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活躍する高専出身者インタビュー

抜擢は実力と意欲次第。モノづくりの基礎とマインドを身につけた 高専出身者が数多く重用されています。

Interview

社運を賭けたプロジェクトや新規事業に次々と抜擢される。

最初に、現在の配属先で任されている業務内容と、感じているやりがいを順にお聞きしました。


三小田 佳誉(みこだ よしのり)氏/大竹工場
チェーンプロダクションカンパニー
大竹工場 生産部 設備管理グループ 構築担当
大阪府立大学工業高等専門学校 建設工学科卒 2006年新卒入社
ものづくりが大好きで高専に入学。自由な校風の中、期待通り5年間を建築の勉強に没頭できた。同級生の多くはゼネコンなど建設業界に進んだが、他の業界でも建築の知識を活かせないかという思いが湧いてきて、クラス担任のアドバイスを求めた結果、製造業でも活躍の場があることを知り、就職活動の方向性をシフトした。大手製造業数社の中からダイセルを選んだのは、ものづくりをじっくりしたいという自身の感覚と面接で伝わってきた風土が合っていると感じたから。

三小田:建設工学科を卒業した私は、入社してから今日に至るまで、工場の建物の建設と管理、修繕の全般を担当してきました。現在は電子材料系の原料をつくる新しいプラントの建設を任されています。建設会社の施工管理担当や設計担当と異なり、自社のプラントをつくる建設担当には、計画の最初期から関われる面白さがあります。工場の敷地内のどのエリアに、どれだけのスペースで、どのような建屋をつくっていくか、プロセスや機械や電気のメンバーと一緒に考えながら計画をスタートさせるのです。各種法規制をクリアさせつつ、コストを抑える工夫を考え、稼働後の生産内容の可変や増産に対応できるように将来性にも考慮しなければなりません。そうして仕様をまとめ、プラント建設会社に発注。着工したらプラントオーナーの立場で工事を検収まで管理します。電子材料系の製品は市場競争が激しく、性能の高いプラントによる効率的な生産が業績を押し上げることから、極めて重要な役割を担っていると感じています。

浅海:私は現在、二つの職務を任されています。一つは、新規事業の立ち上げです。当社は素材開発で培った技術を活かして、次々と新製品を世の中に送り出してきました。近年で言えば、革新的な無針注射器や樹脂製のオプティカルレンズなどがそうです。今も数々の製品開発が行われておりラボレベルで優れた性能や特性を持った試作品が完成しています。私の仕事は、そうした研究開発段階の製品を世に送り出すために不可欠な、大量且つ効率的に生産する設備の確立です。未来の事業の柱を引き寄せるこの業務に、社内外からも大きな期待が寄せられていることを感じています。
もう一つは、製造設備の設計プロセスのデジタル化推進です。例えば今までは二次元の設計図面をベースに設備設計の検討を進めていましたが、それを3D化することで図面を読めないオペレーターの方などにも操作性などをチェックしてもらえるようになります。構造上で荷重がかかった時の変形シミュレーションや、ライン上に設置した際の操作するオペレーターの動線チェックにも適用できると考えています。


浅海 和紀(あさみ かずき)氏/播磨工場
エンジニアリングセンター 商品化技術創出グループ 兼
セイフティSBU技術開発センター プロセス開発部
阿南工業高等専門学校 構造設計工学(専攻科)修了 2011年新卒入社
卒業した専攻科は機械と建築の双方にまたがる技術領域だが、主に機械系について学んだ。寮で友人たちと大半の時間を一緒に過ごし、勉強でも研究でも遊びでも何事にも真剣に打ち込めた濃い学生生活だった。就職活動時期に入り、「日経ものづくり」という雑誌に載っていたダイセルの生産革新の記事に興味を持ち、企業合同説明会でダイセルのブースへ。「化学プラントを動かすのは機械」という言葉と熱意に心が動いて入社を決めた。

