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高専トピックス

第1回高専GIRLS SDGs×Technology Contest(高専GCON2022)の本選が2023年1月15日(日)に開催され、沖縄高専からエントリーしたチーム「パイナッポー」が、大賞に相当する最高の栄誉である、文部科学大臣賞を受賞しました。
受賞したプレゼンテーションは、沖縄高専の位置する名護市一帯の特産品でもあるパイナップル農場のDX推進を図るといった内容でした。
そこで受賞の喜びの声と共に、この取り組み至った経緯や苦心したポイント、今後のビジョンなどについてチームメンバーを代表して2名の高専女子にお聞きしました。

出場メンバー
沖縄工業高等専門学校GCONチーム「パイナッポー」
・上原 彩來(うえはら さら)さん(情報通信学科/5年)
・伊藤 砂羽(いとう さわ)さん(情報通信学科/4年)
・知念 紅葉(ちねん このは)さん(生物資源工学科/3年)
・石垣 花緒(いしがき かお)さん(情報通信学科/3年)

指導教員
・宮城 桂(みやぎ けい)先生(情報通信システム工学科/助教)
(掲載開始日:2023年9月4日)

大会コンセプト

本コンテストは、高専女子を主たる参加対象者とすることで女性活躍推進を図るもので、学生たちがSDGs(持続可能な開発目標)の理念やイノベーションを産み出す発想・行動を背景に、日頃の研究や学習が社会課題に対してどう貢献できるかを考えた内容を発表するものです。
併せて女性が活躍できる社会実現に向けた提案が推奨されます。

審査基準は、SDGsへの理解、イノベーション視点、実現可能性、プレゼンテーションです。

プレゼン内容

パイナップルの生育情報の指標となる蕾(つぼみ)の生育状況を遠隔操作のドローンで撮影。株ごとの蕾を自動検出・蓄積できるシステムを画像認識AIを駆使して構築し、沖縄県農業研究センターが開発した出蕾日(しゅつらいび)や出蕾率、葉長、気温などのデータから収穫量や収穫日を予測できるモデル式を活用することで、効率的な栽培が可能なデジタル圃場(ほじょう)を構築するという取り組みの紹介でした。

これまでは株ごとの生育情報を人が記録しなければならず、大変な重労働でしたが、AIとドローンを活用DXで、パイナップル栽培が「きつい・汚い・危険」の3Kから「効率的・強靭・稼げる」の新3Kへとチェンジできると訴求しました。

受賞者の皆様へインタビュー

GCON優勝おめでとうございます。パイナップル農場のDX化に挑もうとされた発端を教えて下さい。


GCON出場チーム「パイナッポー」の伊藤さん(手前左)、上原さん(手前右)と副校長の神里先生。神里先生は学生主事として学生の様々な活動を広範囲でサポートをしています。

上原さん:メンバーの一人である知念さんのお母さんが名護市にある農業研究センターに勤めておられて、重労働となる農作業の大変さを以前から伝え聞いていました。この問題を生物系の学生と情報系の学生によってDXで何とか解消できないかと考えたのが発端です。

伊藤さん:沖縄高専の特徴的な科目である「創造研究」が、この未来チャレンジの起点になりました。女性が活躍できる農業を実現したいと言う気持ちも大きかったですね。

上原さん:最初の頃はパイナップルに絞っていた訳ではありません。でもパイナップルは名護の特産品であり、リサーチすればするほど生育に人手がかかり、収量や出荷時期の予測も困難であることから破棄などの無駄も多いと聞き、チャレンジへの意欲が高まっていきました。

苦労した点があれば教えて下さい。


ドローンで上空から蕾の大きさの検知には、葉が邪魔になったり、撮影の時期やタイミングが限られることや、品種の違いも考慮しなければなりませんでした。

上原さん:最初はドローンで上空から蕾の大きさを撮影しようにも、その判断時期には葉っぱも伸びてきて蕾に覆いかぶさり、撮影の妨げになりました。そこで蕾が大きくなる前に撮影した画像データから蕾の生育状況を予測するAIを開発し、撮影上の問題をクリアすることができました。

伊藤さん:ただ、予測データをつくるための写真データの蓄積は簡単ではありませんでした。パイナップルの出蕾は2年に1回ですし、大雨で撮影ができないことも多く、データ集めには本当に苦労しました。

上原さん:本当に試行錯誤の連続だったのです。1年目はやりくりしてデータを集め、2年目に実際の生育と照らし合わせて確認するなど、時間もかかりました。

伊藤さん:それでもGCONに出て、多くの人から実用化できそうだと言われ、不安よりも自信が大きくなりました。自民党本部でこのプロジェクトを発表した時も、有名な政治家の方々から評価されてモチベーションが上がりました。何よりも、農業研究センターの方から、これで収穫効率が大幅に上がるよと言われた時がいちばん嬉しかったですね。

上原:実装までもうすぐの位置に漕ぎ着けられたと思いますが、パイナップル農家の誰でも使用しやすいように、スマートフォンのアプリにシステムを移植する必要があると考えています。アプリも自分たちで開発したいと考えています。

お二人が高専で学ぼうと思った背景と今後について教えて下さい。


二人とも「航空技術者プログラム」への参加を希望し入学しました。ボーイング737式ジェットエンジンの前で情報通信システム工学科 学科長 航空技術者プログラム担当 教授 谷藤 正一(たにふじ しょういち)先生と。

上原さん:私は航空技術者プログラムに参加したいと思って沖縄高専に入学しました。

伊藤さん:私は滋賀県出身なのですが、両親がマリンスポーツ大好きで、子供の頃から沖縄に何度も足を運び、小さい頃からこの場所が大好きでした。飛行機にも何度も乗っていて、その時に憧れたCAになるのが将来の夢になりました。それで航空技術者プログラムを学びたいと考えて沖縄高専に入学したのです。今はこれまでに学んだ技術を活かしてエアラインの他の技術職になるのも良いかなと考えています。CAとエンジニア、もうすぐ就職活動時期ですが、まだ迷っています。

上原さん:私はJALから内定をもらい、整備職になることが決まっています。エンジン整備を担当するのが希望です。

お二人が高専に入学して良かったと思うことを教えて下さい。

上原さん:高専では入学した時から専門知識をしっかり学べ、技術者としての視野が広がりました。自分が何をやりたいかという将来の夢を持ちやすいと思います、

伊藤さん:高専の様々なコンテストに出場した時に、他の高専の人の発表を見ていろんなアイデアや技術に触れられます。自分の視野が広がると共に刺激を受けられるのです。これは高専生の特権ではないでしょうか。

上原さん:特に沖縄高専では航空技術が学べたり、創造研究で興味のあるテーマに挑めたりするなど、中学生の夢を叶える機会がたくさんあります。

伊藤さん:沖縄高専はどの先生もフレンドリーで、親身になって接してくれます。それに教室の窓から青い海を眺められて、最高です!

お二人とも、研究や授業でお忙しい中、お答え頂きありがとうございました。

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。