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高専インタビュー

木更津高専は都心近接の技術教育機関として、 基幹産業の最前線が求める人材を育んでいます。

Interview

木更津高専の概要についてご紹介下さい。


木更津工業高等専門学校 校舎

昭和42年、国立高専の第二期校として木更津高専は開校しました。木更津は東京湾に面した京葉工業地域の南端に位置し、近隣に鉄鋼や石油化学等重工業の大規模プラントが集積しているエリアです。当時は工場の新たな造成が急ピッチで進んでいた頃で、それに伴い必要とされる工業技術者を育成したいという地元ニーズを背景に、千葉県と木更津市及び近隣町村の熱心な高専の誘致活動があったそうです。

現在は、機械工学科・電気電子工学科・電子制御工学科・情報工学科・環境都市工学科の5つの本科と、機械・電子システム工学専攻、制御・情報システム工学専攻、環境建設工学専攻の3つの専攻科があります。

本科の5年生約200名の内、約半数が就職し、残りの半数の内6割が他大学の3年生に編入、4割が本校の専攻科へ進学しています。

就職先には恵まれています。東京都心部からのアクセスの良さや、大規模コンビナートが近隣にあることから、大手企業から多数の求人依頼が参ります。学科を問わず、専門的知識を有する本校学生の求人は年々増えており、令和元年度の求人企業数は約2,800社、求人倍率は約23.7倍となっています。

採用人数の多い企業を産業別で見ると、製造業では日本製鐵グループ、出光興産、サントリーグループ等、運輸業ではJRグループ、ANAグループ、情報通信業ではNTTグループ等著名企業の顔ぶれが並びます。また、東京都庁や千葉県庁、木更津市役所といった自治体への就職も少なくありません。卒業生が多種多様な産業・業種・団体で活躍できることが見えてきます。

進学先については、本科卒業生の代表的な進路として、長岡・豊橋の両技術科学大学、千葉大学、電気通信大学、宇都宮大学等の国立大学への編入が挙げられます。専攻科修了生は、東京大学、東京工業大学、筑波大学、慶応義塾大学等の大学院に進学しています。都心・首都圏にある大学からの本校専攻科修了生の評価は高まっており、ここ数年で東京工業大学、千葉大学、慶応義塾大学と連携協定を結びました。

木更津高専の特徴的な取り組みを教えて下さい。


情報工学科主任 栗本 育三郎 教授
情報工学科では情報危機管理コンテストをはじめ様々な賞を受賞している

木更津高専の教育方針は、学生が自主性や創造力、実行力を発揮し、それを学校側が尊重するというものです。それが息づいていることは、研究にしても部活動にしても、学生主導で行われていることからも伝わってきます。教員は学生のやりたいことを支援するサポーターであり、オブザーバーの立場を崩しません。学生の新たなアクションのきっかけをつくることや、求めに応じて適切なアドバイスは行い、学生の能力を養い発揮させるように努めています。

一例を挙げれば、平成29年に行われた第12回大学対抗「情報危機管理コンテスト」では本校が見事に優勝しましたが、このイベントへの取り組みも学生主導でした。将来は情報セキュリティの分野で活躍したいと考える学生の登竜門として全国的に注目されているこのコンテストですが、東京大学、筑波大学、早稲田大学大学院等、並み居る有名大学と対戦して本校のチームが勝利を収め、最優秀賞である経済産業大臣賞を受賞したのは、すべて学生たちの功績と言えます。

この栄誉には、本校が全国51国立高専における、関東信越地区の情報セキュリティ人材育成事業の基幹校でもあるという背景があります。また、サイバーセキュリティ人材育成を推進する、千葉県警、情報セキュリティ大学院大学、慶應大学大学院等と連携協定を結び、共同教育を実施していることも大きな要因です。情報工学科では、サイバー攻撃・防御をシミュレートできる演習室を整備し、コンピュータサイエンスに根差したセキュリティにおける実践的専門家キャリア、専門・管理キャリア、研究者キャリアの学生の育成を目指しています。現在、NECセキュリティ研究所、NTTセキュアプラットフォーム研究所に勤務しているOB、OGがいます。

その他にも、第5世代移動通信システム(5G)とワイヤレスIoT技術を活用して地域課題を解決しようと総務省が主催する「高専ワイヤレスIoT技術実証コンテスト」において、平成30年にはワイヤレスIoT活用部門での課題採択、令和元年にはアイデア賞の受賞と5G部門での課題採択になるなど、連続して成果を上げています。いずれもカラスの剥製翼を用いた飛行体、カラスロボットを使ってカラスとコミュニケーションを図り、カラス被害の抑制を目指したものです。学生達が主体となってチームを作り、2年連続してエントリーしたもので、総務省より実証実験費225万円獲得したのは快挙です。

