活躍する高専出身者インタビュー
グループが保有する東京都心のタワービルを中心に、 大型複合施設や世界的ホテルも受託するビル管理大手が、 複合領域に強い高専卒業生に採用をシフト。
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社会に羽ばたいた高等専門学校(以下、高専)卒業生の、その後の活躍を追うシリーズ。今回は製品メーカーではなく、大型オフィスビルの管理を事業の中心に据えている森トラスト・ビルマネジメントで活躍する4名を紹介します。ものづくりとは異なる、大都市の象徴とも言える高層ビルの価値創出を担う高専生らしい仕事が見えてきました。
(掲載開始日:2023年4月12日)
設備メンテではなく “ビルの総合マネジメント”。
まずは、森トラスト・ビルマネジメントに、高専卒業生の実力を活かせるどのような仕事があるのかを、それぞれ現在の仕事を通してお聞きしました。
鈴木:私は地上37階建ての東京汐留ビルに常駐し、この複合ビルの施設管理業務と運営業務を担当しています。ビルに設置されているものは例外なく管理対象だといっても過言ではありません。エレベーター、エスカレーター、空調機器、電力供給設備、IT機器類など全て含みます。そうした設備が正常に稼働してはじめて、ビルは本来の機能を発揮します。そこでその全てを適正に維持管理するべく、長期的な修繕計画の策定から日々の点検記録の確認、予防保全作業の協力会社への手配や検収まで担うこの仕事は、ビルの価値を創出する総合マネジメント業務そのものだと感じています。
石川:私は東京タワーに隣接した2棟のビルを担当しております。このビルは1980年代に建設され、弊社が管理する物件の中でもかなり旧いビルの1つになります。そのため、躯体の修繕も設備の大規模なアップデートも進めなければなりませんが、10年先を見据えた修繕計画の立案や工事内容の提案が期待されていることを感じられます。また、長年経っているビルのため、様々な企業の方とコミュニケーションを取りながら合意形成を図っていくことも重要な業務になります。鈴木さんが言うように、実際の工事は協力会社が行いますから、作業内容の監督業務も重要ですね。
三浦:転職で同業他社から入社した私は、弊社のビル管理に関する視座の高さを感じています。現在は城山トラストタワーを担当していますが、現場作業よりもテナントと入居工事に関するやりとりや、社内の他部門とのやりとりの方が圧倒的に多く、技術をベースにしたビルに関する総合職にキャリアチェンジしたかのようです。
新井:この中で最もキャリアの浅い私ですが、新入社員の実習ビルにもなっている虎ノ門2丁目タワーで新人教育を任されています。入社してからの1年間は、ビルメンテナンス会社が行うビル管理の実務も実際に体験しながら、ビルマネジメントを学ぶのですが、その実務の作業説明や実施手順なども教えています。教えるのはビル設備の単なるメンテナンス技術ではなく、トータルにビルの設備管理業務をどのように進めるのか、どういったステークホルダーとどう連携してクオリティの高いビル管理を実現するのかといった、マネジメント業務です。でも、そこに基本となる技術知識が必要なのは言うまでもありません。
ここに高専で学んだことが活かされている。
同社ではビルの設備管理を高い次元で行っていることが伝わってきましたが、そこに高専で学んだどのような技術が役立っているのかお聞きしました。
鈴木:近年の高専は複合領域に注目し、一つの専門技術を極めるだけではなく、複数の技術領域を学ぶことで対応力や課題解決力を磨いています。ビルマネジメントの仕事にはまさにこの複合領域を学んだ経験が求められます。例えば私は木更津高専で電子制御工学科を専攻しました。在学中には電気工学、制御工学、情報工学について学びましたが、そのどれもが今の仕事に結びついています。電気工学や制御工学はエレベータや配電設備の管理に直結していますし、情報工学に関してはネットワーク機器の構成の理解などに役立っています。高専時代に特定の技術分野に限定せずに広範囲な技術に触れた経験は、今の私の対応力の礎になっていると思います。
三浦:鈴木さんの言う通り、高専時代に学んだ多様な技術が仕事の様々な面で活きているのは事実です。一方で、ビルマネジメントのプロになってから新たに習得していく技術や専門用語なども少なくありません。私は基礎的な技術とともに、高専では考える力や学ぶ力が鍛えられたと考えています。
石川:私は生産システムコースを専攻しましたが、今の仕事の中で、「そういえば高専時代に学んだ技術を無意識に使っているな」と思う瞬間がたくさんあります。また、モノを製造するための最適なシステムとは何かを学んだ高専時代と、ヒトが働いたり暮らしたりするための最適な空間を追求している今とは、かなり似通ったところがあります。三浦さんの言う通り、高専で学んだ5年間の中で、深いところまで考え抜くトレーニングができたのではないでしょうか。
新井:私は建築工学科出身ということもあり、電気や機械といった設備を稼働させるための技術に関しては、入社してから必死に覚えました。
でも、ビルの竣工図面を確認する際に、建築設計の基礎スキルが大きく役立っています。これから担当する建物を前に、建物の躯体全体のイメージを掴むのは得意かもしれません。高専出身者はどこかの分野に必ずアドバンテージを持っていると思います。