新納:私も二つのプロジェクトを同時進行しています。主業務はMAC-Cと呼ばれる新規大型プラントの、遠隔制御のシステム設計です。MAC-Cのプラント建設は社運を賭けた大プロジェクト、また最年少ということもあり、抜擢に応えたいという気持ちが大きなモチベーションになっています。
二つ目は、会社の中長期の目標と社員個人の目標を結びつける、ダイセルの未来に向かう企業文化の醸成プロジェクトです。こちらもメンバーの中で最年少です。目先の製品の開発や製造に直結したプロジェクトではないことに、却って重要さを感じています。

村上:入社してからの約10年、私はプラントの新規建設案件では、機械や配管の基本設計から現地工事管理および試運転に携わり、建設後のプラント設備の維持管理では設備の故障修理対応を行ってきました。現在はその時の経験を活かして、設備の故障予兆検知技術の確立に挑んでいます。設備は使い続ければ必ず故障しますが、故障してから直すといった体制では、実際の故障時に生産現場は混乱するばかりです。生産計画にも乱れが生じます。そこで、流量や圧力などの設備の運転データを元に、AIを活用して適切なメンテナンス時期を判定することで、プラントの安定稼働と、それによる生産現場で働く社員たちの働きやすさを確立しようとしているのです。
それに加えて担当しているのが新たな技術や手法の開拓です。一つは東京大学と共同で行うマイクロ流体デバイスの開発研究です。マイクロ流体デバイスとは、手のひらサイズのガラスプレートに数百マイクロメートルの流路を作成し、その過程で混合や反応などの化学単位操作を行う装置です。現状では主に研究用途で使用しますが、将来はこのプレートを量産したい規模に合わせて集積し、生産プラントにすることを目指しています。もう一つが、蓄積してきたプラント運転のビッグデータを使い、日々学習を重ねたAIを搭載し、現場作業者を支援する自律型生産システムの開発です。「自律型生産システム」によってダイセル式生産革新を進化させ、生産の最適解を求めることで、製造コストの削減を狙っています。

高専で学んだモノづくりのスピリットが今に活きる。

4名ともダイセルの未来を左右する重要なポジションで活躍なさっていることが伝わってきましたが、そこに高専で学んだこと、高専だからこそ身につけたことが、どれだけあるのかについて伺いました。


新納 佳那子(にいろ かなこ)氏/網干工場
チェーンプロダクションカンパニー
姫路製造所 網干工場 MAC-C建設室
鹿児島工業高等専門学校 情報工学科卒 2014年新卒入社
高専の5年間はOSからネットワークまでITを幅広く学んだ。4年次は女子寮長を務め、寮生はもちろん留学生の相談役としても活躍した。学校ではモノとモノの論理的なつながり、寮では人と人のつながりが学べたと言う。ドイツでのリーダー研修、シンガポールでの英語研修を2週間ずつ体験し、海外に興味を持つ。ダイセルを選んだのも、高専卒や女性の技術者が活躍できることに加え海外に積極的に事業を展開していたから。海外赴任も希望している。

新納:まず、高専で複数のプログラミング言語に触れられたことで、プログラムの基本構造を学ぶことができ、現在使用している制御系の言語の早期習得に役立ちました。また、高専時代にシンガポールとドイツでそれぞれ2週間にわたって研修に参加した経験から、海外に興味を持ち、英語の勉強が苦にならなくなりました。そのおかげで、現在、技術ライセンス契約の英語で書かれた資料を読み解くことに役立っています。
会社の戦略と社員の個人目標を結びつけるプロジェクトでは、営業系や本社の間接部門など、さまざまな社員と関わります。プラント建設業務において技術系社員同士で議論する時は似たような考え方をするので議論の収束に困ることは少ないのですが、他部門の社員と意見を調整し、合意形成していくのは容易ではありません。この時に役立ったのは、高専の時に女子寮の寮長として海外留学生のサポートをした経験です。文化的な背景の異なる学生からの相談を受けた時に、相互理解を深めようと努力したコミュニケーション方法が活きているように思います。