地域社会との連携についてお聞かせ下さい。


「都心への交通アクセスに恵まれているため、様々な企業との産学連携活動や国際交流活動を積極的に行っています。」

都心の大手企業や難関大学と人材の輩出や技術交流によって関係をますます深める一方で、木更津を中心とする南房総エリアの企業との連携も進めています。

平成12年に新設した地域共同テクノセンターを交流の場に、地域の中小企業を始めとする産業界を対象とした技術相談、共同研究、技術者のリフレッシュ教育、小・中学生を対象にした専門的な技術を分かりやすく解説する公開講座等を実施。地域産業や地域生活の振興・活性化を助長し、地域の経済力向上への寄与を目指しています。

平成16年に立ち上げた木更津高専技術振興交流会は、会員数が246社にも及びます。活動内容としては、テクノフォーラム(講演会)の開催、技術研修としてのレベルアップ講座の開講、産学官共同研究に関する助成等を行い、産業技術の振興を図っています。

また毎年、夏休み期間中の小学生に科学工作を体験してもらうイベントである「キッズ・サイエンス・フェスティバル」を開催し、木更津地区の子供たちに「ものづくり」の楽しさを広めています。

グローバルな活動についてお聞かせ下さい。

本校は、都心近接の恩恵の一つでもある、羽田・成田の両国際空港からのアクセスが極めて良好であることから、欧州・アジアといった外国の教育機関と多数の協定を結んでいます。平成18年の台湾を皮切りにマレーシア、シンガポール、ドイツ、セルビア、ネパール等の大学や工学専門学校と連携交流協定を締結し、学生の派遣・受入れを積極的に行ってきました。それに加えて国際ワークショップ等も度々開催し、海外で学生が研究成果を発表する機会を与え、英語力の向上にも努めています。

また、世界規模で工学教育の未来を探るCDIOイニシアチブへの加盟については、国立高専としては国内第1号となり、その後の他高専の加盟の先鞭をつけました。近年では、日本型高専教育モデルの海外展開事業において、カリキュラム設計・教材開発・教職員研修等の実施に際し、本校はタイとモンゴルの「協力支援校」として、高専機構本部事務局及びリエゾンオフィスと連携し、事業に係る各種活動に対し協力支援を行っています。
CDIOイニシアチブとは、Conceive(考え出す)、Design(設計する)、Implement(実行する)、Operate(操作・運用する)の略で、工学教育の改革を目的として開発された考え方です。

更に、グローバル教育を推進する環境施策の面では、平成30年度に日本にいながら海外の連携協力機関の教員や学生と、インターネットのビデオ会議を介して共同で実験実習等を行うことのできる「国際コラボステーション」を整備しました。令和2年度には、シェアハウス型の「国際寮」の建設が始まる予定です。留学生にとっての住環境が整備されることはもとより、そこに多くの学生が訪れることで国際化はいっそう推進されるのではないでしょうか。

佐久間先生のご経歴を簡単に振り返って頂けますか。

私は昭和61年に慶應義塾大学経済学部を卒業し、文部省(現:文部科学省)に入省しました。そこでは、初中局、高等教育局、研究振興局等で働き、高専関係では17〜18年前に専門教育課の企画官の時に、高専法人化の法案作成を担当しています。

現在、国立高等専門学校機構のもとに各高専が一体となって躍動し、高等教育機関としての存在価値を高めている姿には、まさに隔世の感があります。

文部省以外では、在タイ日本国大使館一等書記官、外務省大臣官房国内広報課長、放送大学、新潟県立大学等に、それぞれ3年間赴任しました。また工学が専門ではない門外漢の視点から、学校運営全般についての見直しを進めています。

高専における教員の仕事は、授業を中心とした教育、自らの専門分野の研究、学生への生活指導、進路指導、寮の宿日直、部活動の顧問、国際交流や産学連携のコーディネート等多岐に渡ります。それを大きなやりがいと捉えている教員は少なくありません。それでも、委員会の再編統合等、業務改革・業務効率化を推し進めることで、多忙を極める教員に少しでも時間の余裕をもたらそうと活動しています。

高専の在学生および卒業生へのメッセージをお願いします。


「これから益々高専生が主役となって活躍する時代です。企業において更にスキルアップ、キャリアアップを目指し、転職や起業等バイタリティある社会人に育ってもらいたいと思います。」

高専は、我が国の高度経済成長を支え、現在の技術立国に連なる歴史に大きな貢献を果たしてきた優れた高等教育機関です。

近年はAIやロボティクス等の先端テクノロジーが社会の様々なシーンで取り上げられるケースが多くなってきていることから、実験・実習で本物の技術スキルを身につけていく高専の人材育成制度が再評価されています。

これからやってくるのは高専生が主役になって活躍する時代です。企業や官庁等で、あるいは大学等の学術機関で、高専卒業生が脚光を浴びる場面はますます増えるでしょう。

在学生も、卒業生も、自信を持って技術の最前線を歩んでもらいたい、切にそう願っています。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力いただき、ありがとうございました。