鈴木:テナントの担当者に設備の更新や不具合対応で、こちらからの提案や対応策を伝える機会が多いのですが、その際は理論的にしっかりと説明することで理解をいただけます。これは、在学中に教授に実験結果や考察を説明したのと同じ感覚なのです。相手にこちらの考えをロジカルに伝えるトレーニングができていたのかもしれません。
必然的に、新入社員は高専卒業生ばかりに。
学科やコースによって多種多様な技術を学べる高専ですが、総合的な技術が求められる大型複合物件のビルマネジメントの仕事には、高専出身者が活躍する場面がたくさんありそうです。実際に働く環境や処遇などの面で森トラスト・ビルマネジメントは高専卒業生にとって働きがいは如何なのか伺いました。
鈴木:以前に仕事で協力した同業他社の方から、弊社のビル管理のクオリティがとても高いと言われたことがあります。これはビル管理全体にわたって「見える化」している業務フローチャートを、常に最新の知見を取り入れてアップデートしているからだと考えています。そして、その見直しに関する意見やアイデアには、若手社員の声が大きく反映されています。自分たちが、ビルマネジメント事業を進化させている実感値が高いですね。これは大きなやりがいにつながっています。
石川:若手社員と言っても、ここ7年は新卒で入社した社員の全員が高専卒ですから、高専出身者が活躍しやすい会社であることの一つの証明だと言えるのですね。三浦さんのように、実力で判断されるキャリア採用も高専出身者が中心になっていますしね。
三浦:鈴木さんの言うように、森トラスト・ビルマネジメントの実力は高いと思います。もしかしたら、若手社員のテナントに対する接し方や対外的なコミュニケーションの取り方が洗練されているのも、高専で人間関係を学んできたからかもしれません。
新井:確かに私は寮で後輩指導をしていた時の教え方が今につながっているように思います。先輩から教えてもらった経験も大切な財産だと思います。若手社員はそんな共通の経験を持った高専出身者ばかりだから、何となく高専の時のような協力し合える上下関係が社内にあるのではないでしょうか。
鈴木:弊社は資格取得を受験費や教材費の補助などで応援してくれますが、そうした向上心を応援してくれるところも高専と似通っています。
新井:処遇に関してはここ何年も高専出身者の採用ばかりなので、学歴は関係なくまさに本人の成長次第。そして、私にとっては社宅の存在が大きいですね。ビルに急いで駆けつけなければならないようなことが起こった時に、急行できるように都心の目黒に寮があるのですが、同期や近い先輩後輩が同じ場所にいるのはとても心強いですね!
総務人事部 人事グループ 品田 慧 氏
人事採用担当者からのメッセージ
私たち森トラスト・ビルマネジメントにおいて、ビルメンテナンスサービスは幅広い事業範囲の一部に過ぎません。東京都心のビル開発を中核事業に、大型複合開発やホテル&リゾート事業を手掛けてきた不動産ディベロッパーである親会社の森トラストから任されているのは、保有する不動産資産の価値を最大化させることです。そのため私たちはプロジェクトの企画・開発段階から参画し、長期計画によって進められる施設管理・運営、インテリアデザイン・リノベーションまで全面的に手掛けています。そこに必要となる人材は、様々な技術領域をカバーする広い視野を持ち、顧客となるテナント企業や外部受託物件のビルオーナー、各種専門作業を委託する協力会社などの数多くの方々と密なコミュニケーションで連携を深め、長期的な視点で物件の価値を高めていく管理者に他なりません。時に、ビルの安全・安心に関わる技術的な障害が発生した際の対応力も求められます。
こうした人材を輩出する高等教育機関として、10年ほど前から高専に着目していました。そして実際に高専の本科卒業生を対象に新卒採用を行ったところ、初期から期待以上の活躍を見せてくれました。実践的な技術教育と課題解決能力を養った高専出身者は、まさに弊社が求めていた人材像に合致していることが判明したのです。
そこで7年前から新卒採用予定者の全ての枠を高専生で満たすことにしました。当初は関東圏の高専各校から入社希望者を募りましたが、徐々に全国の高専から集まるようになり、2023年春には呉高専、都城高専、佐世保高専、徳山高専など、遠方の高専からも卒業生が入社予定です。
また、本編で登場した三浦のように、キャリア採用においても高専出身者をメインに考えています。ここ数年で入社した高専出身者はキャリアを重ね、近い将来には管理職も数多く生まれることでしょう。
今後、オフィスはもちろん、住宅やリゾート施設においてもデジタル化がいっそう進み、それに伴って様々な設備管理の高度化を図らなければなりません。出身学科を問わず、高専出身者特有の、新しい技術領域への挑戦に期待しています。
森トラスト・ビルマネジメント株式会社
設立日 | 2002年 4月 1日 |
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資本金 | 1億円 |
本社所在地 | 東京都 港区 虎ノ門 2丁目 3番 17号 虎ノ門2丁目タワー |
従業員数 | 148名(2022年現在) |
主な事業内容 | 大都市の大型オフィスビル、住宅、ホテルなどの開発事業を進める森トラスト株式会社。その直系企業として、グループが保有する建物を中心に、管理運営や内装設計・施工を担っているのが森トラスト・ビルマネジメント株式会社です。特に東京都心の高層ビルや国内各所のホテル&リゾート施設など、大型かつ著名な建物を数多く扱うことで知られています。 |