実践的技術者を輩出する高専の特徴
高専のしくみ ~5年間一貫教育で技術者を養成~
高専は、『高等教育機関』
高等専門学校(以下「高専」)の特徴として、独自の教育システムがあります。学校教育法に基づく日本の高等学校は、名称に “高等” とありますが、高等教育を行う教育機関ではなく、「後期・中等教育」段階の学校と位置付けられております。
一方の高専は、実践的・創造的技術者を養成する目的の「高等教育機関」と定められており、入学後は後期・中等教育ではなく、15歳の時点で一気に高等教育を受けられます。
高専の講義では、1年次より段階的に専門科目を増やす「くさび型カリキュラム」によって、効果的に大学と同程度の専門的な知識・技術を身につけられるように工夫されています。
一般的に大学で本格的な専門教育が始まるのは、一般教養課程を終えた3年生(20歳)以降からですが、高専では15歳から、博士課程を修了した数多くの優秀な教員から専門教育を受けることができます。
本科の5年間に修得する技術や技能のスキルは、技術者にとって極めて大きなアドバンテージとなります。
また、より高度な技術者教育を行うことを目的として、2年間の専攻科が設置されています。
専攻科の設置により、技術開発力、問題解決能力を備え、広く産業の発展に寄与できる高度で幅広い知識を持った技術者が誕生しています。
専攻科の課程を修了し、大学評価・学位授与機構の定めた条件を満たした者は、同機構に申請して学士の学位を得ることができます。
学士を得れば、大学の学部卒業生と同じ扱いとなり、大学院に進学できます。
専攻科では、すでに企業で活躍している社会人技術者も受け入れており、企業との共同研究も可能です。
入学難易度の高さ
高専は、北海道から沖縄県に至る日本全国に、計51校の国立の高専、3校の公立、そして、4校の私立高専が存在します。
国立高専は、各都道府県の県庁所在地には置かれておらず、数校を除いてほとんどが、第2・第3、或いは、5番目や6番目のいわゆる地方都市に立地しています。
しかしながら、入学試験の偏差値や合格の難易度は、各都道府県の公立・私立の名門進学校に匹敵するレベルを現在も維持しています。
現に、数学や理科の入試問題は、相当な基礎能力を備えていないと解答に窮する出題も多く見受けられる点は、過去問題を参照頂ければ、ご理解頂けるものと思われます。
高専教育はこの点が優れている
<教材のレベルの高さ>
入学後に受ける授業内容の最大の特色は、高専は、そもそも文部科学省が定める「学習指導要領」の制約を受けない教育機関であります。
詳しく説明すると、日本では、全国どこに住んでいても、一定水準の教育が受けられるようにする目的で、学校教育法等に基づき、小・中・高等学校の教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準が定められております。
その為、全国の小・中・高等学校は、すべからく、教科書として使用する図書は、教科書検定制度に合格し、文部科学大臣が適切と認めたものを使用する政策が貫かれています。
片や、高専に於いては、一般の大学と同様に教材は各教科の担当教授の裁量で手作りのテキストを作成したり、各学科で専門書を独自に採用したりすることが認められています。
その結果、教材として採択出来る範囲が格段に広がり、検定済み教科書に比して尖ったものや、実学年のレベルを越える高度な書籍も活用出来、高専生達の学力レベルアップに資する基となっていることも、もっと世間一般に認知されても良い特長であります。
<実践的な教育>
高専は、高等教育機関にふさわしい実験・研究設備を備えています。学んだことを応用する能力を身につけるために、理論だけではなく実験と実習に重点が置かれています。
卒業研究を通して、学生は、独立の精神を養い、創造性に富んだ技術者として開発設計を含めて研究する能力を育んでいます。
また、産業構造の変化や現代の科学・技術の多様な進展などにも即応できるように、高専によっては情報デザイン学科、経営情報学科、コミュニケーション情報学科、国際ビジネス学科、生物応用化学科などの新しい学科も設置されています。
これらの学科では、それぞれの分野でユニークで斬新なカリキュラムの下に教育が行われています。
地域産業界や地方公共団体等と連携して、効果的なインターンシップを実施しており、例年約8,000人の学生がインターンシップを経験しています。
ほぼすべての高専がインターンシップを正規の授業に取り入れており、単位化を進めるなど、いっそうの推進に向け取り組んでいます。