浅海:高専で工学について幅広く学べたことが役立っていますね。私はセラミックの研究をしていたのですが、現在はセラミックに関する知識が求められることはほとんどありません。それでも、今の業務につながる機械設計や材料力学を学べたし、3D-CADの実習も役立っています。新規事業ではライン全体のトレーサビリティのシステムの設計をしていますが、機械だけでなくメカトロニクスの技術を学んできた経験が活きています。
技術以上に私が高専に入って良かったのは、新しい技術テーマにチャレンジしようとする意欲を養えたことではないでしょうか。新規事業の立ち上げに必要不可欠な挑戦心なども、高専時代に身に付けられたと思います。


村上 優作(むらかみ ゆうさく)氏/イノベーション・パーク
エンジニアリングセンター
プラントエンジニアリンググループ
大島商船高等専門学校 商船学科卒 2006年新卒入社
機関士コースで学んだのはエンジンからボイラー、燃料を搬送する装置に至るまで船を動かす機械設備の全般。プラント設備と近似性が高いことから、就職活動で化学メーカーを志望した。海に近い場所で育ったことから、環境意識の高い企業で海洋汚染の改善に貢献したいとも考えた。ダイセルを選んだのは、外洋実習で長期にわたり日本を離れていたのに、面接の日程に融通を利かせてくれて、自分が真剣に求められていると感じ取ったから。

村上:確かに先駆的な取り組みに怯まないマインドは、高専時代に養われた気がします。また、新しいことへのチャレンジは、工学の幅広い基礎知識が備わっていてこそ、成果を引き寄せられます。新たな技術領域へ手を出し始めたばかりのはずなのに、高専時代にその基本となる知識を既に学んでいた事実に気づくことがよくあります。この点からも高専教育はチャレンジのできるエンジニアを輩出する優れた内容だと感じています。

三小田:卒業した大阪府立高専では、1年生から3年生までは建築と土木の両方を学び、4年生から専門が建築か土木のいずれかに分かれました。つまり、私は建築を専攻しつつ土木に関しても基礎を学んでいます。このことが、ダイセルでのキャリア形成にこれから役立ちそうです。なぜならば、ダイセルの建設担当は、研究所ビルからプラントの建屋に至る多様な建設に加え、原料搬入や製品出荷に使用する港湾の土木工事も担うからです。いずれ携わることになる土木工事が今からとても楽しみです。

ダイセルには高専出身者の実力を引き出す風土が根付いている。

高専時代に培ったマインドや学んだ知識を今の仕事に発揮している4名ですが、その実力をダイセルはどう引き出しているのか、ご自身のケースや社風、制度などについても伺いました。


大竹工場の化学プラント

浅海:やりたいことをやり遂げられる会社だなと思います。私は今、設備設計プロセスのデジタル化を担っていると言いましたが、まずは自分がデジタル化は今後に必須だと上司に訴え、当初はその上司とともに細々と始めた取り組みでした。そして少しずつ成果を積み上げていったのですが、それが他の部署に伝わり、価値が認められ、今ではエンジニアリングセンターの中期アクションの中に組み込まれています。私はテーマリーダーを正式に任されることになりました。

村上:本当に一般社員の発言や意見を、上層部が素直に聞いてくれる風土がありますね。それは、高専出身者はもちろん、高卒者でも大学院出身者でも変わらず、誰でも声を上げればまずは上司に聞いてもらえ、その声がボードメンバー(役員)にまで届きます。だからこそ前向きな発言がどんどん出てくるのだと思います。

