視聴者賞


佐世保高専は手動ポンプを用いて容易にファインバブルを発生する装置を開発し、ファインバブル発生の実演を行った。

学校名 : 佐世保工業高等専門学校
チーム名: ファインバブルLab.
タイトル: いつでも、どこでもファインバブルを作る! 〜泡の力で地球を健康に〜


佐世保高専の高専女子学生4名によるチームが発表したのは、手動でファインバブルを発生させる装置の考案です。

直径が100μm以下の気泡であるファインバブルを含有する水には、殺菌効果や汚れ等の剥離効果があります。
その能力を使用して、アフリカをはじめとした途上国で問題になっているスナノミと呼ばれるノミの一種が皮膚に寄生することで起きる「スナノミ感染症」の予防に貢献したいとの想いが、この研究開発の起点でした。
途上国ではファインバブルを発生させる電気エネルギーを容易に利用できないことから手動ポンプを用いたファインバブル発生装置の開発に着手し、生成する媒質を検討することでバブルの量や粒径の制御とバブルの安定化を引き寄せたと発表しました。

スナノミ感染症予防以外にも、魚や野菜の洗浄、家屋内の洗浄、医療器具の洗浄にも利用が可能で、SDGsの目標3である「すべての人に健康と福祉を」をはじめとする様々な課題を克服できる可能性が審査委員に評価されました。

アイング賞


仙台高専は研究室で行われているトマトの識別の研究を基に本提案を行った。

学校名 : 仙台高等専門学校
チーム名: Loss prediction
タイトル: 画像処理と機械学習でわかる!今日の食品ロス予想


GCON2021に協賛頂いたアイング株式会社から贈られるアイング賞を受賞したのは、仙台高専女子学生2名による「Loss prediction」です。

発表内容は、画像処理とAIで飲食店や食料品店、さらには個人宅の近未来の食品在庫内容を予測し、フードロスの大幅な削減につなげるというシステム提案です。
具体的な内容は、まずはPOSシステムに蓄積された店舗の仕入データ、個人の自宅の冷蔵庫の画像データ、季節・気象・街中の人の流れに関するデータ、店舗の在庫状況に伴う値下げ商品の情報データ等をAIに入力します。
それを機械学習させることによって店舗には来店予測を通知して仕入れ内容の適正化を図り、個人にはアプリが自宅の冷蔵庫内にある材料で作れる料理レシピをリコメンドしたり、近隣の値下げ商品を知らせたりすることで、食品の廃棄ロスを極力減らすことを可能にするというものです。

審査委員からはSDGsの課題12の「つくる責任 つかう責任」の趣旨に沿っていることなどが評価されました。

釧路工業高等専門学校 創造工学科 建築学分野
講師 大槻 香子 先生 インタビュー


釧路工業高等専門学校
大槻 香子(おおつき よしこ) 先生

ここからは、本コンテストの事務局運営担当教員である釧路工業高等専門学校の大槻 香子先生へのインタビューをお届けします。

GCON開催の経緯や高専生を対象とした本コンテストの醍醐味、今後のGCONへの展望についてお話し頂きました。


――GCONを企図した背景、目的を教えてください。


国立高専機構は、2022年度に高専制度創設60周年を迎えます。

そうした節目でロボコンやプロコン、デザコンに続く新たな高専生を応援するコンテストイベントを開催しようということになり、国の目標である女性研究者・女性技術者を数多く輩出していくという目標に合わせて高専女子学生にフォーカスすることになりました。

その上で、SDGsの理念に沿って身近な社会の課題解決に繋がるアイデアを募集することにしました。


――GCONのご準備は大変でしたか。

GCONは初開催で今までのノウハウもありませんし、しかもコロナ禍でのオンライン開催ですから、もちろん様々な苦労はありました。

でも、事務局の皆さんも、各高専の皆さんも、今までになかった新しい大会を成功させようとする熱意はとても大きかったです。


――大会を終えてのご感想を教えてください。

感動しました。すべての発表で、高専生たちの持っている能力は素晴らしいと、再確認しました。

また、開催直後に何名か参加した学生に感想を聞いたのですが、「他の高専生たちとぜひ繋がりたい」という声が数多く聞けたのが嬉しかったです。

GCONをきっかけに、同じ高専生として、様々な課題解決に挑んでいる仲間たちと交流したいという意欲が湧き出たのだと思います。


――これからGCONをどのように発展させたいとお考えですか。

GCONは募集テーマをSDGsに絡めたこともあり、各チームは指導担当の先生はもとより、社会問題に挑む地域の方々や卒業生の先輩など、学外のメンターの皆さんにも多大なサポートを頂きました。

そうした繋がりを継続し、社会課題の解決や地域貢献に繋がるコンテストになっていけば良いなと考えています。


――本日はお忙しい中、ご協力頂き、ありがとうございました。

※この記事の内容は取材当時の情報です。