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高専トピックス

令和4年8月16日と17日に開催された「高校生ボランティア・アワード2022~持続可能な未来へ~」の全国大会において、大分高専足踏みミシンボランティア活動グループがDREAM WORLD HEALTHCARE PROGRAMME賞を受賞しました。エントリーは144もの団体から寄せられ、その中から地区大会を通して選ばれた98団体がブース発表を行い、最終的に大分高専には各賞の中からDREAM WORLD HEALTHCARE PROGRAMME賞が与えられました。選考理由は「地道に長く活動していること、ものをあげるだけでなく、生きる術や生活する術も教えていることに強く共感したため。卒業後も一生のプランとして活動してほしい」でした。
高校生ボランティア・アワードは、「公益財団法人 風に立つライオン基金(設立者・理事 さだまさしさん)」が主催し、日々地道な奉仕活動を実践する高校生たちの発表・交流の場であり、人材育成を目的としています。

足踏みミシンボランティア活動グループ (指導教員:田中孝典先生 技術指導員:岩本光弘さん)
(写真左から)
・キャプテン:柳田彩海さん(情報工学科5年)
・副キャプテン:阿南木花さん(都市・環境工学科4年)
(掲載開始日:2022年12月22日)

受賞内容の紹介


ただ足踏みミシンを修理して送るだけではなく、現地へ自費で渡航し使い方や修理方法を現地の方へ伝えています。インドネシア語、マレー語、英語のマニュアルも自分たちで作成、整備しました。

全国各地から不要になった足踏み式ミシンを回収

大分高専足踏みミシンボランティア活動グループは、大分高専の課外活動として20年以上にわたって続いています。
その活動内容は、国内各地の一般家庭で使用しなくなった、あるいは使用できなくなった足踏みミシンを引き取って分解・修理し、再利用できるように仕上げてから東南アジア諸国の貧困層に贈呈するというものです。
数十年前の日本では、衣料品は店舗で購入するだけではなく、主に家庭の主婦がミシンを操作し、生地を縫い合わせてつくることが珍しくありませんでした。
そのため多くの家庭がミシンを購入し、その普及率はかなり高かったのです。現在でも家庭用ミシンの需要はありますが、そのほとんどが電動タイプ。電源の要らない足踏みミシンは不要となり、あるいは故障して使用できなくなったまま家の片隅や倉庫に眠っているケースが多いのです。
同ボランティア活動グループは、そうしたミシンを全国各地から引き取っています。最近で最も遠い所は青森県からの寄贈があったそうです。リユースの観点からも、この取り組みは今の時代にフィットしたものと言えるでしょう。

先輩から受け継いだ技術で使用できる水準に修繕

大分高専に引き取られた古い足踏みミシンは、学生たちの手によって十分に使用できる状態にまで修理されます。
現在の部員数は約40名。男女半々です。木曜日の放課後が活動日で、ミシンをパーツ単体まで分解し、稼働部に注油した上で組み立て直す作業が行われます。
その台数は年間20前後。再利用が不可能で、調達も難しい部品があれば自分たちで1から製作もするそうです。そのあたりは、設備が整っている高専の本領発揮です。
また、分解手順や修理技術は代々先輩たちから受け継がれてきました。そうしたノウハウが蓄積され、様々なメーカーの多様な機種の修理が可能となっています。

海外貧困層の生活向上を目指して贈呈

大分高専で学生たちの手によって修理を終えたミシンは、東南アジア諸国の貧困層に無償で贈呈され、現地の人々に使用されることになります。
これまでに、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンなどの国々に累計300台以上のミシンが贈られています。
この活動が国際ボランティアと言えるのは、単にミシンを輸出するだけではなく、同ボランティアグループの学生と教員が現地まで足を運び、現地に既にある壊れたミシンの修理や現地の人たちへの修理技術の指導まで行っているからです。毎年春休みを利用して、自費で渡航しています。
こうして贈呈されたミシンを手にした現地の方は、縫製品の販売や修繕を生業とすることができるようになり、定収入を得ます。
それによって子どもたちが教育を受けられるようになったり、家族が貧困から抜け出せたりと、多くの人々の生活向上に大きく貢献しています。

受賞者の皆さんへインタビュー


毎週、木曜放課後にメンバーが集まって修理、修繕活動を行っています。不足部品は高専にある工作機械を用いて自作します。コロナ禍で渡航できていないのですが、来年の春はフィリピンを訪問したいと考えています。

――このボランティアのやりがいを教えて下さい。

柳田さん:贈呈した現地の方々に感謝され、喜んでもらえた声が届くのがいちばん嬉しいですね。この活動を続けてきて良かったと思える瞬間です。

阿南さん:そうですね。それに加えて、このボランティア活動自体を知ってもらった時に高く評価されたり、動かなくなっていたミシンを自分たちの手で復活させられたりした時にも手応えは大きいですね。

柳田さん:新入生としてこのボランティア活動に加わった後輩に修理方法などを色々と教えていくと、少しずつできるようになってきて、いつの間にか任せられるようになった時には、後輩の成長を頼もしく感じます。

阿南さん:私も先輩から教わったり、後輩に教えたりと、未来へと受け継がれていく一員になれるのも嬉しいです。

――ボランティアの日々の活動内容を教えて下さい。

柳田さん:2年前に故安倍晋三元総理の奥様の安倍昭恵さんが会長を務める公益財団法人 社会貢献支援財団が行う第55回の社会貢献者表彰を受けるなど、これまでに様々な賞を頂きました。そうしてこのボランティア活動が広く知られるようになっているためか、全国各地から自然に寄贈の問い合わせが入ってきます。

阿南さん:寄贈される足踏みミシンはそのまま動くものもあれば、大掛かりな修理が必要なものまで様々です。メーカーも様々です。修理は木曜日の放課後に部員のメンバーが集まって行います。足りない部品や修理の難しい部品は、先生が旋盤等でつくってくれます。

柳田さん:今困っているのは、新たに革ベルトを手に入れるのが大変なことです。代用品もなかなか見つかりません。

阿南さん:この2年間はコロナ禍で現地への贈呈が中止になっていました。来年の春休みは、ぜひ予定しているフィリピンに足を運びたいですね。

柳田さん:私も卒業前の最後のチャンスなのと、英語部にも入っていることもあり、現地の人たちとの直接の交流に、今からワクワクしています。

――お二人が高専で学んで良かったと思うことを教えて下さい。

柳田さん:1年生から専門技術を指導してもらえるので、基礎から少しずつ始めて5年生になる頃にはかなり高度な内容を修得することができます。私は東京のシステム開発会社への就職が決まっていますが、5年かけて学んだ技術を活かして、自分らしく活躍したいと考えています。

阿南さん:高専では実験や実習を通して、より実践的な技術を学べるので、就職したら即戦力で活躍できるのですね。寮に入ると、先輩たちが勉強の面でも手厚く教えてくれますし、挨拶や日常会話を通してコミュニケーション力を磨くこともできます。私は専攻が土木分野なので、社会に出てから人々の暮らしの安全や安心に役立つ仕事に就いて、成長を続けたいと考えています。

――お二人とも、研究や授業でお忙しい中、お答え頂きありがとうございました。

■大分高専足踏みミシンボランティア 担当窓口
電話:097-552-6365(平日8時30分~17時00分)
メール:gshien@oita-ct.ac.jp
窓 口(事務):大分工業高等専門学校 学生課 学生支援係

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。