三小田:開発や製造の業務以外でも、全社を巻き込むプロジェクトに参加できる機会がふんだんにあります。私は2019年にリニューアルした新しいダイセルの作業服のデザインプロジェクトに参加していました。直属の部長に作業服のリニューアルをした方が良いという意見を述べたら、それが人事グループに伝わって、プロジェクトメンバーに加えられたのです。単にデザインの刷新ではなく、夏の暑い時期に冷涼さを感じさせる機能を考えて生地をシミュレーションしたり、着心地のアンケートを取ったりと、自信を持って発表できる作業服が完成したと思います。

新納:新人の頃から大胆に仕事を任せてくれる雰囲気もあります。初めての仕事を委ねられても、上司や先輩は背後で見守ってくれます。失敗しそうになると助け舟を出してくれますし、責任も持ってくれます。上司たちは答えを知っているのにすぐに教えるのではなく、経験の中から学ばせようとしているように見えます。成長を見守り、育てる文化があると感じています。
また、高専卒者と大卒者、大学院修了者で給与額の差が無い給与制度がやる気につながっています。初任給は入社時の年齢が異なるので差がありますが、同年齢であれば基本的な額は変わらないのです。高専卒の管理職も多く、キャリアの限界は感じません。

村上:高専では工学の基礎知識とともに、気づかぬうちに行動力やバイタリティが身についていると思います。ダイセルではそれを発揮する機会がたくさんあります。仕事でどんどんチャレンジしたい人と一緒に働きたいですね。

Messages

事業支援本部 人事グループ 人財開発・労政チーム 採用担当リーダー 木村和仁 氏

人事採用担当者からのメッセージ

イノベーション・パーク
新しい素材の企画・開発から量産化技術の確立に至るまで、オープンイノベーションにより新事業創出を加速していく、ダイセルグループのモノづくり技術の協創拠点

弊社は創業以来、一貫してモノづくりにこだわり、独自の技術で製品開発や生産革新を進めてきました。近年はサステナブル経営方針を掲げ、社会と共生しながら信頼される事業を展開しています。それとともに強く推進しているのが、社員全員が存在感を発揮し達成感を得られる「人間中心の経営」です。どの社員にも活躍する機会が与えられ、成果は公正に評価されます。
そうした中で、高専を卒業して入社した社員が活躍しています。例えば、ダイセル式生産革新のアップデートを担っている部門に高専出身者が在籍していますし、配属先の通常業務をこなしながら全社的なプロジェクトチームでも活躍している高専出身者が数多くいます。そもそも弊社では、入社後のキャリア形成に関する処遇は、高専卒、大卒、院卒の間に一切区別はありません。ですから、若手のうちから実力を存分に発揮する高専出身者に、結果的に重要なポジションを任せているのだと考えられます。副工場長やエネルギー部門の部長といった幹部ポジションに高専出身者が就いている例もあります。
近年の採用実績に関しては、新卒では技術系総合職を毎年25名、その中で高専卒業生は2〜3名の入社が続いています。在籍者ベースで最も古参の高専卒社員は1982年の入社であり、従来から一定数の採用を続けてきました。数多くの実習や実験を積んできた高専出身者の実務遂行力に対する評価は高く、また先輩・後輩のつながりが深い学生生活で得たコミュニケーション力も高く評価しています。
今後は新卒採用・キャリア採用ともに、高専出身者の採用を一層強化していきたいと考えています。


Information

株式会社ダイセル

設立日 1919年9月8日
資本金 362億 7,544万89円
本社所在地 ●大阪市 北区 大深町 3-1グランフロント大阪タワーB
●東京都 港区 港南 2-18-1JR品川イーストビル(二本社制)
グループ年間売上高 3,936億円
グループ従業員数 11,142名
主な事業内容 1919年に国内セルロイド会社8社が合併して誕生した株式会社ダイセル。以来、モノづくりを通じて世の中に貢献できる新たな価値を次々と生み出してきました。現在ではセルロース化学、有機合成化学、高分子化学、火薬工学をコア技術に、化学製品、高機能材料、精密火工品システムなど、化学の枠を超えて、さまざまな分野でグローバルに事業を展開しています。
※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。